Visaは6月10日、「Visa Payments Forum 2026」において、クライアントが次世代コマースを実現できるよう支援するための新たなAI、ステーブルコインおよびトークン機能を発表した。
基調講演において、同社の最高製品・戦略責任者であるジャック・フォレステル氏は、人工知能とステーブルコインという2つの基盤的な変化が資金移動のフロントエンドとバックエンドの両方をどのように変革しているのか、また同社がどのようにクライアントの参画を支援しているかを説明した。
フォレステル氏は次のように述べている。「AIはコマースのフロントエンドを変革しています。ステーブルコインはバックエンドを再構築しています。Visaの役割は、エコシステムのすべての参加者にとって、それが安全に、信頼性高く、グローバル規模で機能することを可能にすることです。」
AIによるコマースのフロントエンドの高度化とその構築
同社はAIがどのように取引を開始し、承認および信頼のあり方を変革しているかを説明するとともに、特にAIエージェントが消費者および企業の代理として行動することが増える中で、新たなコマース体験がどのように設計され、開発され、提供されるかという点でも、そのスピードが加速していることを示した。エージェンティック・コマース向けプラットフォーム「Visa Intelligent Commerce」を通じて、AIエージェントが安全に取引を発見、開始、完了するために必要な信頼性やコントロール、接続性を提供する。
また、主要なAIプラットフォームとの連携や新たな加盟店向け機能の提供、エージェントによる取引の透明性や信頼性を確実にするためのインフラ構築も進めている。これには以下が含まれる。
エージェント・スコアリング
New Generationとともに構築し、加盟店が自社サイトのエージェンティック・コマースの対応状況について評価できるようにするもの。具体的には、AIエージェントが加盟店サイト上でナビゲートし、コンテンツを理解し、タスクを完了できるかどうかを評価する。
エージェンティック・ディレクトリ
加盟店は自社サイトで取引を行うエージェントが信頼できるかどうかを把握する必要があり、またエージェントは正当な加盟店とやり取りしているという確信を持つ必要がある。エージェンティック・ディレクトリには、同社がエージェンティック・コマースにおいて正当な参加者として検証したエージェントおよび加盟店を掲載する。
OpenAIとのパートナーシップ
OpenAIとの戦略的な提携は、エージェンティック・コマースにおいて安全な同社の決済を実現し、OpenAI上の体験全体にわたってシームレスかつ信頼性の高い決済を可能にする。本パートナーシップを通じて、同社は自社のグローバルネットワーク、認証機能、およびセキュリティインフラを提供し、エージェンティック・コマース体験を支援する。これにより、消費者および企業が安心してやり取りおよび取引を行えるようになる。
大規模トランザクションモデル
不正検知を強化すると同時に、承認パフォーマンスを向上させ、誤検知による拒否(フォールスディクライン)を低減するために、数十億件のトランザクションデータを学習したAIモデル。これは、長年にわたり業界が課題としてきたトレードオフを解消するものとなる。
同社はCrypto Labsおよび開発者チームによる初期段階のコンセプトも実演した。これには、AIエージェントがVisaのトークン化された認証情報を用いてターミナル上で直接デジタルサービスに対して支払いを行う、コマンドラインインターフェースの概念実証が含まれる。
フォレステル氏は次のように述べている。「私たちは、今後、創造および取引の多くがAIツールを活用する開発者によって主導されると考えています。私たちは、コマンドラインにおいてカードが最適な決済手段となるよう、業界とともに取り組んでいます。」
AI主導型コマースに向けたトークンの高度化
同社は、トークンの大幅な機能強化を発表した。現在、トークンはデジタル決済のために設計された高度で安全なデータセットを備えている。コマースが新たなチャネルやエージェントへと拡大する中で、同社は取引の種類、利用場所や利用者に関する詳細情報を提供するため、データの強化を進めている。
もう1つの重要な進展は、token assurance signal(トークンアシュアランスシグナル)である。トークンの利用は、そのライフサイクル全体にわたって評価される。発行時の情報および行動履歴に基づいて、各取引の背後にある信頼を示すシグナルが生成される。
これらの強化により、イシュアは承認判断においてより強固なシグナルを得ることができ、加盟店に対する誤検知による拒否を削減し、消費者の利便性を向上させる。
これらの開発はAI主導型コマースを前提として設計されており、認証情報にアイデンティティ、権限、および行動シグナルがより深く組み込まれることで、信頼が取引とともにデバイス、チャネルおよびユースケースを越えて機能することを可能にする。これには、AIエージェントによって自律的に開始される取引も含まれる。
ステーブルコインによる資金移動のバックエンドの高度化
同社はまた、ステーブルコインおよびブロックチェーンベースのインフラを通じた決済および価値移転の高度化に関して進捗を共有した。
トークン化預金
同社は、銀行が従来の預金をプログラマブルにより常時稼働するデジタルマネーへと変換できる技術レイヤーを構築する予定だ。これにより、銀行は資金をバランスシート上に保持しながら、ステーブルコインと同様のスピードおよび柔軟性を達成することが可能になる。
ステーブルコイン決済
同社は複数の地域、ブロックチェーンおよび通貨にまたがるステーブルコイン決済のパイロットを拡大している。2025年初頭にパイロットを開始して以降、同社はVisaNet上で数十億ドル規模のステーブルコインを移動させており、2026年3月時点で年間ランレートは約70億ドルとなっている。さらに、発行銀行がすでにVisaとオンチェーンで週7日決済を行っている中、同社はアクワイアラに対しても週7日決済を拡張するために取り組んでおり、エコシステム全体における柔軟性と頻度の向上を図っている。
ステーブルコイン連動カード
同社は、ステーブルコイン連動カードプログラムの拡大を継続し、消費者および企業がどこのVisa加盟店でもステーブルコイン残高を利用できるように取り組んでいる。世界で160以上のプログラムが稼働または開発中であり、導入はさらに加速する見込みだ。
クライアントのモダナイゼーションへのスムーズな移行を支援
同社はこれらのイノベーションを通じて、クライアントからの一貫したメッセージを強調した。それは、モダナイゼーションは不可欠である一方で、システムの全面的な置き換えは現実的ではないという点。同社は既存インフラと統合するモジュール型のクラウドネイティブ機能の提供により、銀行、フィンテック、アクワイアラおよび加盟店がそれぞれのペースでモダナイゼーションを進められるようにしている。
イシュア向けには、Pismoのコアバンキングプラットフォームによって柔軟でリアルタイムなバンキングおよびプロセシング機能を提供し、従来システムからの段階的な移行を可能にする。
アクワイアラおよび加盟店向けには、Unified Checkoutがカードおよび非カード決済の両方を受け入れる一貫した方法を提供し、AI主導型取引を含む進化するコマースモデルに対応する。さらに、Visa Intelligent Authorizationは、リアルタイムのネットワークシグナルや高度なモデルを活用し、承認の最適化や拒否される可能性のあった追加支出の取り込みを支援する。
