DOBERMAN INFINITYが語る、10周年の先へ ジャンルを越えるヒップホップの新章

”オールラウンドヒップホップ”を掲げ、自分たちにしか鳴らせない音楽を響かせてきた、DOBERMAN INFINITY。結成から10年以上経った今も、彼らが創作へかける想いは薄れることなく、むしろ強くなっているといっても過言ではない。

結成から12年、そして10周年イヤーを走り切った彼らが届けるEP『PRESENT』には、過去を誇り、現在を見つめ、未来へ向けてもう一度手を伸ばす姿がハッキリと刻まれている。変わらない馬鹿馬鹿しさと、研ぎ澄まされていくクリエイティビティ。広がりながら削ぎ落とされ、また新しい形で立ち上がるグループの現在地について、5人にじっくり話を聞いた。

―10周年イヤーを走り切った今、率直にどのようなお気持ちですか。

GS:僕らにとって”10周年”というのは、ひとつの数字。3年くらいはコロナ禍だったし、まだまだ成し遂げられていないこともあるので、「もう10年」とも「まだ10年」とも思う部分があります。ただ「もっと続いていくんだろうな、この物語は」って確信もある。だから、過去の10年よりも未来の10年のほうが、大事なテーマな気がしますね。自分たちが目指す目標地点が、次から次へとどんどん出てくるんですよ。それに、「10年経って変わったか」と訊かれたら、変わってない気もするし。月日が経っただけな気がしますね、僕は。

―具体的には、どんなところが変わっていないと感じますか。

GS:グループとしては、馬鹿げた話を広げるのはまったく変わらないですね。僕はいつも見ているタイプなんですけど、4人は今も変わらずに「それを話した先に、本当に答えある?」ってことを、めちゃくちゃ真剣にやり合ってます。10年経って、10歳年を取ってるのに、やってることが10年前と一緒。でも、変わってないからこそグループのバランスがしっかり取れてるのかなって、俯瞰で見ると思うんですよね。

―では、逆に変わったと感じるところはありますか。

SWAY:10年経って俺は、いろんなクリエイティブ愛が、すごく増してます。今になって思うと、コロナ禍がそうさせてくれた期間だったかもしれないと思ってて。たしかにいろいろな活動は止まったけど、自分たちの音楽を振り返って、過去の自分たちに気づかせてもらって、「次はこんなことが、できるんじゃねえかな」ってイメージをもらった状態で迎えられた10周年だった。だから、それを自分で具現化したいって意欲が、この1、2年はめっちゃあるんです。技術が足りなくてできないこともたくさんあって、本当に手探りなんですけどね。なにせ1日は24時間しかないので悩んでます(笑)。年を取ると、時間が経つの早くないですか?

KUBO-C:早いよ。

GS:俺は若いときのほうが、早く感じたわ。

SWAY:本当ですか。俺は今っすね。やるべきことが多くて、時間がないことに焦ってます。

GS:SWAYの場合は、日々が足し算なんですよね。進化するために、どんどんやりたいことをプラスしていく。俺も若い時は足し算だったんですけど、最近は「いかに引き算するか」みたいな考え方になってきた。SWAYは年を重ねるごとに足し算していくから、そこがすごいなって思います。

SWAY:たしかに足してます。

―かつて「遊びがクリエイティブに反映する」とおっしゃっていたのを、本当に地で行ってるんですね。

SWAY:マジで地で行ってます。なんなら、遊んだときのメモ帳の増え方がヤバいですよ。この間、起きてメモ帳を見返したら「オレンジがテキーラに優しさをくれた」って書いてありました。

一同:爆笑

P-CHO:メモってたんや(笑)。

KUBO-C:あとは、いろいろな音楽ジャンルに挑戦していくなかで、活動初期のサウンドもいいなってまた思えるようになったというのはあるよね。デビュー当時からDOBERMAN INFINITYを成長させてきたけど、10周年を迎えて「あの頃も良さがあった」と思えるようになったというか。

ヒップホップを掲げる、その意味

―せっかくなのでお伺いしたいのですが、DOBERMAN INFINITYが提唱してきた”オールラウンドヒップホップ”というスタイルとの向き合い方って、この10年間で変化しましたか。

GS:何をもって”ヒップホップ”を謳っているかによって、感じかたも変わってくると思うんですけど、自分のなかでは”マインド”なんですよね。そもそも自分たちがヒップホップやR&Bで育ってきているから、争いを音楽に変えてきた”ヒップホップの精神性”を、それぞれがどっかに持っているんです。だから、自分たちにとってヒップホップは、”自分を表現するひとつの武器”を表す言葉だった。それは、今も変わってないです。DOBERMAN INFINITYらしい手段に嘘をつかなければ、引け目を感じなければ、全部が自分たちの音楽なんだって想いが”オールラウンドヒップホップ”には入っている感覚があります。

