ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平【写真:Getty Images】

 

 二刀流として完全復活を遂げた大谷翔平が、新たなシーズンでどんな歴史を刻むのか。投打で積み上げてきた実績と今後の稼働を踏まえれば、前人未到の記録も現実味を帯びてくる。大谷の“先輩レジェンド”のキャリアとも比較しながら、“新章”の到達点を展望する。(文:ニコ・トスカーニ)

完全復活した二刀流 大谷翔平の“新章”が始まった

 

 2026年のMLBレギュラーシーズンが日本時間3月26日(木)に開幕した。

 

 

 

 昨季のシーズン途中にトミー・ジョン手術から投手復帰した大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は、今季はシーズン開幕当初から先発ローテーションに名前を連ねている。

 

 日本時間4月1日には今季初登板で6回1安打無失点6奪三振3四球の好投を披露し、2026年シーズン初勝利を挙げた。昨季の初勝利がシーズン終盤の8月27日だったことを考えると、今季はある程度の勝ち星を期待できそうだ。

 

 勝ち星には打線との噛み合わせなど運の要素も絡んでくるが、今季もカイル・タッカー、エドウィン・ディアスと大物を補強したドジャースであれば、好投を続けることで結果はついてくるだろう。

 

 シーズン当初からの二刀流本格復帰となると気になってくるのが「今後、大谷がどんな記録を残すのか?」だ。大谷はMLB移籍以降、2度のトミー・ジョン手術により投手全休だったシーズンが2度、2020年はわずか2登板、2025年も14登板に留まった。

 

 打者としての働きに比べると投手としての稼働率が低く、今後の大谷が達成しうる前人未到の記録(打者成績+投手成績)はどれだけ投手としての成績を積み重ねられるかがポイントになってくる。

 

 大谷は今季で32歳とまだ十分に働き盛りだが、下降線を辿る可能性もあり得る。今後の成績を予想するうえで、参考になりそうなのが昨季限りで引退したクレイトン・カーショー氏である。

 

 

 

 カーショー氏は5年後の一発殿堂入りが確実視されているレジェンドだが、31歳のシーズンを最後に規定投球回に到達しておらず、ゆっくりとだが確実に下り坂に入っていた。それでも、引退した2025年シーズンまでの間に4度の2桁勝利を挙げている。

 

 ドジャースは豊富な資金を持ち、低迷することがほとんどない常勝名門チームである。勝ち星はチーム力にかなり左右されるため同じチーム(ドジャース)、今季時点で同じ年齢(32歳)、似たタイプ(奪三振の多いパワーピッチャー)であるカーショーは「仮に大谷が今季から衰え始めたら?」を予想するうえでかなり良いサンプルだと思われる。

 

 その上で、大谷の大記録達成可能性と達成時期について予想を立てるのが本稿の試みである。

 

 

100勝100本塁打は6~7年で到達か

 

 大谷との比較でよく名前が出るベーブ・ルースだが、ルースの二刀流は投手から打者への転向に際して過渡期で偶発的になったものである。

 

 

 

 1920年から1933年までは14シーズンでわずかに5登板しかしておらず、投手成績の上積みはほとんどない。通算714本塁打を放っているが、勝ち星は94勝でわずかに100に届かず、仮に大谷が100勝100本塁打を達成したら史上初の快挙である。

 

 大谷は昨季まででMLB通算39勝を挙げている。カーショー氏が衰えの見え始めた2020年から引退した2025年までの間に挙げた勝ち星は54である。これだと大谷があと6年頑張っても100勝に届かないことになるが、2020年シーズンは新型コロナウィルスの影響でレギュラーシーズンが通常時(162試合)の半分以下(60試合)しか無かった。絶対に無いとまでは言えないが、同じような特殊な社会情勢に再びなることは限りなく低確率だろう。

 

 衰え始めてからのカーショー氏は年間22~24先発程度をこなしており、このペースは二刀流フル稼働した大谷の年間先発登板数にかなり近い。

 

 大谷は史上初のダブル規定到達(規定投球回と規定打席)したシーズン28先発しているが、それ以外のシーズンは最多でも23先発である。ドジャースのチーム力、予想される先発機会、ゆっくりと衰え始めた場合の予想成績を考えるとあと6~7年で100勝100本塁打は達成できるだろう。ドジャースとの残りの契約年数が8年なので契約満了までには達成できる計算になる。

 

 

 

 また、走塁能力も高い大谷はすでに100盗塁を達成しており、達成済みの100本塁打と組み合わせると100勝100本塁打100盗塁に到達することになる。

 

 勿論、過去に誰も達成していない前人未到の記録である。

 

1000奪三振1000安打は2~3年で到達か

 

 積み重ね型の成績として、奪三振も代表例だ。

 

 大谷は奪三振率の高い投手であり、運に左右されないため100勝よりも1000奪三振の達成が予想しやすい。昨季はわずか47イニングの登板に留まったが、62奪三振を記録している。仮に二刀流の例年シーズン程度の稼働率だった場合、130イニングで150~160奪三振程度の成績が過去シーズンから予想される。

 

 

 

 比較例として取り上げたカーショー氏は、衰えが見え始めてからも奪三振率が高く、2020~2024シーズンまで毎年イニングを上回る三振を奪っている。この間、奪った三振は年間で130~140程度である。大谷の2025年までの通算奪三振が670なので、多少の衰えがあっても2~3年で1000奪三振は達成するだろう。ベーブ・ルースの奪三振は通算でも488に過ぎず、1000安打1000奪三振は達成していない。大谷が達成したらこちらも史上初の快挙である。

 

 また、大谷の過去成績からおそらく1000打点も3年程度で達成可能だろう。投球イニングも今のペースで登板し続ければ4年程度で1000イニングを達成する。

 

 その場合、1000奪三振1000投球回1000安打1000打点のクアトロ1000になる。前人未到なのはもちろんのこと、永遠のアンタッチャブルレコードだろう。

 

【著者プロフィール】

ニコ・トスカーニ

大学卒業後、IT技術者をしながら「ニコ・トスカーニ」のペンネームでカルチャー系の兼業ライターとして活動。また共同制作者、脚本家として神谷正倫名義で『11月19日』(2019)、『階段下は××する場所である』(2021)、『正しいアイコラの作り方』(2024)の3本の劇場公開作がある。FanGraphsのデータを確認するのが趣味で、好きが高じて野球の原稿も時折手掛けている。

 

 

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【了】