「『その運転をやめてください』とすごく言いにくいんです」――。笑い飯・哲夫が、小説『頭を木魚に』のストーリーを構成する一つの要素となった“日常のモヤモヤ”を明かした。タクシー運転手の運転に違和感を覚えても、なかなか言葉にできない。その感情をフィクションの中で膨らませ、物語へとつなげたという。

  • 笑い飯の哲夫

    笑い飯の哲夫

小説『頭を木魚に』はタクシー運転手が主人公

小説『頭を木魚に』(1,760円 主婦の友社)を上梓した哲夫(笑い飯)がこのほど、都内で取材に応じた。

『頭を木魚に』の主人公は、有無も言わせぬ会社の上下関係、煩わしい人間関係を避けるため、タクシー運転手という職業を選んだ人物だ。 しかし、会社の方針という名の欺瞞の犠牲となり、身に覚えのない濡れ衣を着せられる。

哲夫はこの小説を書くにあたり、主人公はタクシー運転手にしようと思い立ち、ストーリーを構成していったという。

「僕、タクシーの運転手に『その運転をやめてください』とすごく言いにくいんです。その運転がどういう運転かというと、アクセルを踏んで離して、踏んで離してという運転をする人なんですよ。前に車がいないのに、なんで一定で踏めないのかなって」

「ちなみに僕は、ホステスの送りのバイトをしてたときに、ナンバーワンドライバーだったので、そういうヘタな運転は全然していない。なので、プロフェッショナルであるタクシー運転手が乗り心地の悪い運転をしたときに、すごく思うことがあるのですが、言ったことがない。言ったことがないんですけど、小説っていうのはフィクションなので、その中では言っていいんじゃないかと。そこから大きな展開、うねりを作っていけた」

「でも実は僕自身、過去に1回だけ言ったことがあるんです。それがどういうときかというと、妻の出産で病院に向かってるときだったんです。なので、そこだけちょっとノンフィクションにしてます(笑)」

さすがにそれは要望を伝えてもいい状況だったと思う。そう伝えると、哲夫は「まあまあ、そうですね」とあいづちを打ちながら、普段タクシー運転手の運転に物言いできない理由を明かした。

「昨今、事故のこともよく社会問題になりますので。カスタマーハラスメントと言い過ぎて、何も言いにくいという世の中は違うと思うんですよ。やっぱり自分の命を守るために『その運転、大丈夫ですか?』と言えたほうがいいかな。でも、僕自身、プロにそれは言ってはいけない気がするんですよ。言ってしまった結果どうなるかというのを想像したことがあって」

「仏さんに向かって『ハゲ!』と言ったら、バチが当たるみたいなことじゃないですか。だから、タクシー運転手に『その運転やめろ!』と言ったら、仏さんに『ハゲ!』と言ったくらいのバチが当たるかも……っていう“かも”のところを(小説で)すごく膨らませました」

映画『エターナル・サンシャイン』の監督に共感?

『頭を木魚に』の表紙には栗と木魚の絵が描かれている。これは哲夫のリクエストで決まったそうだ。担当編集いわく「本を読み終わったら、『もうこの絵しかない!』とゾワっとした感じがする」とのこと。タクシー運転手、バチ、さらに哲夫の好きなものである歴史、グルメ、農業、市役所も盛り込まれているというが、どのように物語が進み、栗と木魚につながるのか。そして、『頭を木魚に』というタイトルが意味することとは。

このタイトルについて、哲夫は映画『エターナル・サンシャイン』(04)を例に挙げ、「『エターナル・サンシャイン』ってどういう意味なんですかと聞かれて、監督さんもたぶん『いやぁー! 言えないんですよねー!」となられてたと思うんですよね(笑)」と話していた。