
アンダーソン・パーク(Anderson .Paak)の最新独占インタビュー。自身の初監督映画『K-POPS!』及びサウンドトラックの制作舞台裏、シルク・ソニックの未来を語る。
5月29日にリリースされた『K-POPS!(Music from and inspired by K-POPS! Motion Picture)』は、アンダーソン・パークの監督デビュー作『K-POPS!』のコンパニオン・アルバムとして制作された作品だ。映画は5月30日からNetflixで配信が始まった。
アルバムには、韓国のアイドル業界を舞台にしたファミリー・コメディという作品設定にふさわしく、Aリスト級のK-POPアーティストたちが参加しており、aespa、NMIXX、SEVENTEENのJOSHUA、i-dleのSOYEON、ATEEZのHONGJOONG、JO1、G-DRAGON、Jay Park、Chung Ha、LNGSHOT、Crush、DEAN、KEVIN WOOらが名を連ねる。一方で、アンダーソン・パーク自身のボーカルも数多く収録されており、彼特有の豊潤でレトロ志向のサウンド感覚がアルバム全体を貫いている。そのため本作は、2019年の『Ventura』以来、最もソロ・アルバムに近い作品に仕上がっている。
現在パークは、ブルーノ・マーズとのツアーの真っ最中だ。オープニング・アクトとしてDJ Pee .Wee名義でDJを務める一方、本編ではマーズとともにステージに立ち、シルク・ソニックのパートにも出演するという”一人二役”をこなしている。Rolling Stone誌のインタビューで、パークはこのアルバムの制作過程やシルク・ソニックの今後、息子のソウル・ラシードとの共演などについて語った。
『K-POPS!』トレイラー映像
ーこれはサウンドトラックであると同時に、間違いなくアンダーソン・パークのアルバムでもありますね。
パーク:そうだね、間違いなく。僕としては、両方の世界がぶつかり合うような作品にしたかったんだ。K-POPのグループやアーティストたちを僕の世界に招き入れて、僕やプロデューサーのDem Jointzと一緒に何かを作り上げたかった。彼は多くのK-POPアーティストと仕事をしてきたし、このサウンドトラックや映画でも僕と一緒に取り組んでくれた。彼らを僕たちの世界に迎え入れて、このキャンバスの上で自由に遊びながら、彼らの通常のフィールドではあまりやらないようなことにも挑戦したかったんだ。だから言ってみれば、これはK-POPの世界の中に存在するアンダーソン・パークのアルバムだったと思う。
ーこのアルバムは、K-POPがアメリカの黒人音楽に由来しているという明白な事実を、改めて思い出させてくれるものでもあります。
パーク:ああ、その通りだ。それに、こういうコンピレーションは意外と珍しい。K-POPのアーティストたちが同じアルバムに集められることはあっても、今回のように複数のグループやソロ・アーティストが一堂に会する形は、これまでほとんどなかったんじゃないかと思う。だから僕らは、まだ誰もやったことのないことに挑戦したかったし、同時に君が言ったように、その音楽の本質が何なのかを改めて思い出してもらいたかった。
―その本質とは?
パーク:間違いなくブラック・ミュージックであり、R&Bであり、ヒップホップだ。K-POPの多くは、そうした音楽に対する彼らなりの解釈なんだ。そして、それは以前から何度も見てきたことでもある。K-POPに限らず、インド音楽をはじめ、さまざまな国や地域の音楽の中で、そうした解釈は繰り返し行われてきた。僕がこの現象で興味深いと思うのは、人々がそれをどう解釈し、どのように自分たちなりの形で表現するのかを見ることだ。でも同時に大切なのは、その文化と音楽への敬意を忘れず、きちんとルーツに敬意を表することだと思う。そうしていれば、長い目で見てその音楽は必ず自分たちに還元されるはずだから。
―先ほども少し触れられていましたが、参加しているアーティストたちはそれぞれ異なるレーベルに所属しています。これだけの顔ぶれをひとつのプロジェクトに集めるのは簡単ではなかったと思いますが、実際どのように実現したのでしょうか?
