地政学リスクの高まりを受け、安全資産としての「金」がかつてない注目を集めている。一時は史上最高値を更新し、どこまで上がるのかと世間を賑わせたが、直近では激しい乱高下を見せている。現在、金市場で何が起きているのか。エンパワーが運営する買取専門店「買取大吉」の鑑定士・木村健一さんに、中東情勢の影響とリアルな売り時について聞いた。
最高値から一転! 約30%の下落を見せた金相場
――中東情勢が悪化して以降、金価格はどのように推移していますか?
簡単に言うと、一時的に急騰する局面はありますが、これまでのような上昇基調ではなく、高値圏での乱高下をずっと繰り返しているという感じです。
ここ直近の動きで言うと、実は結構下がっているんですよ。今年3月ぐらいには1gあたり3万300円台という史上最高値まで伸びましたが、今は2万2000円台まで落ちたりしています。1日で700~900円単位で下落する日もあります。
本来、金相場は毎朝9時半に更新されるものですが、下がり方が加速すると、お昼ぐらいにまた更新が入るんです。最近はそれが多くて1日2回更新されることが増えています。朝の時点ではマイナス200円だったのが、昼になるとマイナス700円になっている。今はそういう、非常に不安定なイメージですね。
――なぜ、これほどまでに不安定な動きになっているのでしょうか。
投資家が敏感に反応しているからでしょうね。数カ月前に原油価格が大きく上がったことで、投資家の関心は金から株式へと移っていきました。また、アメリカの景気が市場の予想よりも好調だったことから、「今後も企業の業績が期待できそうだ」という見方が広がり、さらに株式へ資金が集まりました。その結果、金を売って株を買う動きが強まり、金価格の下落につながったと考えられます。
アメリカのトランプ大統領の発言ひとつで、みんなが一気に動くような状態なんだと思います。現状で言うと、金は下がり、株式市場も方向感を欠き、石油も落ち着き……投資家も一旦、様子見に入っている気がしますね。
僕としても、金がここまで下がるとは予想していませんでした。
金価格の変動で売却タイミングを見極める動きも
――店舗への持ち込み状況にも変化はありますか?
ニュースでも「3月と比べて30%近く金価格が下落した」といった報道が増えたこともあって、3月の最高値だった頃に比べると、金の持ち込みはやや落ち着いている印象です。最高値の頃は「今が売り時」と考えてご来店される方が非常に多かったのですが、現在は価格が大きく変動していることもあり、様子を見ながら判断される方も増えています。
一方で、相場の動向を日頃から注視されている方の中には、「ここからさらに価格が下がる前に、今のうちに売却しておきたい」と考え、早めにご来店されるケースも見受けられます。現在の価格でも十分高い水準だと捉え、「利益が出ているうちに売却しておこう」と判断される方も少なくありません。価格が大きく変動している局面だからこそ、お客様それぞれが相場の動きを見ながら、ご自身にとって納得できるタイミングで売却を検討されている印象です。
「売りたいと思った時が売り時」という鉄則
――今、金を買いたい人、または売りたい人へのアドバイスをお願いします。
買い時に関しては、正直まだ下がりそうな気もします。米金利が高止まりしているため、金を保有するメリットが相対的に薄れている状況だと思います。中東情勢が完全に落ち着けば、本来なら金価格はさらに下がる可能性がありますからね。
ただ、売り時に関しては考え方が別です。私がこの業界に入った7年前は1gあたり4000円~5000円台でした。その時と比べれば、今でも4倍以上高いわけです。一度3万円を知ってしまうと、下がったときに「安い」と感じてしまいますが、当時購入した金であれば、多くの場合は現在でも利益が出ている水準です。
投資目的でマイナスになりたくないならタイミングを見計らう必要がありますが、そうでなければ「いらないな」「売りたいな」と思った瞬間が一番の売り時です。欲をかくと結局、失敗することもありますから。ご自身が納得できるタイミングで判断することが大切だと思います。
