
県内全域で展示イベントはあるもの、これまで「走る」イベントのなかった山形県であったが、県内のクラシックカー愛好家たちからの熱望に応えたのが、山形県北部にある金山町で150年続く林業会社の「カネカ」だ。過去にはカネカ会長の川崎俊一氏を中心に金山町の遺産である旧い街並みとクラシックカーを融合させた展示イベント「ヘリテージ アンド クラシックカー ギャラリー」の開催経験もあり、カネカ代表の川崎恭平氏を実行委員長として「第0回ファントム ラリー」が初開催されたのは2024年のことだった。
【画像】山形の地域の魅力がふんだんに盛り込まれた「ファントム ラリー エピソードⅡ」(写真70点)
地元のみならず遠方からの参加者も来場するなど大盛況ともいえるプレイベントだったが、ファントムは”幻影”や”まぼろし”といった意味を持つことから、もしや一回限りの幻のイベントかと囁かれた。しかし2年後となる本年6月20日、21日の2日間「ファントム ラリー エピソードⅡ」として開催。心待ちにしていたクラシックカーラリー愛好家たちの期待に応えてくれたのである。
今回のスタート地点は、天童市にある山形県総合運動公園駐車場。地元山形を中心とした東北地方を中心に各地のナンバーを掲げた約50台のクラシックカーたちが集ってきた。
第2回を迎え、待ちかねたかのように再会を喜び合うエントラントの姿からも待望のイベントであることが理解できるだろう。
ドライバーズミーティングを終えスタートラインへとゼッケン順に並んだ参加車両。定刻となる8時30分になり集まった観客に見守られスタートするのは、1926年式ベントレー 3リッター スピードモデル、今回最古の車両だ。
このファントムラリーは、全行程を数カ所設けた中継地点まで、受付で渡されたコマ図の指示によりツーリング形式で移動する。コマ図を手にしたコドライバーとハンドルを握るドライバー、途中ミスコースのないように緊張しつつコミュニケーションを取りあい、山形の雄大な自然の中のドライブを楽しむ。
まず最初に到着したのは、スタートした天童市から山間部へ走行し約50kmの地点に位置する月山弓張平駐車場。ここで待ち構えているのは、2つのコースを使った5連続のPC競技だ、それぞれ2回戦が行われ、この後の、酒田港での7連続というPC競技を含め合計5回のPC競技の成績により順位が決定される。
月山を出発した一行が次に目指すのは鶴岡市にあるイタリア車のスペシャリストであるロッソカーズだ。ここでの買い物競争、ランチタイムを経てエントラントが向かう先は鶴岡公園(鶴ヶ岡城址)内にある荘内神社だ。
1840年、庄内(鶴岡)藩、長岡藩、川越藩の国替(三方領知替)を江戸幕府が命じるも、庄内藩主酒井氏を慕う領民たちの命懸けの嘆願により、国替えは中止。さらに1868年の戊辰戦争後の国替え計画を阻止したという歴史の証明ともいえる荘内神社。ここではファントムラリー参加者と愛車の交通安全を願ったお祓いが行われた。
同じく鶴岡公園内にある1915年(大正15年)に建てられた大寳館前での記念撮影では、荘内大祭や各種イベントで殺陣演舞を披露してくれる荘内武者隊士も立ち寄りを歓迎、再びルートへと戻る際の「出立」の掛け声は、きっとエントラントの士気を高めてくれたに違いない。
その後の一行は酒田港でのPC競技から日本海を臨む海岸線で初日ゴールのあつみ温泉を目指す。宿泊地萬国屋駐車場では、明日の降水予報に備えて愛車に対策を施すエントラントも見受けられた。
こうしたラリーイベントの楽しみの一つが、宿泊ホテルで行われる懇親会だ。地元食材を中心とした料理と美味しいお酒に会話も弾む。PC競技の表彰式に続いては、山形米をジョッキで掬い、指定された重さピッタリを競うゲーム。PC競技同様に誤差が勝負の行方を決めることからエントラントたちの表情も真剣だ。
予報通りの雨模様となった2日目は、県北金山町までのコマ図の指示によるツーリングだ。初回開催時からファントムラリーを応援しているカネカでは、神室山での修験者から伝わったと言われる「番楽」(民族芸能)の演舞を柳原番楽保存会により行われた。
金山町の伝統芸能に触れた後は、大雨の降りしきるなか2日目フィニッシュとなる天童市へ。大雨のなか約1時間の行程で、ほほえみの宿滝の湯へ到着。出迎えてくれるのは、GO&FUNレディのRihoさん、満面の笑顔でチェッカーフラッグを振ってのお出迎えに、完走の喜びはひとしおだ。
色々な山形を味わい知ってもらいたいというファントムラリー、次回が楽しみなのと同時に、競技に加えた地域色のある文化交流は、長くエントラントの心に残ることだろう。
文:奥村純一 写真:奥村純一、武田公実
Words: Junichi OKUMURA Photography: Junichi OKUMURA, Hiromi TAKEDA