
◆利上げは全ての企業にプラスではない
金利上昇というと、銀行や保険会社など金融機関への恩恵が注目されます。しかし、企業経営という視点で見ると、必ずしも全ての企業にとって追い風になるわけではありません。
企業の多くは設備投資や事業拡大のために借り入れを活用しています。金利が上昇すると資金調達コストも増えるため、利益を圧迫する要因になることがあります。
また、住宅ローン金利の上昇によって消費者の行動が変化する業種もあります。もちろん業績は金利だけで決まるわけではありません。それでも、金利上昇局面では影響を受けやすい業種があることは知っておきたいところです。
今回は、代表的な業種や企業を紹介します。
◆不動産業界は金利動向が重要
不動産会社にとって金利は重要な経営環境の1つです。住宅購入者の多くは住宅ローンを利用しています。金利が上昇すると月々の返済額が増えるため、住宅購入を慎重に考える人が増える可能性があります。また、不動産会社自身も開発資金や運転資金として借り入れを活用しています。
◆住友不動産<8830>
住友不動産<8830>は、総合不動産大手です。オフィスビル事業やマンション分譲事業を幅広く展開しています。都心部の優良不動産を数多く保有しており、企業としての競争力は高いことで知られています。
ただし、不動産業界全体としては金利動向の影響を受けやすい業種です。住宅ローン金利や不動産投資市場の動向は、今後も注目したいポイントといえるでしょう。
◆借入金の多い企業は資金調達コストに注意
金利上昇の影響は業種だけでなく財務体質によっても異なります。借入金の少ない企業であれば影響は限定的ですが、大規模投資を続ける企業では資金調達コストの増加が利益に影響する場合があります。
◆ソフトバンクグループ<9984>
ソフトバンクグループ<9984>は、国内を代表する投資会社です。AIやテクノロジー分野への投資で知られており、世界各国の成長企業へ積極的に投資しています。同社の業績は投資先企業の評価額や市場環境の影響を大きく受けますが、グループ全体では多額の有利子負債を抱えています。
そのため、金利上昇局面では事業環境だけでなく資金調達面にも関心が集まりやすい企業です。企業分析では売上や利益だけでなく、財務内容にも目を向けたいところです。
◆住宅関連企業も金利との関係が深い
住宅メーカーも金利上昇の影響を受けやすい業種の1つです。住宅購入は人生で最も大きな買い物の1つといわれています。そのため、多くの人が住宅ローンを利用します。金利が上昇すると毎月の返済額も増えるため、購入を先送りする人が出てくる可能性があります。
◆積水ハウス<1928>
積水ハウス<1928>は、国内を代表する住宅メーカーです。戸建住宅や賃貸住宅、マンション開発など幅広い事業を展開しています。住宅業界のなかでも高いブランド力を持つ企業として知られています。
企業としての競争力は高いものの、住宅業界全体としては住宅ローン金利の影響を受けやすい特徴があります。利上げ局面では住宅販売の動向や住宅ローン市場の変化にも注目が集まります。
◆「金利に強いか」を考える時代へ
長く続いた超低金利時代には、企業分析で金利を意識する機会はそれほど多くありませんでした。
しかし、金利が動き始めたことで状況は変わりつつあります。
・借入金は多いのか
・資金調達コストの上昇に耐えられるのか
・金利上昇が事業にプラスなのかマイナスなのか
こうした視点を持つことで、企業の見え方も変わってきます。
利上げ局面では、業績だけでなく「金利との関係」にも目を向けながら企業を見てみると、新たな発見があるかもしれません。
※記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告なく変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、ご自身の責任でお願いします。
文:田代 昌之(金融文筆家)
新光証券(現みずほ証券)やシティバンクなどを経て金融情報会社に入社。アナリスト業務やコンプライアンス業務、グループの暗号資産交換業者や証券会社の取締役に従事し、2024年よりフリー。ラジオNIKKEIでパーソナリティを務めている。
文=田代 昌之(金融文筆家)