
バカンスを前にした今年前半最後の定例ミーティング。テーマはランドローバー。しかしこの日のヴァンセンヌを支配していたのは、英国の四駆ではなく、早すぎる熱波だった。
【画像】シトロエンDS、プジョー404、パナールからマトラまで!さながら60年代のパリの風景のようなヴァンセンヌの旧車ミーティング(写真23点)
ヴァンセンヌ旧車クラブの定例ミーティングも、この回で今年前半はひと区切り。バカンスシーズンを前に、そして間近に迫った夏のパリ横断(Traversée de Paris)を前にした、いわば前期の千秋楽である。
今回のテーマはランドローバー。ところが会場に着いてみると、肝心のテーマ車は数台を残すのみだった。もっとも、暑さに退散したわけではない。ランドローバーのオーナーズクラブのメンバーたちは、仲間が揃うと連れ立って早々に出かけていってしまったのだ。最後まで会場に残っていたのは、クラブに属さないオーナーたちの車というわけである。四駆乗りらしい行動力と言うべきだろう。
さて、この日のパリは真夏にはまだ早いというのに熱波に見舞われていた。それでも、と言うべきか、だからこそ、と言うべきか。会場を歩くと幌を開けたカブリオレやオープンルーフがやけに目につく。考えてみれば当然で、旧車に冷房はない。開けた屋根こそが、この時代の車に備わった唯一にして最良の冷房なのである。巻き上げた幌の2CVの隣にトライアンフ・スピットファイアが並び、ロールス・ロイス・コーニッシュは2台揃って幌を落とし、メルセデス・ベンツ250SEカブリオレも幌をたたんで赤い革の室内を夏の光にさらしていた。熱波のパリで、旧車たちは屋根を開けて夏を迎え撃っていた。
数こそ減ったとはいえ、残った顔ぶれは濃い。ボンネットを開けたブガッティ・タイプ35の周りには人垣ができ、パナール・ディナZやマトラM530といった、この定例でもめったに出会えない一台一台が常連の足を止めさせる。G7の赤と黒をまとったプジョー404タクシーの隣にはシトロエンDSが並び、60年代のパリがそのまま再現されたかのようだ。折しも建国250年を迎えたばかりのアメリカに敬意を表し、星条旗を掲げたジープの一団はヴァンセンヌ城を背に気勢を上げていた。
目前に迫ったパリ横断についても、主催者側に話を聞くことができた。現時点での参加申し込みは、例年の半数ほどにとどまっているという。理由はやはり熱波だ。冷房のない旧車で炎天下のパリを渡るのは、人にも車にも相当の負担になる。皆、週間天気予報が出るのを待ち、その気温を見て最終判断を下すのだろう、とのことだった。
夏の始まりを告げるはずの定例が、夏の厳しさを先に教えてくれた。それでも幌を開けて集まってくる旧車乗りたちを見ていると、心配は無用なのかもしれないとも思う。パリ横断の当日、青空の下に例年通りの車列が伸びることを願うばかりだ。
写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI