低価格・無人運営の“コンビニジム"として急成長を遂げたchocoZAP。国内での1,800店舗以上の展開と黒字化を経て、いよいよ海外展開を本格化させている。すでに香港での成功モデルを確立し、次の一手としてシンガポール進出を発表。日本発のビジネスモデルは、海外でも通用するのか。立ち上げの背景から今後の戦略まで、海外事業部責任者の仲村氏 に詳しく話を伺った。
「徹底したコスト対策」と「ターゲット設計」で急速に成長
――まず、chocoZAPが短期間で成長し、黒字化できた要因について教えてください。
一番の要因は、初期コストと運営コストを大幅に抑えられている点だと思います。
その象徴が、内製化ですね。通常、新規店舗の出店の際は内装施工を外部業者に委託するケースが多いと思いますが、当社では外部業者に全委託するのではなく、社内のリソースも活用し内製化を進めています。
また運営面でも、「サポート会員制度」(下図参照)を導入し、清掃やメンテナンスを会員の方にご協力いただくことで、外部コストを抑えつつ、質の高い店舗状態を維持できています。
――どちらも、かなりユニークな取り組みですね。
はい。この取り組みにより、ローコストオペレーションを実現し、低価格でも利益が出る構造を実現できました。
加えて、この仕組みは深刻な『人手不足』という社会課題への挑戦でもあります。テクノロジーによる効率化と、会員様が運営の一部を担う「共創モデル」を組み合わせることで、スタッフの確保が難しい地域や、これまで出店が困難だった過疎地など、全国あらゆる場所へchocoZAPの価値を届けることが可能になりました 。また、DXを活用した「無人運営エコシステムの標準化」(下図参照)も大きな特徴です。サポート会員とのやり取りも専用プラットフォームで管理し、効率化を図っています。さらに、IoTセンサーやAIカメラを活用して、機器の故障などを検知する仕組みも導入。人力に頼らず、無人で運営できる体制を整えています。
――そのほかに、他のジムと比べた強みはどこにあると考えていますか?
大きな違いは、ターゲット設定にあります。一般的なジムがトレーニング志向の強い層を中心としているのに対し、chocoZAPは「これまでジムに通ったことがない人」や「軽く体を動かしたい運動初心者」が通いやすい設計にしています。
着替え・靴の履き替えが不要で気軽に利用できる点に加え、美容マシンやマッサージチェア、ランドリー、カラオケなど、運動以外のサービスが充実しているところも特徴ですね。こうした他のジムにはないサービスをきっかけに来店される方も多く、結果として運動のハードルを下げ、生活の延長線上で気軽に利用していただける点が、chocoZAPの大きな強みだと考えています。
グローバル展開の背景にある「共通する社会課題」とは
――海外への進出を決めた背景について教えてください。
日本で成果を出せた背景には、フィットネスを習慣的に行う人が人口の約3%にとどまっているという社会課題がありました。その中でchocoZAPは、運動初心者をターゲットに会員数111万人を突破し、運動習慣の定着を後押しできたという実績があります。
この経験を踏まえ、各国の調査を実施したところ、多くの国で同じような課題があることが分かりました。その結果、海外でも受け入れられる可能性があると判断し、グローバル展開の検証を進めました。
――グローバル展開するにあたって、最初に香港を選んだ理由は何でしょうか?
実は香港だけでなく、台湾やアメリカなど複数の地域で同時にテスト展開を行いました。その中で、最も手応えがあったのが香港です。
香港は日本と同様に急速な高齢化が進んでおり、住民の健康意識も非常に高まっています。一方で、既存ジムの価格帯が高く、人口に対してのフィットネス参加率が低いという日本に近い市場環境がありました。その結果、香港では多くの方にchocoZAPをご利用いただいており、2026年3月末時点では10店舗 まで展開が進みました。今後も引き続き、香港国内での展開を強化していく予定です。
――次に、東南アジアのシンガポールに出店を決めた理由を教えてください。
主な理由としては、シンガポールと香港の市場環境が類似しているからです。物価水準が高く、人口密度も高い。また、多国籍な人材が集まる国でもあるため、今後の海外展開の基幹拠点になると考えました。シンガポールを起点に、東南アジア全体への横展開も視野に入れています。
――海外店舗では、EMSや骨盤サポートチェア、ホワイトタンニングなどの日本国内にはないサービスも導入されています。
はい。基本的には、各国のニーズに合わせてローカライズしていく方針です。
例えば「ホワイトタンニング」は、肌ダメージの軽減や改善が期待できる美容マシンです。日差しの強い地域では、特にニーズが高いと考え導入しました。
また香港では、自宅が狭いケースも多いことから、ワークスペースとしての利用ニーズも想定しています。国や地域によって課題やニーズは異なると思うので、その都度検討を重ねながらブラッシュアップしていきたいですね。
――今後の海外展開について、アジア圏以外への進出も検討されていますか?
今後はまずシンガポールでの運営を検証し、その後はマレーシアやベトナムなど、アジア圏を中心に周辺国へ展開したいと考えています。アジア圏以外への進出も視野に入れていますが、まずは日本と文化的に近い地域から順に拡大していく予定です。
その中で、日本と同様に、「気軽に運動するならchocoZAP」という価値観が、海外にも浸透していくことを目標としています。
運動をもっと自由に。健康をもっと身近に。「健康のインフラ化」を目指して
――改めて、chocoZAPは、どのようなニーズに応えるサービスだと捉えていますか?
従来のフィットネスジムは、本格的なトレーニングや運動に慣れている方が集まるイメージもあり、運動初心者の方にとっては少しハードルが高い部分もあったと思います。その点、chocoZAPはラフな気持ちで、スキマ時間に気軽に立ち寄れる、初心者でも恥ずかしさを感じにくいジムを目指しました。
本来、運動は誰にとっても必要なものだと考えています。だからこそ、そうした垣根をなくし、運動できる環境をより身近に感じてもらいたい。その根底には、「健康を社会インフラ化したい」というchocoZAPの理念があります。
――「健康の社会インフラ化」ですか?
はい。水や電気といったインフラのように、運動を当たり前の存在にしたいという考えです。誰もが気軽に運動できる環境をつくることで、健康寿命の延伸やQOLの向上につながり、結果として医療費の抑制など、社会課題の解決にも貢献できるのではないかと考えています。
――最後に、今後chocoZAPが社会に提供していきたい価値について教えてください。
chocoZAPはフィットネスジムという枠にとどまらず、今後もさまざまなサービスを提供していきます。例えば、直近で発表された女性専用店舗やちょこガチゾーン はすでにテスト展開を進めています 。
運動はもちろん、これまで少しハードルが高くて手を出しづらかったものにも、気軽に触れられる場を提供していきたいと考えています。また、日常の中でふらっと立ち寄れるサードプレイスのような場にもなっていけたらうれしいです。
運動をきっかけに、自己実現や新しい体験につながる場としても、引き続き進化していきたいですね。