パーク:いやあ、本当に大変だったよ。ヒップホップ業界もいろいろ政治的だと思っていたけど、今回はそれ以上だった(笑)。まず全員に参加してもらうこと自体が大仕事だったし、その後も権利関係の承認手続きが山ほどあった。この映画を作る過程もそうだし、サウンドトラックや映像制作の段階でもそうだったけれど、今回のプロジェクトはこれまでで最も難しい仕事のひとつだったと思う。でも、みんなが企画に賛同してくれて、映画を観て僕たちが何をやろうとしているのか理解してくれたあとは、本当に気持ちよく一緒に仕事ができた。これだけの顔ぶれをひとつの場所に集められる人はそう多くないと思うし、それを実現できたことを誇りに思っている。もちろん、プロデューサーのDem Jointzと一緒だったからこそできたことだ。彼がいなければ実現不可能だったと思う。
彼は何年も前からこのシーンで活動していて、誰にどんな曲を用意するべきかを見極めるうえで欠かせない存在だった。それに韓国でコンテンツ撮影も行ったんだけど、みんなが集まってくれて、まるで小さなK-POP合宿みたいだったよ。今となってはみんなが恋しいくらいだ(笑)。とはいえ、本当に簡単ではなかった。僕とDem Jointzが膨大な時間をかけて粘り強く取り組み、ひたすら努力を積み重ねた結果、ようやく形にすることができたんだ。
―ソロ名義のアルバムとしては2019年以来の作品になりますが、ご自身としてもこれはある種のソロ・アルバムだという感覚がありますか?
パーク:そうだね。最初は単純に、映画に寄り添うサウンドトラックを作ろうと考えていたんだ。映画の中にはオリジナル曲がたくさん使われているし、そのための楽曲制作も本当に楽しかった。でも制作を進めるうちに、この作品はだんだん独自の世界を持ち始めたんだよね。そして気づけば、「これはもう単なるサウンドトラックじゃないぞ。実質的に自分のアルバムになっているな」と思うようになった。言われた通り、ここ数年は本当に忙しくて、ソロ・アルバムを出してこなかった。でも僕はどんなプロジェクトに関わるときも、とことん深く関わってしまう性格なんだ。自分でもどうしようもないくらいね。
NxWorriesでもシルク・ソニックでも、あるいはこうしたコンピレーション作品でもそうだけど、とにかく何にでも首を突っ込んでしまう。この作品もまったく同じだった。最初は映画の曲を何曲かまとめて出せばいいかな、くらいに考えていたんだ。でも気づけば、「いや、どうせなら史上最高のサウンドトラックを作りたい」と思うようになっていた。そして映画と同じくらい大きな出来事として、この作品を成立させたかったんだ。自分を抑えきれなかったのさ。
―息子さん(ソウル・ラシード)との制作はいかがでしたか?
パーク:息子と一緒にスタジオに入って、ボーカルを録音できたのは最高だったよ。映画を制作していた当時、彼はちょうど思春期を迎えていて、ティーンエイジャーになりかけている時期だった。だから、それまで大好きだったK-POPから、今度はスリップノットに夢中になるようになってね。好みが大きく変わっていったんだ。それで彼がレコーディングして、自分の楽曲パートを担当する段階になったとき、まずは本人が無理なく歌える曲を見つける必要があった。というのも、その頃の彼はあまり歌いたがらなくて、関心は別の音楽に向いていたからね。
僕とDem Jointzは「Love Is Everywhere」という曲を何年も前から温めていたんだ。あるとき偶然その曲を聴き返して、「これならいけるかもしれない」と思った。映画のテーマにも合っていたし、彼の声域にも無理なく収まると感じたんだ。それで息子に聴かせてみたら気に入ってくれてね。こうして一緒にスタジオに入り、その曲をレコーディングすることになった。何年も前から持っていた曲に彼がボーカルを入れ、さらに僕自身も歌を録り直したんだけど、それは素晴らしい体験だったよ。何より息子の歌声を聴けたことがうれしかった。彼は本当に美しい歌声の持ち主なんだ。もっとその才能を活かしてくれたらいいなと思うけれど、本人は少し恥ずかしがり屋なんだよね。
DEANやLNGSHOTとの共作、あの大物とのコラボ計画もあった?
―特に印象に残ったコラボレーターはいますか?