SWAY:もう僕らのなかで、馴染んでますよね。基盤になっているというか。

GS:だから、”オールラウンドヒップホップ”をジャンルとして捉えられるのは、ちょっと違う気がするんですよね。

KUBO-C:どちらかというと、「いろんなジャンルをやっていくけど、俺らを通せば全部がヒップホップになる」ってイメージ。

GS:「ヒップホップ精神がある自分たちを通したものは、全部が”オールラウンドヒップホップ”というジャンルになりますよ」という、ひとつの考え方なので。自分たちの精神的な表現として、変わらずに”オールラウンドヒップホップ”が根付いているからこそ、DOBERMAN INFINITYはバリエーション豊かなサウンドになっているんだと思ってます。

―では、この10年間で”オールラウンドヒップホップ”は、鋭さと寛容さのどちらに振れたと思いますか。

SWAY:個人的には、寛容になった気がしています。でも、12年前と今で大きく変わったのは、自分たちではなく僕らを取り巻くシーンだと思っていて。それこそ、”オールラウンドヒップホップ”を掲げた当初って、「これでどうやって盛り上がったらいいんですか」みたいなお客さんが、めっちゃ目の前にいた気がするんですよ。スマホで撮影するライブなんて考えられなかったし、極端にいえば「プチョヘンザ」しかなかった。だけど、今のお客さんは「どうヒップホップを聴いたらいいか」を、自分たち以上にわかってる。わざわざ”オールラウンドヒップホップ”を掲げなくてもいい時代になってるように感じるんですよね。いろんなことをやっているラッパーの人も多いですし。

GS:俺は逆かもしれんな。だいぶ削ぎ落とされてきたように感じています。デビュー当時と比べて、自分たちのやりたいことが具体化してきて、より自分たちが目指す”オールラウンドヒップホップ”に近づいている気がする。もちろん、それが作品になったときに、100%で表れるわけではないけど、感覚的には自分たちの「やりたいこと」や「やるべきこと」が、シュッとしてきたイメージがありますね。

KUBO-C:狭まって、広がって、また狭まって。

GS:戻ってきたんやろうな。

KUBO-C:10年前は「広げていくぞ!」って気持ちだったけど、だいぶ絞られてきているように感じます、俺も。

GS:でも、その時々の自分たちの感覚次第なので、今後どうなっていくかは、わかりません。いつの時代も同じ気持ちで制作と向き合っていることは、変わらないですけどね。だからこそ、ヒップホップを代表するHouse of Painの「JUMP AROUND」をカバーしましたし、自分たちを俯瞰するタイミングでは「1st SONG」ができた。その時々で切るカードが違うだけで、ずっと変わらない感覚でいると思います。しいていえば、音楽のクリエイティビティや考え方は、昔よりも洗練されて深みを増しているので、研ぎ澄まされてきた部分なのかもしれませんね。

―個々が洗練されたからこそ、グループとしても洗練されてきたということでしょうか。

GS:どちらかというと、「経験なくして今はなし」って感覚かな。いろんなカードを切りながら、一人ひとりが良かった・悪かったと判断を重ねていったからこそ、それぞれがクリエイティビティを発揮し、そこにみんなで乗っかってDOBERMAN INFINITYのものにするようになった。今までの10年にはなかった、いい時代が来てるんです。以前は「せーの」で一斉に作り始めることが多かったんですが、最近では個々で誘い合って曲が出来上がることも増えてきたんですよ。これは10年という月日があったからこそ、できていることなのかなと思いますね。DOBERMAN INFINITYとしての強みが出てきた感じがする。それこそ、プロデュースすることも増えた感じ、しない? CHOちゃんがOMW(P-CHO率いるプロデュースチーム)をやったのも大きいだろうし、SWAYも「マンマミーア!」を作ってくれて。その辺りから、個でプロデュースしてくれた曲が、DOBERMAN INFINITYの楽曲になることが増え始めた印象なんだよね。

P-CHO:プレゼンスタンスね。

GS:そうそう。「SUPER BALL」をKAZUKIが作ってくれたりとか。今なら、たぶん作らないやろ?

