「アメリカのBBQ」といえば、皆さんは何を思い浮かべますか? おそらく、網の上で豪快に焼かれる巨大な肉の塊や、大量に並べられたステーキ肉などを想像するのではないでしょうか。

私もそんな「アメリカならではの大迫力BBQ」を期待して、生粋のアメリカ人である夫に「アメリカ人がリアルにやってるBBQを体験したい!」とお願いしてみました。しかしそこで目にしたのは、思い描いていた華やかなBBQとは全く異なる、意外な現実だったのです。

  • SNSで話題のアメリカのBBQは、デカい肉やステーキで豪快なイメージ

    SNSで話題のアメリカのBBQは、デカい肉やステーキで豪快なイメージ

買い出しで気づいた「デカい肉」の不在

「どんな肉が出てくるんだろう」とワクワクしながら、買い出しから戻った夫の手元を覗き込むと……。そこに並んでいたのは、予想外の食材たちでした。

  • あれ、デカい肉は⋯⋯? 大量のステーキはどこ⋯⋯?

    あれ、デカい肉は⋯⋯? 大量のステーキはどこ⋯⋯?

ハンバーガー用のパティとバンズに、「BRATS」と呼ばれる太めのソーセージとパン、あとは簡単な添え物だけ。野菜を刻む手間すらない、焼くだけで完結する「出来合いのセット」です。徹底した合理性は、ある意味で非常にアメリカらしいのですが、SNSで見ていた「迫力」「映え」とはほど遠い光景に、私は少し首を傾げました。

そんなメインディッシュの控えめなラインアップに対し、対照的だったのが「お酒の量」です。大人5人の集まりだというのに、用意されたのは24本入りのビールケース2箱(計48本)!!

  • お肉よりも大きいビールBOX

    お肉よりも大きいビールBOX

この時点で、「肉を楽しむ」というよりは、別の目的があるような予感が漂い始めていました。

「アメリカの兄貴」たちが教えてくれたBBQの正体

集まった夫の友人たちに、私は率直な疑問をぶつけてみました。「アメリカのBBQといえば、もっとこう、デカい肉を豪快に焼くイメージがあったのだけど……」と。

「これが100%リアルなアメリカのBBQだよ!」

私の言葉に、友人たちは口を揃えてそう言いました。ステーキは高級品だし、塊肉を本格的に焼くには数時間の忍耐と専用の機材が欠かせない。「だから、普段はこれで十分なんだ」という彼らの言葉に、私はハッとしました。

  • 実際にグリルで焼いている様子。デカい肉は一つもありません。

    実際にグリルで焼いている様子。デカい肉は一つもありません。

SNSで見ていたアメリカの兄貴たちの豪快なBBQは、私たち日本人を喜ばせるための「おもてなし」だったのではないだろうか、と。そう気づいた瞬間、SNSの情報こそが"本場の正解"だと思い込んでいた自分が、少しだけ恥ずかしくなりました。それと同時に、画面越しに見ていたアメリカの兄貴たちの優しさが愛おしくて、思わず胸が熱くなったのです。

「デカい肉」は、すぐ隣のグリルで焼かれていた

そんな気持ちに浸っていた、その時。ふと視線を移すと、隣でBBQを楽しんでいた別のグループの網には、まさに私が求めていた「デカい肉」が鎮座していました。

  • 隣のBBQの様子(サムネイルに使用したBBQ画像です)

    隣のBBQの様子(サムネイルに使用したBBQ画像です)

たまらず「それは何のBBQ?」と声をかけてみると、彼らはコロンビアにルーツを持つグループで、「コロンビアスタイルなんだ」と教えてくれました。ティラピアという魚を焼いたり、ワカモレを添えたり。同じ「アメリカでのBBQ」でも、ルーツによってこれほど内容が変わるのかと、多国籍な文化の面白さを実感した瞬間でした。

  • ステーキ肉をおすそ分けしてくれました。(ワカモレを添えて)

    ステーキ肉をおすそ分けしてくれました。(ワカモレを添えて)

飾らない「アメリカの日常」は、驚くほどシンプル

私たちのBBQは、焼けたパティをバンズに挟み、お好みでケチャップやマヨネーズをかけるだけ。味は想像通り、シンプルなハンバーガーです。

  • 出来上がったバーガーとフランクフルト

    出来上がったバーガーとフランクフルト

一見すると、なんてことのない食事に感じるかもしれません。しかし、グリルを囲んでビールを片手にバーガーを頬張っていると、不思議と心が解けていくのを感じました。

豪華な肉も、SNS映えする彩りもいらない。座って食べる「食事」というより、火を囲んで過ごす「空間」そのものを楽しむ。準備に追われることなく、ただその場にいる全員がリラックスしている。それこそが、彼らが日常的に愛しているBBQの姿なのだと、腑に落ちるような発見がそこにはありました。

  • グリルを囲み、BBQを楽しむ様子

    グリルを囲み、BBQを楽しむ様子

終わりに。BBQは「本番」への序章だった

お腹がほどよく満たされたところで、アメリカのパーティーには欠かせないゲーム「ビアポン」がスタート。

  • ビアポンセット

    ビアポンセット

ちなみに「ビアポン」とは、テーブルの両端に並べたコップにピンポン玉を投げ入れ、入ったら相手が中のビールを飲み干すという、アメリカではお馴染みの遊びです。

  • 豪快にビールが注がれていく

    豪快にビールが注がれていく

ビールが次々と空いていく様子を見て、「そりゃあ、あれだけの量が必要になるわけだ」と妙に納得してしまいました。胃袋を落ち着かせ、アルコールを身体に循環(?)させ、最高のテンションで遊びに興じる。この一連の流れこそが、彼らにとっての「BBQの完成形」だったのかもしれません。

もちろん、一口にアメリカと言ってもそのスタイルは千差万別。地域や家庭によっては、日常からこだわり抜いたスモーク肉を振る舞う「ガチ勢」の兄貴たちも存在するはずです。ただ、少なくとも私の周りにいるアメリカ人のリアルは、この驚くほどシンプルで、お酒と会話を全力で楽しむスタイルでした。

派手な塊肉はなかったけれど、なんでもない「アメリカの日常」を覗けた、ある意味で特別な一日。次はどんな日常に出会えるのか、今から少し楽しみです。