導入直後はまさかの苦戦「今でも忘れません」
これで戦える。“真逆”の先にあった“突き抜けたもの”に確かな手ごたえを感じていたが、『パチスロ からくりサーカス』は最初から順風満帆だったわけではない。
「最初は、本当に残念なくらいお客さんがつかなかったです。今でも忘れません。上層部からもいろいろ言われましたので、正直、導入当初はかなりヒヤヒヤでした(笑)」
スマスロ新時代。しかも、社内には『パチスロ 革命機ヴァルヴレイヴ』という先行の大ヒット機がある。その次に出す台が伸び悩めば、比較されるのは当然だ。
「でも、1カ月くらい経ってからSNSなどで少しずつ盛り上がってきて。『パチスロ 炎炎ノ消防隊』の初代もそうでしたが、最初はそこまで勢いはなくても、打ち込む人やYouTuberさん、ライターさんたちが面白さを発信してくれて、そこから評価が広がることがあります」
「絶対当てろよ」逃げ場のない重圧の中で見えたもの
『パチスロ からくりサーカス』は、単なるヒットした1台という枠を超えていた。彼の中では、これはパチスロ部門そのものの命運を左右する一台だった。
「SANKYOは、やっぱり“パチンコメーカー”というイメージが強かったんです。自分は24年いますけど、ずっとパチスロに携わってきた立場としては、長い間ヒットを出せない時期がありました」
その中で社内から向けられた言葉は、今でも脳裏に刻まれている。
「“スマスロしかないぞ。転機はそこしかない。絶対当てろよ”と、もう本当に何度も言われていました」
逃げ場のないプレッシャー。だが、それだけ期待を背負っていたということでもある。
「結果として、『パチスロ 革命機ヴァルヴレイヴ』『パチスロ からくりサーカス』『Lパチスロ かぐや様は告らせたい』『Lパチスロ 炎炎ノ消防隊2』と続いて、“SANKYOはパチンコだけじゃない”という空気になった。そこはすごく大きかったと思います」
彼が考えるヒット機種の条件は、実に明快だ。
「一言でいえば、突き抜けたものがあるかどうかです」
平均点では足りない。総合力だけでも弱い。何かひとつ、強烈に刺さるものが必要だ。
「今って、お客さんもいろんな機械を触ってきているので、そこそこ良いだけでは埋もれてしまうんです。何かひとつでも“ぶっ刺さる”要素が必要になる」
もちろん、それは単に過激であればいいという話ではない。新しいものは、ゼロからいきなり生まれない――これこそが“ぶっ刺さる”要素の源泉だ。
次世代に求めるのは「“これが面白い”という考えを持っている人」
ヒット機種を出した時、誰よりも喜んでくれたのは妻だった。仕事のやりがいについて尋ねると、「家族や友人といった身近な周りの人が喜んでくれることですね」と笑顔を浮かべる野坂氏。4号機時代から一緒に打っていた仲間たち、彼らからの言葉もまた、野坂氏の励みになっている。
「“あのとき言えなかったんだけど、なんでSANKYOに行ったんだろうって。今となっては本当によかった”と言われたこともありました(笑)。そういうのはすごくうれしいですね。自分は前述のノーマル機から始まった人間なので、昔のSANKYOには自分の好きなパチスロがあったわけではないんです。それが、まさかここで自分が当てるとは……」
そんな彼は、ともに働く同志としてどのような人材を求めているのか。答えは、「自分が一番触れてきた、愛着のあるものを商材にできたら面白いんじゃないか」という自身の原点とも重なる。
「やっぱり、自分の中に“これが面白い”という考えを持っている人ですね。それを自分の言葉でちゃんと伝えられる人。最近の新卒は本当に優秀で、表現能力の高い人が多い。そういう方々にこれからもたくさん入っていただけると、さらに活気が出て面白いものがつくれるのかなと思います」
“面白さ”を追い求める人材が、存分に力を発揮できる環境――それがSANKYOの開発現場だ。PS開発部では、企画・設計・映像・サウンド・制御といった各領域のメンバーが一体となり、社是である「創意工夫」を軸に、年次に関係なくアイデアをぶつけ合う。
「新人の“これが面白い”というひと言から、演出や仕様が形になることもあります。上司やベテランも含めて本気で議論し、どうすれば実現できるかを一緒に考えていく文化ですね」
“挑戦心”を支えるため、成果に応じた評価制度や各種手当、福利厚生といった制度面も整えられている。このような環境のなかで、一人ひとりのモチベーションを高めているのが、チーム全体に根付いた情熱だ。
「開発は決して楽な仕事ではなく、追い込みの時期はどうしても業務量が増えます。それでも“自分の好きなものを、自分の手で面白くしたい”という思いがあれば乗り越えていける。好きなことにとことん向き合い、最後までやり切ろうとする人には、しっかり応えてくれる会社だと思います」
そうした土壌があったからこそ、『パチスロ からくりサーカス』のような挑戦的な一台も生まれたのだ。
初代『パチスロ からくりサーカス』のヒットは、単なる成功ではない。社内に圧倒的優位な先行機がいる中で、同じ土俵に乗らず、違う勝ち筋を探した。高い出玉性能でありながら、“自力感”を中心に据えた。導入直後の苦戦を乗り越え、口コミで面白さが広がっていった。それらが融合し、“SANKYOパチスロ”の存在感そのものを押し上げる流れの一角になった――。
「これが当たっていなかったら、私は今、ここにいないと思います」
その言葉は、決して大げさではない。初代スマスロ『パチスロ からくりサーカス』は、一人の開発者にとっての代表作である以上に、SANKYOのパチスロが、もう一度“主役の座”に戻るための転機だったのかもしれない。
「パチスロ からくりサーカス」原作/藤田和日郎「からくりサーカス」(小学館少年サンデーコミックス刊)/(C)藤田和日郎・小学館/ツインエンジン Licensed by Sony Music Labels Inc.
「パチスロ 革命機ヴァルヴレイヴ」(C)SUNRISE/VVV Committee
「Lパチスロ かぐや様は告らせたい」(C)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会
「Lパチスロ 炎炎ノ消防隊2」(C)大久保篤/講談社 (C)大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課


