【鎌倉 観光スポットレポ】建長寺のビャクシン - わたしたちもねじれ…

過去を振り返りながらも、前に進み続けるしかない暮らしの中、ふと立ち止まって、大きな木の下で青い空を見上げる。そのときあなたはやさしい木漏れ日をくれる樹勢の力強さに何を思うのでしょうか。

読者アンケートで取り上げて欲しい記事のテーマが「大きな木がある場所」になったと編集部の方に聞いたとき、わたしはそんなことを考えていました。何より、自分は木漏れ日の下で何を思うのだろうと。

答えを確かめようと、初夏の北鎌倉へ。「新日本名木100選」のひとつである建長寺の柏槇(ビャクシン)を訪ねました。

開山者が創建時にお手植えされた記念樹

日本最初の禅寺である建長寺は1253年、執権・北条時頼によって創建されました。拝観料を納めて中へ進むと三門と仏殿の間に見上げても梢が視界に入らないほどのビャクシンが聳えています。正面から向かって右側に4本。左側に3本。他に修行道場(拝観者は立ち入り禁止のエリアです)に2本あるそうです。

「南宋から渡来した建長寺の開山・蘭渓道隆(大覚禅師)が創建時にお手植えされたものとされています。」

言い伝えが正しければ向かって右側の2本目にある一番の古株で樹齢770年。「少なくとも推定樹齢は750年以上です」と僧侶の浅井正悟師が教えてくださいました。創建当時の様子を描いた古い絵図にもビャクシンと思われる木が描かれていることが裏付けになっているそうです。

ビャクシンに込められた思い

寺院創建に伴う植樹には俗に「教えがこの地に根づき、枝葉を広げて後世に残っていきますように」という願いが込められているのだと言います。中でもビャクシンは古来より禅宗の寺に植えられてきた樹木です。

「厳しい環境でも少しずつ芽を伸ばしていく。幹がねじりながら天空に向かって伸びていく。その姿が厳しい修行に耐え忍び悟りを目指す修行僧と重ねられてきました。」

建長寺のビャクシンは建造物を消失させた幾度の火災や地震も潜り抜けてその生命を繋いできました。失意のどん底で仰ぎ見る新芽が空に向かって伸びていく力強さは再建への希望をもたらすものでもあったのではないでしょうか。

悠久の時を生きて

老木と呼ばれる域に達した現在は樹木医による診断を受けながら適切に保全されています。

「創建750周年を迎えた2000年前後から傷みをどう保全していくかという取り組みを続けて来ました。」

指定天然記念物の為、一本の枝を払うにも行政機関の許可が必要だそうです。

「中には傾いてきて、支えなしでは立てない状態のものもあります。当然寿命もありますが、ビャクシンには樹齢千年を越えるものもある。これからも創建当時の息吹きという過去を伝え続ける数少ない存在であると同時に、人々の心の支えとなり、のびやかな未来を感じさせてくれるシンボルツリーであり続けて欲しいと願っています。」

ビャクシンに何を感じるか

"支え"という言葉に足下に広がる目に見えない木の根を想像していました。土中に張り巡らされた根は水や養分を吸収し、自身を支えるだけのものではありません。同じ土壌に共生する植生と情報や栄養を融通し、支え合う為のものでもあります。

地中で支え合いながら、空に向かってねじれながら伸びていく。もう一度仰ぎ見たビャクシンの姿に、多くの人と支え合いながら、迷いながら、間違いながら生きてきた自分自身を重ねていました。「人生とは必ずしも直線的なものではないのですよ」。自分よりも遙かに長い時間を、この地で風に吹かれて生きてきたビャクシンが葉音でそう囁いてくれたような気がしました。

770年前の創建時に開山者の手で植えられ、ねじれながら伸びていくその姿で、多くの修行者や参拝者に大切なことを伝えてきた建長寺のビャクシン。悠久の歴史の中で仰ぎ見た人々と心を通わせてきたシンボルツリーにあなたは何を感じるのでしょうか。

大本山 建長寺

拝観時間

8:30〜16:30

電話番号

0467-22-0981

拝観料

大人(高校生以上)500円小人(小中学生)200円※お支払いは現金のみ※障害者手帳、療育手帳をお持ちの方はご提示頂くと、ご本人と付添1名が無料

アクセス

JR「北鎌倉」駅よりバス5分または徒歩15分、JR・江ノ島電鉄「鎌倉」駅よりバス10分または徒歩30分住所:神奈川県鎌倉市山ノ内8駐車場:あり