「多くの会社にとって、倒産が目の前に迫っているのではないか」――全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は14日、都内ホテルで記者懇談会を開催。NHKのBSの減波や、支出削減への影響に強い危機感を示した。
「明らかに発注本数や予算が減っている」
NHKは23年12月にBSのチャンネルを一本化。ATP会員社に調査した経営情報アンケートでは、NHKとの取引がある社の半数以上が「NHK減波の影響がある」と回答した。
また、NHKは27年度の支出を23年度と比べ1,000億円削減する計画で、井上啓子副理事長(クリエイティブネクサス社長)は、経営情報アンケートに寄せられた声として、継続して制作していた番組が減り、売り上げが大幅に落ち込んだケースや、「明らかに発注本数や予算が減っている」「予算のかかる番組は減らされる傾向にある」といった意見を紹介した。
特集番組の企画募集は行われているものの、制作会社からの提案が以前に比べて通りにくくなっているとの声も多かったという。
その上で、このアンケートが2024年度の実績を反映したものであることに触れ、「私の肌感覚でいうと、現在はもっと深刻になっているのではないか。次回の経営情報アンケートでは、さらに深刻な状況が予測されます」とした。
特に影響が大きいのが、十分な内部留保を持たない小規模な制作会社。「そういう会社は、番組が1つなくなるだけでもかなり大変です。この間のATPの会議でも、『いつ潰れてもおかしくない』という話をする会社がありました。多くの会社にとって、倒産が目の前に迫っているのではないかと思っています」と強い危機感を示した。
受信料収入が減少する中で、NHKが制作費を削らざるを得ない事情にも理解を示しながら、井上副理事長は「クリエイターを育てていくことは絶対に必要です。取材力、制作力がなくなってしまうと、本当に厳しい。少しでも制作費を上げ、クリエイターの機会を増やしていただくことが、差し迫った重要な問題だと思っています」と述べ、放送文化や取材・制作の力を次世代へ継承する必要性を訴えた。
テレビ局依存から「新しい経済圏」へ
伊藤慎一理事(シオン会長兼社長)は、制作費をめぐる厳しい状況はNHKに限ったものではないと説明。ATPが経営情報アンケートを公表する目的については、「このままテレビ局だけに依存して経営していったとき、5年後、10年後にどうなるのか。それを制作会社にも訴えていきたいという意味があります」と強調した。
アンケートでは、売上に占める「配信」の割合が、2022年度の4.6%から2024年度には8.1%に上昇。一方、NHKや民放地上波、BS・CSを合わせた放送関連の割合は、74.9%から70.4%に低下していることから、「我々としてもクリエイターの新しい経済圏を拡張していくことを模索しながら、制作会社が今後生きていくためのメッセージでもあると思っています」と語った。
ATPは、この“新しい経済圏”への一つの方策として、「海外展開推進室」を設置。総務省が2033年までに放送・配信コンテンツの海外売上を2,500億円規模へ拡大する方針を打ち出す中で、会員社の国際展開支援を強化する。
海外展開推進座長の沼田通嗣理事(テレパック取締役)は「これまでは国内の制作者と競い合ってきましたが、今は海外の制作者と競い合う時代なので、より制作力の強化と海外のビジネス展開推進に取り組んでいきたいと思います」と意欲を示している。
