「幕末もの」と聞いて思い浮かべる大河とは、まったく違う景色になりそうだ。2028年放送の大河ドラマ『ジョン万』制作発表では、制作統括・家冨未央氏が囲み取材に応じ、2027年大河『逆賊の幕臣』から2年連続で幕末が舞台となることへの疑問に率直に回答。政治闘争ではなく、“海から見た陸”という新たな視点で描く意欲作であることを強調した。これまでの大河とは一線を画す物語に期待が高まっている。

  • 山崎賢人

    山崎賢人

2028年に放送されるNHKの大河ドラマ『ジョン万』の制作・主演発表会見が行われ、主演の山崎賢人(※崎はたつさき)、脚本の藤本有紀氏、制作統括の家冨未央氏が出席。会見では、制作統括・家冨氏への囲み取材も実施され、そこで行われたのは、記者たちによる「一歩踏み込んだ」本作への深掘りだった。

かつての大河ドラマのイメージは、端的に言えば「戦国」や「幕末」の戦乱を描くことが王道であった。しかし近年、その傾向は大きく変わりつつある。平安時代を描く作品や、近代経済の父にスポットを当てる作品など、バリエーション豊かな題材が並び、ある意味で「次に何が来るか予測不能」な状態である。

そんな中、2028年の主人公に据えられたのは「ジョン万次郎」。近年の大河ファンから見れば、非常に意欲的で、時代は馴染みのある幕末ではあるものの、人によっては「異色」とも捉えられる題材にあたる。アクションシーンにも定評のある山崎を主演に起用しながらも、メインは大海原でのサバイバル。刀を振るう戦物ではなさそうだ。

そんな本作に対し、SNSやファンの間では早くも期待とともに、いくつかの「疑問」も浮かび上がっている。囲み取材では、記者が視聴者の声を代弁する形で、家冨氏に率直な疑問を投げかける場面が多かった。

まずは、2027年大河『逆賊の幕臣』(主演・松坂桃李)に続き、2年連続で幕末が舞台となることへの「飽き」や「重複」を懸念する声に対し、家冨氏は明確な差別化を打ち出した。

「時代で切り取って企画を始めたというより、万次郎さんのライフヒストリーそのものに魅力を感じてスタートしました。一番お伝えしたいのは、人間ドラマであり、サバイバルとロマン。政治闘争が中心になりがちな、これまでの幕末ものとは全く別のおもしろさを提供できると確信しています。これまでは『陸の中から描く歴史』が主でしたが、万次郎さんは扉の外へ流されてしまった庶民。『海から見た陸』という新しい視点で、これまでにない物語をお届けできると考えています」

物語の大きな比重を占めるアメリカ編の撮影について、家冨氏は「全体的にさまざまな検討を重ねている最中で、現時点では未定」と正直な感想を明かしている。しかし、すでに主演の山崎と共に万次郎ゆかりの地であるアメリカ・フェアヘーブンへの視察は済んでいるそう。

家冨氏は、「実際に歩き、物を見た」経験を強調し、現地で得た空気感や学芸員からの知見を土台に、万次郎の歩みをどう映像化していくか、慎重に準備を進めている段階という形であることがうかがえた。また、高知県土佐清水市を中心に、10年以上にわたって続けられてきた誘致活動との関連についても質問が及んだ。

「企画を調べていく中で、(土佐からの)非常に強い思いがあることは承知していました。ただ、順番としては、まず制作側として『万次郎さんを描きたい』という企画が立ち上がったことがスタートです。ですので、誘致活動と今回の決定はあくまで別物。ですが、事実として地元の方々の熱い思いは届いています。土佐という場所を大切に、万次郎さんとの結びつきはしっかりと検討していきたいと思っています」

企画の発端こそ制作サイドの純粋な制作意欲であったが、結果として地元の長年の念願が最高の形で結実した形になりそうである。

本作は、2028年1月の放送開始に向け、2027年の初夏にクランクインを迎える。制作陣が10年以上温めてきた万次郎への熱い思いと、主演・山崎の強い意欲が重なり、プロジェクトは確かな一歩を踏み出す。

2年連続の幕末というハードルはあるものの、今回提示された「海から見た陸」という全く新しい視点は、王道に慣れた大河ファンにとっても新鮮な驚きとなるはずだ。名もなき庶民が絶望を希望に変えていく壮大なサバイバル……制作陣の並々ならぬ覚悟は、放送を待つ視聴者の期待を自ずと高めていくことだろう。