東京商工リサーチは2026年6月17日、2026年「退職金」に関するアンケート調査の結果を発表した。本調査は2026年6月1日〜8日にインターネット経由で実施され、有効回答6,473社を集計・分析したもの。資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義しており、今回が初めての調査となる。

2023年以降の動向は「変更していない」が72.5%で最多、増額・導入が減額・廃止を上回る

2023年以降の退職金制度の動向について聞いたところ、「変更していない」が72.5%(4,694社)で最も多かった。一方、「退職金への拠出を増額した」「退職金制度を導入した」を合計した「増額・導入」は7.8%(508社)だったのに対し、「退職金への拠出を減額した」「退職金制度を廃止した」を合計した「減額・廃止」は1.9%(125社)だった。

今後の見通しについては、「退職金への拠出の増額、導入を検討している」が3.0%(199社)で、「退職金への拠出の減額、廃止を検討している」の0.9%(59社)を上回った。

  • 退職金制度の動向について

    退職金制度の動向について

産業別の退職金「増額・導入」は建設業が12.3%でトップ、金融・保険業はゼロ

回答を産業別に分析したところ、退職金の「増額・導入」が最も高かったのは建設業の12.3%(133社)だった。次いで卸売業の8.4%(100社)が続き、製造業が6.83%(110社)、サービス業他が6.29%(82社)となるなど、その他産業でも6%台が目立った。一方、金融・保険業は退職金の「増額・導入」がゼロであり、一方で「退職金制度を廃止した」が3.7%(3社)となった。

  • 産業別 退職金制度の動向について

    産業別 退職金制度の動向について

大企業は「確定拠出年金の推奨」、中小企業は「成果主義への移行」が変更理由の上位に

退職金制度を「減額・廃止」または「減額・廃止を検討している」とした企業に変更理由を聞いた。

大企業の回答社数は少ないが「確定拠出年金の利用を推奨するため」が50.0%(5社)で半数を占めた。大企業は企業型DCを導入する企業が中小企業より多く、従業員の資産形成を後押しする狙いがあるとみられる。次いで「新規採用を強化するため」の40.0%(4社)が続いた。退職金削減で生まれた原資を月給に回し、採用競争力を高める狙いがうかがえる。大企業におけるその他の理由は、「成果主義への移行のため」が20.0%(2社)、「退職所得控除が見直されたため」が10.0%(1社)、「インフレ率と同等以上の運用が見込めないため」が10.0%(1社)だった。

一方、中小企業は「成果主義への移行のため」が38.3%(46社)だった。物価高で利益確保が難しく、退職金ではなく賞与などの形で従業員にインセンティブを与える狙いが透けて見える。これに「インフレ率と同等以上の運用が見込めないため」の29.1%(35社)、「新規採用を強化するため」の15.0%(18社)、「退職所得控除が見直されたため」の10.0%(12社)、「確定拠出年金の利用を推奨するため」の10.0%(12社)が続く。金利上昇による債券の含み損拡大を問題視する見方や、金融市場の先行きが不透明なことから、退職金の前払いで運用も含めた使い道を従業員に一任する企業も増えているようだ。

  • 退職金制度を「減額・廃止」または「減額・廃止を検討している」する理由

    退職金制度を「減額・廃止」または「減額・廃止を検討している」する理由

変更により生まれた原資は「既存従業員の月給引き上げ」が48.9%で最多

退職金制度を「減額・廃止」した企業に、それにより生まれた原資の振り分け先を聞いた。大企業からの回答を得られたのは3社で、中小企業が93社と大部分を占めている。

最多は「既存従業員の月給を引き上げた」で48.9%(47社)だった。次いで「中途の新規採用者の月給を引き上げた」が23.9%(23社)、「福利厚生を拡充した」が20.8%(20社)、「新卒者の月給を引き上げた」が15.6%(15社)と続く。慢性化する人手不足で、人材の採用および定着に関わる内容が上位を占めた。一方、「価格競争力を維持するための原資にした」15.6%(15社)、「債務返済に充てた」13.5%(13社)と回答した企業もあった。

規模別の内訳をみると、大企業は既存従業員の月給引き上げ、債務の返済、価格競争力の維持にそれぞれ33.3%(各1社)ずつ振り分けた。中小企業では、既存従業員の月給を引き上げたが50.53%(47社)、中途の新規採用者の月給を引き上げたが24.73%(23社)、福利厚生を拡充したが21.50%(20社)、新卒者の月給を引き上げたが16.12%(15社)、価格競争力を維持するための原資にしたが15.05%(14社)、債務の返済に充てたが12.90%(12社)、設備投資、不動産取得に充てたが3.22%(3社)となった。

業種別では、人材の採用・定着に関わる内容に振り向けた企業の割合は建設業と情報通信業で目立った。一方、製造業とサービス業他は「債務の返済に充てた」「価格競争力を維持するための原資にした」も目立ち、相対的に経営が厳しい企業が多いことを示唆する結果となった。

  • 退職金制度を「減額・廃止」により生まれた原資の振り分け先

    退職金制度を「減額・廃止」により生まれた原資の振り分け先