村上春樹「僕も、狭いポンコツの中古車の中に一晩閉じ込められたような気持ちになることがあります」
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。

4月26日(日)の放送は「村上RADIO~掘り出し物ヴォーカル・ナイト~」をオンエア。村上さんが世界中の中古レコードショップのバーゲン・コーナーで100円~200円相当という驚きの価格で購入してきたディスクから見つけ出した、掘り出し物の名曲をジャンルレスでお届けしました。

この記事では、後半1曲とクロージング曲、今月の言葉について語ったパートを紹介します。

「村上RADIO」

Sheila E.「The Shoop Shoop Song (It's In His Kiss)」

シーラEがシェールのトリビュート・アルバムの中で、「シュープ・シュープ・ソング」を歌っています。この歌は1964年にベティ・エヴェレットの歌でヒットしましたが、1990年にシェールのカヴァーで再ヒットしました。シェールとウィノナ・ライダーとクリスティーナ・リッチが3人で歌って踊るビデオは最高に愉快です。それをシーラEがまたカヴァーします。

シーラEはいいらしい……というのは前にも言ったような気がします(註:回文風な文章として)。二度も言うようなものじゃないですよね。でもまあ、いいか。シーラEはいいらしいです。

<クロージング曲>

Benny Carter Quintet「Moonglow」

今日のクロージング音楽はアルトサックスの名手にしてレジェンド、ベニー・カーターのクインテットが演奏する「ムーングロウ」です。1946年の録音。これも100円均一の箱から拾い上げてきたものです。原版はキーノート。しっかり実のある定評ある演奏なんですけどね。

僕の今回のバーゲン漁りの収穫、いかがでしたか? これだけじっくり楽しめる音楽が100円、200円で買えちゃうなんて、100円ショップじゃないですが、物価高の昨今、ちょっと信じられませんよね。なにしろ今夜の番組の音楽の制作費は全部あわせて1,500円くらいですからね。TOKYO FMの社長も喜んじゃいますよね。

さて、今月の言葉はチャーリー・チャップリンの名作『ライムライト』の中に出てくる台詞です。年老いて落ちぶれた芸人が、絶望してガス自殺を図った若いバレリーナを救助し、励まします。彼は言います。

「死ぬのと同じくらい、避けては通れないことがある。それは生きることだ」

There's an inevitable thing as DEATH. That is LIFE.

含蓄(がんちく)に富んだ台詞ですね。僕も時として、狭いポンコツの中古車の中に一晩閉じ込められたような気持ちになることがあります。それでもまあ、なんとか生き続け、こつこつと地道に小説を書き続けてきました。町で見かけても石を投げたりしないでくださいね。

「死ぬのと同じくらい、避けては通れないことがある。それは生きることだ」

それではまた来月。

<番組概要>

番組名:村上RADIO~掘り出し物ヴォーカル・ナイト~

放送日時:4月26日(日)19:00~19:55

パーソナリティ:村上春樹

番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/