パーク:LNGSHOTだね。Jay Parkのグループで、今まさに頭角を現しつつある若い連中なんだ。彼らがレコーディングした音源を聴いたときは本当に驚いたよ。デモを送ったあと、どんなものが返ってくるかなんてわからないものだけど、彼らは期待をはるかに超えてきた。完全にホームラン級だったし、本当に素晴らしかったよ。それに一緒に過ごしていてもすごくいい連中だった。ミュージックビデオも一緒に撮影したんだ。
―今回のアルバムでは、あなたとDem Jointzが過去の未発表曲やアイデアを掘り起こし、完成させた楽曲もあるそうですね。
パーク:そうなんだ。僕はいつも「取り残される曲はひとつもない」と言っているんだよ。とにかくたくさん曲を書くから、映画やCM、あるいは他のアーティスト向けの作品に使えそうなものがないか、定期的にアーカイブを見返すのが好きなんだ。今回もそれができた。映画制作を通じて改めて学んだことなんだけど、映画で使いたい既存曲の使用料って、時間が経つにつれて高くつくんだよね。リル・ウェインの曲も使いたかったし、ほかにもいろいろ候補があった。でも見積もりが返ってきたら、「この曲はこれだけかかります、あの曲はこれだけです」と言われてさ(笑)。それで「よし、それなら自分のアーカイブにある曲を使おうかな」となったんだ。正直、その金額は払えなかったからね。
だから「Jewels」のような既発曲も使えたし、一方でプロデューサーのロジェ・チャハイェドと作った未発表曲も活用できた。「The Last」はそのひとつで、彼と長い間温めてきた曲なんだ。ずっと完成させようとしていて、ようやく形にすることができた。僕自身とても誇りに思っているよ。あの曲は映画の冒頭で流れるんだ。とても美しいアニメーション・シークエンスを彩る楽曲になっていて、作品の幕開けを印象的なものにしてくれている。
―DEANとの「Aftertaste」はどのようにして生まれたのでしょうか?
パーク:Dem Jointzがあの曲のデモを聴かせてくれた瞬間、真っ先にDEANのことが頭に浮かんだんだ。K-POPシーンの中で、本格的なR&Bサウンドを自然に表現できるアーティストはそう多くないけれど、DEANは間違いなくその一人だからね。彼とは10年近く前に「Put My Hands on You」という最高の曲を一緒に作ったことがあったし、今回のサウンドトラックにもぜひ参加してほしいと思っていた。それで、彼にぴったりな曲を探していたんだ。この曲を聴いた瞬間に「これだ」と思って、すぐに彼へ送ったよ。
ただ、その頃のDEANはしばらく新しい音楽を発表していなかったから、スケジュール的に参加できるのか、それともどういう反応をするのかは正直わからなかった。でも彼はすぐに返事をくれて、「この曲が大好きです」と言ってくれた。そしてレコーディングに入ると、本当に素晴らしい仕事をしてくれたんだ。DEANは自分のサウンドに対してとてもこだわりの強いアーティストだから、ミックスも何度か調整して、細かい部分まで納得のいく形に仕上げていった。最終的には期待以上のものを作り上げてくれたよ。10年ぶりにまた一緒に作品を作れたこと自体、本当に最高だったね。
―RMやBTSとはこれまでも関わりがありましたが、今回さらに何か一緒に取り組む話はあったのでしょうか?
パーク:もちろんあったよ。実は映画の段階から何か一緒にできないかという話はしていたんだ。でも、ちょうど僕がこのプロジェクトを進めていた時期に、彼らは兵役中だった。メンバーの多くが軍に入っていたし、RMもその中にいた。RM自身は何かやりたいと思ってくれていたんだけど、結局はスケジュールの問題だったんだ。その後、彼らはソングライティング・キャンプに入ったし、僕はサウンドトラック制作を進めていた。彼らは主に自分たちのアルバム制作に取り組んでいて、僕はツアーに出ていた。だから本当にタイミングが合わなかっただけなんだよ。
―逆に、あなたが彼らの『ARIRANG』のソングライティング・キャンプに参加する可能性もあったのでしょうか?
パーク:ああ、そうだね。実際に向こうから声をかけてもらっていたんだ。でも、その時期は僕のスケジュールも完全に立て込んでいてね。どうしても都合を合わせることができなかった。まあ、でも見たところ、彼らは僕がいなくても十分うまくやったみたいだけどね。
―監督として、今後も映画制作に取り組みたいと考えていますか?
