日本テレビ系ドラマ『月夜行路 ―答えは名作の中に―』(毎週水曜22:00~)の第1話が8日に放送。マイナビニュースなどで数々の名作ドラマレビュー記事を手がける「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平氏は「難しい現代テレビドラマへの“解”を提示する、異色のロードミステリー」と評した。
波瑠と麻生久美子がW主演を務める本作は、文学オタクで洞察力に優れたバーのママ・ルナと、家族から蔑ろにされ寂しさを抱える専業主婦・涼子が出会ったことから始まるロードミステリー。謎解きに加え、凸凹バディ、文学の引用、友情、大人の青春、ロードムービー的要素まで盛り込んだ“要素過多”な作品でありながら、大石氏は「視聴後は不思議とそれらがきれいに収束し、むしろ爽やかな余韻すら残す快作」と分析している。
現代のテレビドラマを取り巻く難しさにも言及。エンタメと現実の境界が曖昧になり、視聴者の目も厳しくなる中で、とりわけ殺人事件を扱う作品は、リアリティーと娯楽性のバランスがより繊細になっていると指摘した上で、本作については「そんな問いに対して一つの“解”を提示する作品だった」としている。
特に評価したのは、作品が“現実に引き寄せすぎない”ことだった。古典的なタイトルとは裏腹に、外国車が駆け抜けるスタイリッシュなオープニングや、家庭内で静かに疎外感を募らせる涼子の描写を、過度な生々しさではなくカジュアルな温度感にとどめた点を挙げ、「これはこういう物語だと観る側に宣言し、その様式の中へ軽やかに引き込んでいった」と論じている。そこには『火曜サスペンス劇場』や横溝正史ミステリーにも通じる、“フィクションの型”に身を委ねる心地よさがあるとした。
また、大石氏は主演2人の存在感を高く評価。波瑠については、トリッキーかつミステリアスでありながらもどこまでもチャーミングなルナを「視聴者を惹きつけて離さないキャラクターとして魅力的に体現した」とし、麻生についても、過去の恋を引きずる涼子を「過度に湿らせることなく、独特の距離感で演出した」と評した。2人の芝居が、物語の非現実性を違和感ではなく“味わい”へと変えたと見ている。
脚本面では、清水友佳子氏のバランス感覚にも言及。多くの要素を抱えながらも、過不足なく整理し、“人情ミステリー”として筋道を通した点を称賛した。中でも、トランスジェンダー女性であるルナの描き方について、その属性を殊更に強調することなく、ごく自然に物語へ溶け込ませていることを評価。同枠の『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』や、『リバーサルオーケストラ』に通じる土壌や温もりが本作にも息づいていると分析した。
さらに、ラストで用いられた“キャンディー”と“バースデーケーキ”のモチーフにも触れ、単なる謎解きに終わらず、その奥にある感情や関係性に光を当てたことで、物語に優しいぬくもりが加わったと指摘。「どれほど“そんなことある?”な設定であっても、人情で包み込んでくれることが本作成立の最大の要因」とまとめている。
15日放送の第2話では、涼子の人生を取り戻す鍵を握る学生時代の恋人・カズト探しが本格始動。ただし、手がかりは「大阪在住」「親の事業を継承」「名字は佐藤」というわずかな情報のみ。ルナは、その切り札が図書館にあると断言し、2人は谷崎潤一郎『春琴抄』の舞台として知られる道修町へ向かう。
そこで呉服店「佐藤商会」を訪ねるが、店主・頼子に「一見さんはお断り」と追い返される一方、近隣では強盗殺人事件も発生。不穏な空気が漂う中、ルナはその言葉に秘められた真意に気づく。
【編集部MEMO】
波瑠は、文学オタクを演じるにあたり、「膨大な知識を持っていて何でも説明できるキャラクターなので、セリフが大変」、専業主婦を演じる麻生久美子は「際立った個性がある役ではない分、どう演じれば共感してもらえるのか難しかった」と語っている。
(C)日テレ










