レトロリロンがツアーファイナルで飾った有終の美、観客たちと交わした新たな約束

レトロリロンが、自身過去最大規模となる「RETRORIRON 1 st Full Album『コレクションアローン』RELEASE ONE-MAN TOUR 2026」のファイナルを、4月18日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)にて迎えた。全国10カ所の公演はソールドアウト続出、この日のスタンディングフロアも超満員。本公演の様子を、ライターの山口智男がレポートする。

「ソールドアウトらしいです。ありがとう」

オンステージしたメンバー達を迎えた歓声と拍手の大きさに応えるように『コレクションアローン』のリードトラック「リコンティニュー」から「ワンタイムエピローグ」「ラストハンチ」とアップテンポの曲をノンストップで繋げ、観客の気持ちを鷲掴みにする一方で、「声出せますか? まだまだ! 声を聞かせて! もっと! もっと!」と観客に求めながら、観客をバンドのペースに巻き込み、序盤から大きな盛り上がりを作った直後、涼音(Vo, Acoustic Gt)が開口一番、ちょっとはにかみながら言ったのが冒頭の言葉だった。

「今日は配信のカメラが入って、全国各地に我々の姿が届いています」(涼音)

涼音(Photo by スエヨシリョウタ)

1月28日にリリースした1stフルアルバム『コレクションアローン』をひっさげ、全国10カ所を回ってきた「『コレクションアローン』RELEASE ONE-MAN TOUR 2026」は4月18日(土)、Zepp Haneda(TOKYO)で見事、有終の美を飾った。今思うと、メジャーデビューと前後するようにライブバンドとして急成長を遂げてきたレトロリロンが改めて、止まらぬその勢いを見せつけただけではなく、ツアーを続ける中で涼音をはじめとするメンバー達の中に芽生えた気持ちが最後、新たな答えに辿りついたところにこそ、有終の美を飾った意味があったのだろう。

それについては後述するとして、2時間に及んだライブの見どころを、順を追って振り返っていこう。涼音がステージから落ちるというハプニングがあった初日の香川公演から新潟公演まで、各公演の思い出をメンバー4人で語ってから、「全公演欠けることなく無事に回ることができました」と報告した涼音は続けて「各地で特別を作ってきました。東京は東京で、特別な時間にしたいと思います!」と改めてこの日のライブにかける意気込みを言葉にする。そこからステージの4人がノンストップで繋げていったのは、新旧のレパートリーの数々だ。

R&Bおよびファンクをバックボーンに80年代っぽいとも90年代っぽいとも言えるそれこそレトロな魅力も持つアーバンなポップスを身上としているレトロリロンだが、聴きどころはもちろん、涼音の憂いを含んだ伸びやかな歌声だけにとどまらない。飯沼一暁(Ba)のグルービーなベースプレイをはじめ、スウィングする演奏にメランコリーが滲む「それでも生きていたい」からの中盤の4曲ではポップスの一言には収まりきらないアレンジのセンスも楽しませる。

飯沼一暁(Photo by スエヨシリョウタ)

飯沼がシンセベースとエレキベースを使い分けた「Document」はダブステップ風のアトモスフェリックなアンサンブルの中で涼音の力強い歌声を際出せつつ、miri(Key)のジャジーなピアノソロから曲がダンサブルに展開。永山タイキ(Dr)がキックするバスドラの4つ打ちのリズムに合わせ、ミラーボールが放つ眩い光の中、観客が跳ね始めると、メンバー全員で声を重ねたアンセミックなコーラスとともにエンディングを迎える。そこからスラップ奏法も交えたベースリフからなだれ込んだファンカラティーナな「FAQ」では、観客のハンドクラップとともにアコースティックギターをかき鳴らす涼音を含め、メンバー4人のインタープレイが白熱する。

miri(Photo by スエヨシリョウタ)

永山タイキ(Photo by スエヨシリョウタ)

レトロリロンのメンバー達はテクニシャン揃いだから、インタープレイだけに限らず、演奏中、しばしば閃かせる意表を突くようなプレイも聴きどころになる。中でもジャズの手数とラウドロック由来のパワーを合わせ持つ永山のドラムプレイが、レトロリロンのライブをダイナミックに見せる上で果たしている役割は見逃せない。同期でサックスを鳴らした歌謡ファンクの「DND」では、その永山が交錯するスポットライトの中、ドラムソロを披露して、観客を沸かせながら、エネルギッシュにエアサックスを繰り広げる涼音とともに中盤のハイライトと言える盛り上がりを作り上げた。

ボーカルばかりが喋ってもと考え、昨年のツアーから導入した飯沼、miri、永山による”デンジャラスゾーン”と名付けられた「あいうえお作文」のコーナーも、3人の危なっかしいトークをストイックなパフォーマンスとのギャップとして楽しませていると思えば、もはやライブの見どころだと言っていいだろう。

後半戦も曲調はポップスと言える楽曲に聴きどころとしてベースソロとピアノソロを挿入した「カテゴライズ」から、シャッフルのリズムで変化をつけながら、ポップな曲調にせつなさを滲ませつつ、永山がドラムのフィルインでドラマチックに盛り上げた「ふたり」、miriがピアノのコードを重厚に鳴らしたアーバンなバラード「僕だけの矛盾」とやはりポップスの一言に収まりきらない曲を次々に披露。セットリストのプロットとしては、聴かせる曲というテーマがあったようにも思うが、そこから一転、同期でホーンを鳴らした「アンバランスブレンド」では、「みんなで声を出しませんか? せーの!」と涼音が導き、観客のシンガロングとともに後半のハイライトと言える盛り上がりを作り出してみせたのだった。