KAZUKI:そうですね。「DOBERMAN INFINITYに、こんな曲があったらいいな」と思って作りましたから。

『PRESENT』に刻んだ、誇れる今

―いい時代が来ているDOBERMAN INFINITYが生み出した『PRESENT』は、どのような1枚になりましたか。

GS:真骨頂だと思うんですよ、今回のEPって。細分化されたものや研ぎ澄まされたものを表現した4曲――、つまりDOBERMAN INFINITYの魂がしっかり乗った楽曲になってます。とはいえ、「言いたいことがこれだけ」ってわけではないんですけどね。俺らは、もっともっとバリエーションがあるグループだから。

SWAY:タイトルの”PRESENT”は、僕が提案しました。すでに配信されていた「Proud」が入るEPでありながら、ツアータイトルとしてグッズ制作でも使いやすいワードがいいなって。頭に”RE”をつけると”REPRESENT”になるし、「Proud」で歌われている”自分を誇ること”は自分自身を代表(REPRESENT)することにも繋がっていくと思ったんです。自分たちの音楽を人に届けるという意味での”プレゼント”でありながら、デビューから12年経った自分たちの現在でもあり、REをつけて自分たちを代表することに誇りを持とうという想いも込められる。いろいろな意味づけがしやすかったんですよね。

―各楽曲についても、お話しを聞かせてください。「戯言」は、どのような楽曲になっていますか。

GS:CHOちゃんとKAZUKIが、過去にプロデュースしてくれた「夏化粧」の感覚を、もう一度二人で超えてみたいってところがスタートだったよね。

P-CHO:KAZUKIとも話したんですけど、この曲ではメッセージを受け取ってもらうよりも、浸ってもらいたくて。どこか懐かしさを感じるワードをあえてチョイスしながら、全体像を作っていきました。サビを作っているとき、この曲にとって”一度きりのこと”が、 キーワードになると思ったんですよね。生きているなかで、感情や想い、出会いなど、いろんな出来事があると思うのですが、そこへものすご強い情熱を注げる瞬間ってもしかしたら人生において一度きりなのかもしれないって思うことがあり、この曲でその瞬間へ振り向いてもらえる時を作れたらいいなって。一度きりの情熱を、フラッシュバックさせてくれるアイテムのひとつだと思ったんですよ、音楽って。「戯言」を聴いた人が、それぞれあのとき「あんな熱い感情があったな」や「あんな大切な人がいたな」と、感じてもらえたら嬉しいですね。

―すべてが日本語なのも特徴的ですよね。

KAZUKI:けっこうそこは、こだわりあるかもしれないです。英語には、なるべく行きたくなくて。同じことを伝えられるなら、絶対に日本語でいけたほうがいいじゃないですか。自分がめっちゃ英語を喋れるなら使うだろうけど、そうじゃないし。

SWAY:自分に一番近い表現の仕方がいいってことね。

KAZUKI:そうですね。それに、英語に逃げたらサウンドがかっこよくなるのは当たり前。英語に負けない響きの日本語が、実は絶対どっかにあるから、妥協せずに探したほうがいいんじゃないかなっていう思想のもと、歌詞を書いてましたね。同じことを言ってても、ワード次第では、ダサく聴こえちゃうときもあるので。ちゃんと雰囲気を持っている言葉たちを選んでいきました。

―「Once Again」は、どのような楽曲でしょうか。

GS:ちょっと昔の明るくもエモいヒップホップというか。

SWAY:「Once Again」って感じですよね。

P-CHO:僕が最初に持っていったとき、ライブの最後に歌えるような曲を作りたいという想いがありました。KAZUKIにサビのトップラインを入れてもらったら、”Once again”という言葉が強くて。

KAZUKI:適当に宇宙語で歌ってたけど、そこだけ英語だったんだよね(笑)。

P-CHO:そこから、俺たちの”Once Again”を膨らませていきました。最初は、自分たちの決意表明が裏テーマだったんですけど、「ライブの最後に歌う曲にするなら、ストレートにそっちへ振り切ろう」という話になって。「もう一度ここで約束をしよう。また会おうよ」みたいなものを、素直にトラックへ乗せるほうがぶっ刺さるんじゃないかということで、ああいう曲になりました。DIバンドでライブをするときも、良い化けかたをしてくれそうで楽しみ。たしかKAZUKIが「アウトロをみんなで歌って、ドーンみたいな景色が見えますね」と言っていたので、叶うといいなって思ってます。

SWAY:阻止します!

一同:(笑)。

―「Right Now」は、どのような楽曲になりましたか。

SWAY:僕らのライブに欠かせない人気アンセム「JUMP AROUND ∞」を超えるライブアンセムを目指しました。

GS:80年代後半~90年代のヒップホップをイメージした曲を作ろうって。

SWAY:「JUMP AROUND ∞」もDJ Sachihoさんにオリジナルを僕ら用に作り直してもらった経緯があったので、「やっぱりDJ Sachihoさんじゃね?」ってなってお願いしました。たぶん僕らよりもDJ Sachihoさんのほうが悩んだと思います。

KUBO-C:でしょうね(笑)。

SWAY:「あれを超えるなんて、君たちは何を言ってるんだ?」って思ったはず。リファレンスに「JUMP AROUND ∞」は出しちゃダメですね。

P-CHO:ご法度?

