去る3月10日、東京・港区の麻布台ヒルズの会員制施設「ヒルズハウス」において、“睡眠”の最新トレンドを紹介するイベント「ヒルズハウス Sleep Biz 2026」が開催されました。
それに先立ち、会場では報道機関向けに睡眠の最新情報や企業動向を紹介する説明会も実施され、NTT DXパートナーによるスリープテック事業に関する報道発表や、「睡眠障害」の診療科名に関する最新情報の紹介などが行われました。ここでは、説明会とイベントの様子をお伝えします。
300社以上が加盟する国内最大級の睡眠課題解決企業間コミュニティ「ZAKONE」
説明会では、まずNTT DXパートナーが2022年9月に立ち上げた睡眠課題解決企業間コミュニティ「ZAKONE」の代表/共同創設者の佐々木翠さんが登壇し、発足後約4年間の成果と新たな取り組みを紹介しました。
ZAKONEは、日本の睡眠課題を企業共創により解決することを目的としたコミュニティ。睡眠に関わる企業同士を集めて月に1回のミートアップなどで繋げる「コミュニティ」、睡眠とさまざまな業界を掛け合わせて新たな価値を創造する「コラボレーション」、イベント開催や情報発信により睡眠に関する啓発を行う「インフォメーション」の3つを軸に活動を続けています。
これまで実施した月1回のミートアップは32回を数え、共創プロジェクトは25、ビジネスマッチングは150件以上に上るそうで、参画企業も発足当初の14社から300社超えと急成長。大企業だけでなく、中小企業や自治体なども巻き込みながら多彩なコラボレーションを生んできたといいます。
その一例として佐々木さんは、プラス、京セラ、BREATHERの3社による取り組みを紹介。プラスの仮眠用ソファと京セラのAI技術、BREATHERの深呼吸サポートデバイスを連携して新たな休息・仮眠環境を提供するというもので、しっかりとした“眠り”によって業務のパフォーマンス向上を図るのが狙い。
また、ビックカメラではZAKONEが店舗の一角をジャックし、足湯で温まりながらさまざまなメーカーの商品を試せる体験イベントを開催。ほかにも、17社35名が参画した1泊2日の事業共創キャンプ「ZAKONE CAMP」などを行い、それらをきっかけにさまざまなプロジェクトが生まれてきたとのこと。
現在進行中のプロジェクトとして佐々木さんは、女性の睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関する啓発ブックの制作や、三重県桑名市の子どもの睡眠課題解決プロジェクト、さとえ学園小学校との眠育プログラムなどを挙げました。また、こうした各社の取り組みを通じながら、麻布台ヒルズワーカーにウェルネスイベントを毎月提供する「Wellness Day Program」も実施しているそうです。
実際に企業共創を進めるうえでは、「健康経営におけるKPI(評価指標)で睡眠が優先されない」「よい製品であってもメーカー1社だけではそのよさを訴求できない」「企業へのパスがない」などの課題があるといいます。そこでZAKONEでは、300社以上が加盟するコミュニティだからこそできるプロジェクトで面的にアプローチすることにしたとのこと。
その新しい取り組みとして佐々木さんは、テクノロジーを駆使して五感に訴えるような新しい仮眠室を作る「仮眠室 3.0 プロジェクト」や、ZAKONEがハブとなって企業の健康経営を推進するプログラム「Health Pro Academy」の提供開始などを発表しました。
続いて、NTT DXパートナーの尾形哲平さんにより、異業種コラボレーションの最新の取り組みとして、いつどこでも眠りが得られる睡眠ウェア「ZZZN SLEEP APPAREL SYSTEM」の発表が行われました。同製品は、コネル(Konel)とNTT DXパートナーが、ゴールドウインのウェルネスブランド「NEUTRALWORKS.」と共同で開発するもの。
スマートリングで得た生体データをもとに入眠から起床までを最適化するNTT DXパートナーのアルゴリズムと、Konelの季節や環境に連動する楽曲コンテンツや直感的な操作インターフェース、NEUTRALWORKS.のアパレル技術を融合させたウェアで、“持ち運べる睡眠”がコンセプト。
尾形さんによれば、これまで睡眠×音楽の異業種融合プロジェクト「ZZZN(ズズズン)」として、ささやき声の楽曲を聴くことが睡眠効率にどう影響するかの検証や、宿泊型寝落ち音楽ライブイベントの開催、レーベル「SLEEP SOUND LABEL ZZZN」の設立などを行なってきたそうですが、そこにアパレルを掛け合わせることで新たなカルチャー作りにチャレンジするのが目的とのこと。
プロジェクト自体は2025年の大阪・関西万博やミラノデザインウィークなどで公開され好評を博しましたが、最終的な製品は2026年12月に開催予定の「2027 FALL/WINTER ゴールドウイン総合展示会」にて発表される予定だそうです。