「一瞬だったな」

これまでの流れを振り返った涼音の一言に3人が異口同音に頷いた。ライブはすでに佳境を迎えている。

(Photo by スエヨシリョウタ)

ツアーが終わろうとしているいま、涼音は今回のツアーを経て、自ら見出した答えを観客に伝えずにいられなかったようだ。なぜなら、それはレトロロリンがこの日、観客と交わす新たな約束だったからだ。

「ずっと一人だと思って、生きてきたけど、こうやって4人で音を鳴らし始めてから、あなたがライブに足を運んでくれて、自分の人生が自分だけのものじゃなくなっていくような感じがしています。僕は自分のために曲を書いているし、これから先もあなたに曲を書くことはないんだけど、自分の曲なんですと手紙をくれる人がいたり、日々の生活の中で僕らの音楽を支えにしてくれている人もいる。そんなはずはないと僕は思いながら、段々、無視ができないほど、いろいろな人達が、僕が僕のために書いた曲を大事にしてくれていることを最近実感しています。だからこそ、ここで満足したくない。もっと欲張りたい。もっとわがままに、もっと美しく、もっと醜く、これからの人生をあなたと進んでいきたい。このツアーを回りながらそう考えるようになりました。1人で頑張るんだとずっと思ってたから、自分でも意外でした。それでも変わらずに言えるのは、あなたにとって必要になった時また会いに来てください。僕はそれだけでずっと歌えるよ。これからも一緒に歩いていけたらいいね」

(Photo by スエヨシリョウタ)

その直後に披露したのがmiriのピアノだけをバックに涼音が歌う「咒」。とつとつと歌い始めた涼音の歌声がいつしか朗々と響きわたる。その歌声に圧倒され、まるで息をすることも忘れたように観客全員が身じろぎもせずにじっと聴きいっている、ある意味壮観な景色は終盤のハイライトだったと言ってもいい。涼音は音楽に取り組む自らの心象風景を歌っているのだろうか。そう思いながら耳を傾けると、<あなたが僕にかけたその呪いがいつかおまじないにできるように>という祈りにも似た締め括りの歌詞が胸に響く。

曲が終わり、ハジかれたように観客が大きな拍手を送る中、ラストスパートをかけるように「バースデイ」に繋げたバンドは一気に演奏を白熱させると、そのまま昨年5月にリリースしたメジャー1stシングル「UNITY」になだれこむ。「バースデイ」「UNITY」ともにゴスペルの影響が窺えるポップナンバーだが、ライブの最後を飾るならやはりダンサブルでアンセミックな「UNITY」が相応しい。

涼音が声を上げると、永山がダイナミックなタム回しを加え、最後はキメのスパイラルシンバルを一発鳴らして、本編はエンディングを迎えた。しかし、会場の熱気は冷めるどころか、アンコールを求める観客の声援によって、逆にどんどん温度が上がっていく。それにちょっとびっくりしてしまった筆者は、いまレトロリロンがどんなふうに支持されているのかちゃんとわかっていなかったということなのだろう。

(Photo by スエヨシリョウタ)

再び観客に熱烈な歓迎されながら、オンステージしたアンコール。4月8日に配信したストレートでタフなロックナンバー「エゴ」をライブ初披露すると、秋にZeppツアーを開催することを発表して、観客を沸かせる。

「毎年ワンマンツアーをやるたび、会場がちょっとずつ大きくなって、行けるところも増えてきて、みんなと一緒に進んでいると実感しています。でも、もっともっとレトロリロンは大きくなるので、ぜひ一緒に行きましょう」(miri)

「みんなの前で演奏することで、自分の感情がしっかり整理できて、いいツアーになりました!」(永山)

「レトロリロンを好きでいてくれる人しかいない空間は当たり前じゃないと思いました。みんな、レトロリロンが好きかい? 俺もめっちゃ好きだよ!」(飯沼)

「楽しかった。もっと大きくなるんで、一緒に行こうぜ。レトロリロンに出会って、好きになってくれてありがとうございます」(涼音)

メンバーそれぞれに、いまこの瞬間、胸に去来した思いを語ると、バンドはコール&レスポンスから「ヘッドライナー」になだれ込む。観客のハンドクラップが止まらない。そして、「ずっと友達でいてくれますか?」という涼音の問いかけに、観客が大歓声で応えた最後の「TOMODACHI」。シンガロングが響きわたる中、フロアに投げ込まれた6個の特大のバルーンが割れ、その中から色とりどりの風船が無数に零れだし、観客の笑顔とともにツアーの成功と、そして、メンバーはもちろん、そこにいる誰もが確信したに違いない、もっと大きな存在になるレトロリロンの未来を祝福したのだった。

<ライブ情報>

RETRORIRON Zepp Tour 2026

10月15日(木)【神奈川】KT Zepp Yokohama

10月17日(土)【名古屋】Zepp Nagoya

10月23日(金)【札幌】Zepp Sapporo

10月31日(土)【福岡】Zepp Fukuoka

11月3日(火・祝)【大阪】Zepp Namba

11月7日(土)【仙台】SENDAI GIGS

12月12日(土)【東京】Zepp Haneda(TOKYO)【SPECIAL EDITION】

Official HP:https://retroriron.com/