仕事での失敗を何度も思い返してしまう。プレゼンが緊張しすぎて夜も眠れない――。そんな"考えすぎ"に悩む人は少なくないだろう。古代ローマの指導者ガイウス・ユリウス・カエサルは、そんな感情との距離を取るために役立つヒントを残している。

今回は、『1日ごとに差が開く天才たちのライフハック』(三笠書房)から、古代ローマの指導者カエサルが実践した、ストレスに打ち勝つライフハックをご紹介。現代の心理学研究でも効果が示されているというその方法は、驚くほどシンプルなものだった。

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自分のことを三人称視点で語る(ガイウス・ユリウス・カエサル/紀元前100~紀元前44)

よくアニメなどで、美少女キャラクターが「私」などの一人称を使わず、自分の名前で自分を呼ぶことがある。これは可愛さをアピールするための習慣だが、用途こそ違えど、同じような習慣を古代の英雄も持っていた。

古代ローマの指導者、ガイウス・ユリウス・カエサルが、その最たる事例である。元は軍人だった彼は、ガリア地方(現フランス)に遠征したとき、『ガリア戦記』を執筆した。 全8巻(カエサルが書いたのは7巻まで)で構成されたこの書物には、8年間に及ぶ記録が書かれている。戦争だけではなく、遠征先の文化や風習についても多くの記述があり、旅行記の側面もある。名著として知られ、現在でもラテン語のテキストとして広く用いられているほどだ。

その『ガリア戦記』を書いたとき、カエサルは自ら筆を執ったにもかかわらず、自分のことを「私」などと書かず「カエサル」と呼んでいる。

たとえば、「私は今日、フランスに到着した」と表現すべきところを、「カエサルは今日、フランスに到着した」と書いたのである。著者を知らずに読むと、まるでカエサル以外の人が書いた本のように読める。

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彼はなぜ、このような習慣を持っていたのだろうか。

それは、本に客観的な印象を持たせるためである。第三者視点で自分の戦功を詳しく記録することで、それを自分の宣伝材料に使おうとしたのだ。実際、『ガリア戦記』は当時のローマでベストセラーとなり、彼が大衆的な人気を得るきっかけとなった。

さて、カエサルの狙いとは別に、この習慣には心理的な効果もある。ミシガン州立大学などの研究によれば、三人称視点で行う内的な対話は、感情制御の指標を低下させることが確認されている。つまり、自分の感情をまるで他人のように観察することで、ネガティブな感情的反応が和らぐのだ。

異国への遠征でストレスにさらされていたカエサルも、無意識のうちにこの習慣の心理的な効果に頼っていたのかもしれない。いずれにせよ、これは困難に直面したり、何か辛いことがあったりしたときに活用したい習慣である。

余談だが、私の知人には、自分のことを「お前」と呼ぶメールを自分自身に送る習慣を持つ者がいた。

「おいお前、午後には会議があるが、準備はできているか?」
「お前、毎日の運動を忘れるなよ。病気になったらお前自身が困るんだからな」

こんな調子のメールを自分に送るのである。

知人曰く、自分が書いたメールでも、「お前」と書くだけでまるで他人から届いたメッセージかのように錯覚してしまい、やる気が出るのだという。本項で紹介した習慣は三人称視点で、この知人のメールは二人称を使っているので形式は異なるが、当事者の立場から離れた観察者の目線を利用する点では、同じ効果を狙っていると言えるだろう。

1日ごとに差が開く天才たちのライフハック(三笠書房)

¥847円
著者:許 成準
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