パーク:もちろんだよ。この映画では本当に鍛えられたし、散々苦労もした。でも、またすぐにでもやりたいと思っている。この初監督作品から学んだことは本当に多かったんだ。それに、自分たちの物語を自分たちで語らなければ、いったい誰が語るんだろうとも思う。特にブラック・コミュニティとアジア系コミュニティの関係性を描いたような作品は、まだそれほど多くないからね。僕が子どもの頃に観て育った映画にも、そうした表現はあまりなかった。だから俳優としてであれ、監督としてであれ、プロデューサーや脚本家としてであれ、映画の世界でもっと多くの物語を届けていきたいと思っている。今はすっかり夢中なんだ。また次の作品を作るのが待ちきれないよ。
―あなた自身に韓国系のルーツがあることを、今回初めて知った人も少なくないと思います。驚かれることはありますか?
パーク:もちろん。特に韓国の人たち自身がかなり驚いているね。でも今はみんな本当に僕を仲間として受け入れてくれていて、それがすごくうれしいんだ。それに今は韓国カルチャーの勢いがすごいからね。僕もその波に乗っているよ。最近は韓国系であることを理由に賞までいただくようになったし、だから今はとにかく楽しんでいるよ。クレイジーだよね。すごく面白い状況だと思っている。
ブルーノ・マーズへの敬意、シルク・ソニックの未来
―今回のブルーノ・マーズのツアーでは、シルク・ソニックのコーナーも披露していますね。実際にやってみていかがですか?
パーク:最高だよ。本当に素晴らしい仕事だね。まずはブルーノに感謝したい。彼は僕を特別な存在として扱ってくれているんだ。ステージに登場すると花火が上がるし、また彼と一緒にステージに立てることが本当にうれしいよ。
今、彼は世界で最も入手困難なチケットを売るアーティストの一人だと思う。そのショーの中にシルク・ソニックのパートを自然に組み込んでくれているのは本当に素晴らしいことだし、彼と同じステージに立てることを光栄に思っている。彼は今この時代における最高のエンターテイナーだと思う。だからステージを共有できることを決して当たり前だとは思っていないんだ。本当に感謝しているよ。それにすごく楽しいんだ。DJ Pee .Weeとしてオープニングも担当しているから、僕は毎晩二役をこなしている。大変だけど、最高に楽しいね。
―シルク・ソニックは今後も継続していくプロジェクトなのでしょうか。新しいアルバムを作る可能性もありますか?
パーク:もちろんだよ。十分あり得ると思う。そういう可能性はいつだってあるんだ。グループのいいところは、必要なときにいつでも再始動できることだからね。それに今は彼自身が最新プロジェクトで大きな成功を収めているし、そのこともうれしく思っている。僕たちはまだたくさんの公演を控えているし、このままだと一生ブルーノと一緒にツアーを回り続けることになりそうだけどね(笑)。だから、もう1枚くらいアルバムを作る時間はきっと見つけられると思うよ。
アンダーソン・パークも帯同、「The Romantic Tour」の模様
―改めて、純粋なソロ名義の作品については、何か計画がありますか?
パーク:もちろん大きな計画はあるよ。ほんの少しでも腰を落ち着ける時間さえできればね(笑)。実際、新しい楽曲の制作はずっと続けている。ただ、自分としてはきちんと納得のいく形にしたいし、その作品にふさわしい環境やタイミングの中で発表したいと思っているんだ。だから次のソロ・プロジェクトは間違いなく期待していてほしい。ただ、いつになるかはまだ言えない。でも確実に取り組んでいるよ。
―ほかに今後の予定で、ファンが知っておくべきことはありますか?
パーク:まずはシルク・ソニックとDJ Pee .Weeとしてのツアーをぜひ観に来てほしいね。それから、自分のレーベル「APESHIT」からもすごく面白いプロジェクトがいくつか控えていて、本当に楽しみにしているんだ。ただ、まだあまり早く詳細を明かしたくはないから、今はレーベルの動向に注目していてほしいかな。そのほかにも映画関連の企画があるし、もしかしたら将来的には本を書くこともあるかもしれない。僕はじっとしていられるタイプじゃないからね。いつだって何かしら仕掛けていくつもりさ。
V.A.
『K-POPS! (Music from and inspired by K-POPS! Motion Picture)』
配信中