説明会では、このほかにも日本睡眠学会理事長および日本睡眠協会理事長を務める内村直尚久留米大学理事長による「睡眠障害」の診療科名に関する最新情報や、世界140カ国以上で睡眠時無呼吸症候群などの医療機器を開発・提供するグローバル企業ResMed(レスメド)による世界睡眠調査の最新結果などが報告され、来場者の関心を集めていました。
最新のスリープテックを体験できる「ヒルズハウスSleep Biz 2026」
説明会の最後には、森ビル 新領域事業部 ヒルズハウス運営室運営課長の丸山貴之さんが登壇し、「ヒルズハウスSleep Biz 2026」の概要が説明されました。
ヒルズハウスがある麻布台ヒルズは、緑に包まれた人と人をつなぐ広場のような街「Modern Urban Village」がコンセプト。施設のテーマとして「グリーン」と「ウェルネス」を掲げていますが、ヒルズハウスはそのウェルネスの拠点となる施設で、会員企業は約50社、会員は11,000名以上にのぼります。
施設内は会員制エリアの「Members Lounge」やグランビストロ「Dining 33」、ダイニング/スペース「Sky Room」、イベントスペース「大階段」の4施設で構成されており、ワーカーの健康をサポートするため、麻布台ヒルズに入居するパートナー企業と連携して普段からさまざまなプログラムが実施されているそうです。今回のイベント「ヒルズハウスSleep Biz 2026」は、3月13日の世界睡眠デーに合わせて開催されるもので、麻布台ヒルズをはじめとするオフィスで働くワーカー向けに質の高い睡眠を提供できるような展示や体験が数多く用意されているとのこと。
説明会終了後、筆者もイベント会場を回ってみましたが、「Experience」「Gift」「Study」「Power Nap」の4つのゾーンで構成されており、それぞれ数多くのワーカーで賑わっていました。
そのうち「Power Nap」ゾーンにはYogiboのソファが設置されており、景色を楽しみながらくつろいだり仮眠をとったりすることが可能でした。また、ゾーン内の展示ブースには日本コカ・コーラのリラクゼーションドリンク「CHILL OUT」や、NTT DXパートナーの「nemuso」などの紹介も行われていました。
その「nemuso」は、ユーザの睡眠の悩みにアドバイスを行うAIチャットボットサービス。一般社団法人ブレインヘルスラボのスリーププランナー資格の公式テキストをバックデータとしており、エビデンスに基づいた高品質な回答を得られるのが大きな特徴です。一般的なチャットアプリと同様に相談したいことを自然言語でテキストまたは音声入力していくだけで、的確なアドバイスをしてくれます。
「Experience」ゾーンは、寝心地を追求した最新ベッドや枕、ソファに加え、AIによる睡眠解析などを駆使した最先端のスリープテックを体験することが可能でした。説明会で紹介されたプラスと京セラ、BREATHERの3社による仮眠環境や、ビックカメラの睡眠関連商品の展示もここで行われていました。ほかにも、Ankerの睡眠特化型完全ワイヤレスイヤホン「Soundcore Sleep A30」、ネコの呼吸と温もりを再現するアメイズプラスのおやすみロボット「うたたねこ」、AIスマートリング「RingConn」など多彩な製品が展示され、一部は実際に試すことが可能でした。
-

プラスの仮眠用ソファ「Office Nap」と京セラの仮眠起床AIシステム「sNAPout」、BREATHERの深呼吸サポートデバイス「ston s(ストンエス)」などを連携した休息・仮眠環境
-

ブレインスリープのブース
-

ネコの呼吸と温もりを再現するアメイズプラスのおやすみロボット「うたたねこ」
「Gift」ゾーンは、アロマや睡眠の質を高めるGABAを配合したドリンク、スリーピングジェルマスクなどの製品が、「Study」ゾーンでは睡眠に関する学びが得られるブースが用意されていました。
ZAKONEが目指すものとは――代表の佐々木さんに聞く
今回のイベントの開催にあたって大きな役割を果たしたのが、前述のとおり睡眠課題解決企業間コミュニティ「ZAKONE」でした。その代表/共同創設者である佐々木翠さんに、ZAKONE立ち上げの経緯や狙い、今後の展開などについてお話を伺いました。
──まずは、ZAKONE立ち上げの経緯について教えてください。
佐々木:NTT東日本グループには社内で新規事業を立ち上げる人を支援するイントレプレナー制度があり、その一環として自分たちの悩みでもある“日中のパフォーマンス”を改善できないかとさまざまなアイデアを考えるところからスタートしました。もともとは「仮眠ボックスを作ろう」というのが始まりだったのですが、どんどん深掘りしていくうちに日本の睡眠課題の大きさや睡眠ビジネスの広がりなどに思い至ったのです。そこで、睡眠に関する経営資源を持っていない私たちにとっては、企業・自治体とのコラボレーションなどによって、未成熟な睡眠の市場を一緒に盛り上げていくような事業のあり方の方がよいのではと考え、いろいろブラッシュアップしながら今に至っています。