SWAY:そう。作家泣かせですよね。

―結果的に、DOBERMAN INFINITYらしさが濃い1曲になりましたよね。

KUBO-C:ちゃんとバースがあるからかな。

SWAY:歌詞は持ち込みだったんですよね。それぞれ家で書いてきて、お互いに何をするかわからないっていう。だから、個性が出ているんだと思います。

―「Proud」は、どのような楽曲になりましたか。

GS:いい意味で、普通。1回聴いただけでは全貌を把握できないような、深さがある曲も個人的には好きなんですけど、たとえばふいにラジオで耳にしたときに「あ、いいな」と思ってもらえなかったら、もう二度と同じ感覚になってもらえないかもしれないとも思っていて。「Proud」に関しては、わかりやすさをすごく重視しました。「We are the one」のとき、「これだけたくさんの人に浸透するんだ」という経験をさせてもらえたから生まれた1曲。あのときよりもさらに、背中を押されるメッセージソングを目指しました。せっかく最初のゼロイチをやらせてもらったので、「自分だからこそできることをやりたい」とも思っていましたね。

―GSさんならではのエッセンスは、どういったところに反映されていますか。

GS:僕の性格そのままな気がするというか。やっぱり弱いんだなって。DOBERMAN INFINITYとして活動していると、地元の友達とかに「こんなに有名で、すごい」とか「いまだに音楽続けていて、すごい」って言ってもらうことがあるんですけど、まだまだ先を見ているし、叶えられていない夢もあるから、素直に胸を張れず謙遜してしまうんですよね。でも、「まだ足りない、まだ足りない」とネガティブばかりになっていても良くないじゃないですか。まずはここまで来られた自分自身を肯定しないと。どうやったらネガティブ精神をポジティブに持っていけるだろうと考えたとき、出てきたのが〈頑張れ今〉ってワード。それ以外の部分は、パッと絵が思い浮かぶような作りの歌詞を徹底していきました。野球で例えるなら、むちゃくちゃ打ちやすいど真ん中ストレートを投げた感じです。なかなかこういう系の楽曲って、簡単に作れるものじゃなかったので、「代表して骨組みを作ってください」と任されたからこそ、提案できた1曲だったようにも思います。たくさんの人に、この歌詞に共感してもらえたら嬉しいですね。

―最後に『DOBERMAN INFINITY LIVE TOUR 2026 ”PRESENT”』の意気込みをいただけますでしょうか。

SWAY:こういうリリース後のツアーって、答え合わせになる時が多いんです。新曲の反応が見られたり、「次はこんなことができるな」って気づいたり、アウトプットもインプットも両方ある。『PRESENT』の4曲をファンの方に届けた先で、どんなものが返ってくるのか、今からめっちゃワクワクしてます。もしかしたら、思っていた以上の反応が来るかもしれないし、思っていたのと全然違う角度で刺さるかもしれない。そんな答え合わせが楽しみなんです。早く暴れたいっすね。今からライブ後のビールが待ちきれないです!

KUBO-C:かなり早めやな(笑)。

SWAY:先走って、今日飲んじゃおうかな。

P-CHO:それは今日のビールやん(笑)。

DOBERMAN INFINITY

EP『PRESENT』

LDH Records

配信中

https://ldh.lnk.to/PRESENT

CD発売中

https://ldh.lnk.to/PRESENT_pkg

収録曲

1 戯言

2 Once Again

3 Right Now

4 Proud

DOBERMAN INFINITY LIVE TOUR 2026 ”PRESENT”

2026年6月16日(火)大阪・オリックス劇場

開場17:30/開演18:30

2026年7月12日(日)大阪・グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)

開場16:00/開演17:00

2026年8月12日(水)埼玉・川口リリア・フカガワみらいホール(メインホール)

開場17:45/開演18:30

2026年9月2日(水)岐阜・長良川国際会議場

開場17:45/開演18:30

2026年9月9日(水)千葉・森のホール21(松戸市文化会館)

開場17:45/開演18:30

2026年9月19日(土)福岡・福岡国際会議場 メインホール

開場16:15/開演17:00

2026年10月15日(木)東京・昭和女子大学 人見記念講堂

開場17:30/開演18:30

https://www.ldh-liveschedule.jp/sys/tour/42070/