──ZAKONE自体は約3年半前の2022年9月に発足していますが、それ以前から試行錯誤があったということですね。
佐々木:そうですね。取り組みを始めてからは5年ほどになります。ただ、最初の1年半は100%稼働していたわけではなく、別に本業をこなしながら、睡眠を軸としたビジネスの探究や模索をしていました。実際に睡眠分野の企業と共創していくうちに課題も見えてきて、それを解決するため他の企業とのコラボレーションなどさまざまな取り組みを行いました。それらを経て、どうすればスケールするかなということを考えたときにZAKONEを作ろうと思いついたのです。
──当初は14社からスタートしたそうですね。
佐々木:毎月ミートアップを重ねていくうちに「自分たちも睡眠をやってるんだよ」という企業さんが自然に増えていって、今300社を超えたところです。最初の立ち上げや活動を続ける苦しさのようなものはあったのですが、私たちもびっくりするくらいの伸びを感じています。それだけいろんなプレイヤーが睡眠関連市場にかかわっているんだなと気付かされました。
──事業拡大においてブレイクスルーのようなものはありましたか?
佐々木:これまで企業同士のコラボレーションをした際に、それで終わりではなく、広報活動やいろいろなところを巻き込んだイベントなどを開催して、世の中に発信するようにしてきました。それを見た方が問合せをくださってどんどん加盟企業が増えていきました。50社、100社と段階を経るごとにご紹介で来ていただく企業も多くなっていった感じですね。
──多くの企業がかかわってくると、運営も大変そうですね。
佐々木:今回のようないろんな企業を巻き込んだイベントは、とくに大変ですね。毎回手探りで進めています。ただ、実際にワーカーさんに体験してもらうイベントを実施することで、それが実績になり、ZAKONEが認知されて大きく広がっていくきっかけにもなります。
──これまで、どんなイベントを開催されてきたのでしょうか?
佐々木:音楽が本当に眠りに影響するのかを検証・体験するため、旅館を貸し切りにしてライブイベントを実施したり、リラクゼーションドリンク「CHILL OUT」のプロモーションイベントを開催したり。CHILL OUTはエナジードリンクと間違われないように認知させたいということで、老舗銭湯「小杉湯」とコラボして、お風呂に入ってCHILL OUTを飲んで寝落ちするという体験を設計しました。
──すごく楽しそうですね! 参加してみたいです。
佐々木:早く寝るのはもったいないと思ってしまいがちで、“負の課題”ではあるのですが、実は楽しいものなんだということを新しい体験を通して感じていただく。そんな“眠りのエンタメ化”を企業とのコラボで実現しています。ちなみに、イベントでは毎回ネットワーキングの場も設けているので、そこから企業同士のコラボが自然発生的に生まれることもあるんですよ。
──今後の展開について教えてください。
佐々木:これまでZAKONEの活動を続けてきて、1社だけではなくて複数の企業が補完し合うことによる体験価値が求められているのを実感しています。加盟企業が300社に到達しましたが、そのスケールを活かしてZAKONEがハブとなってより多くの活動をしていけたら……。たとえば、生産性向上や健康のため“仮眠”を取り入れたいという企業に対して、“仮眠”の新しい価値観をアップデートするようなホームページや商社のような形で仲介・支援していく。また、睡眠だけでなくヘルスケアについても学べる参加無償の「Health Pro Academy」を提供する。そうした活動を通じて健康経営を、大事だとはわかっていてもなかなか導入が進まない企業や、何から始めればいいのかわからない企業に対して広げていくような取り組みをしたいと考えています。
──最後に、読者へのメッセージをお願いします。
佐々木:睡眠の質を高めるには、まずご自身の睡眠を知ることが大切。よく「快適な睡眠のための九箇条」のようなものが言われますが、そういった指針を参考にしながらも、自分の睡眠データと向き合って自分に合った快眠の方法を見つけるのがいいのではないかと思います。NTT DXパートナーが提供開始した「Health Pro Academy」は企業向けのコンテンツですが、その従業員やグループ会社の従業員とその家族まで視聴できますので、睡眠も含めたトータルな健康知識を高めるために活用してみていただければと思います。
また、ZAKONEに関して言えば、睡眠にかかわる企業や団体、自治体は無償で加盟可能です。睡眠に関するビジネスや取り組みをしたい場合は大歓迎ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください!











