「生成AIでドラマは“早く安く”作れる」そんなイメージに、現場のスタッフたちは首を横に振った――莉子、藤原樹(THE RAMPAGE)らが出演し、実写と生成AI映像を融合させた日本テレビのドラマ『TOKYO 巫女忍者』(1月7日放送、Huluで配信中)。このほど行われた同局の番組『SENSORS』(19日25:35~)の公開収録で、この制作の裏側が明かされた。

登壇したのは、脚本・プロデューサーの鈴木努氏(日本テレビ)、AIクリエーティブディレクターの宮城明弘氏(テンパレード)、AIクリエーティブプロデューサーの吉田真氏(サイバーエージェント)、VFXスーパーバイザーの山田悠生氏(TREE Digital Studio)、AIチーフクリエイターの古谷康佑氏(日本テレビ)。AIを“便利な自動化ツール”としてではなく、“一人のクリエイター”として扱いながら、実写・CG・バーチャルプロダクションを束ねていった舞台裏が語られた。

  • 『SENSORS』公開収録の様子

    生成AIで生み出された『TOKYO 巫女忍者』場面カット (C)日テレ

写真が“演技する映像”へ…実写と融合した画作り

このドラマは、江戸の風情が残りながらも“妖化(ようか)”の病がはびこる2026年の東京を舞台にした、新時代のアクションファンタジー。生成AIを活用した事例として、莉子の写真から動く芝居の映像になったシーンや、街並みの風景で手前の画を作り込み、その奥をAIに予想させて全体の背景にした場面などが挙げられた。

「AIで映像を作る」と聞くと、テキストで指示を出してワンクリックで生成できると思われがちたが、登壇者たちは一様に否定。通常の30分枠の深夜ドラマでは、1話当たりの撮影で2.5~3日かかるというが、今回の作品はLEDスタジオやグリーンバックなど複数形態を合わせて実施したため、期間は単純に比較できないという。

その上、特に時間を要したのが、まさにAIでの生成作業。宮城氏は、劇中に出てくる“鳳凰”を「10人がかりで6時間くらいやって、500回以上ガチャをやりました。同じプロンプト(指示)を書いても二度と出てこないです」と、納得いくまで生成に没頭したことを明かす。今回の作品を通して、「(AIに)一番触って作り上げたやつが、いいクリエイターになり得るというのが、一つの定義かなという気がしています」と実感したそうだ。

「5000万→3000万」の削減より「5億で50億の世界観を作る」

このようにマンパワーをかけて作った今回の作品。鈴木氏は「今回のドラマを作って、社内外から“1時間のドラマで5,000万円かかるのが、同じクオリティで3,000万くらいでできるようになるの?”と聞かれるんです。やればできるだろうなとは思うんですけど、AIが先導してとんでもない表現をしてくるので、今ある枠組みの中の映像表現を置き換えていくというより、AIを“いちクリエイター”として見立てて、AIと一緒にものを作っていくという感じでやっていったほうが合っているんじゃないかと思います。今まで5,000万のものを3,000万で作るというより、50億とか100億ぐらいの世界観のものを5億くらいで作るという使い方のほうが、夢もあるし正解なのではないか」と見解を語る。

宮城氏は「僕は“全部AIで作りましょう”みたいな考え方が全くないので、それを今回実現できたのが、すごく良かったと思います」と手応えを感じたそう。「今回のドラマをやって一番思ったのは、AIだけじゃ何もできないということ。山田さんのVFXがあって、吉田さんのLED スタジオがあっての組み合わせだからこそ、できたと思うので、“AIで何でもできます”みたいなことはないんだなということを改めて実感しました」と強調した。

今後のAIとの向き合い方について、宮城氏は「生身の役者さんが好きで、役者さんをどう引き立たせるか、その一つの武器としてAIがあるという考え方なので、今回の“鳳凰”とか、今までできなかったハリウッドテイストのもので、日本のエンタメの枠をもっと底上げしたいという思いです」と意欲。

日テレ入社2年目の古谷氏は「秋元康先生とAIの秋元先生を対決させる企画もやらせていただいたのですが、AIはバラエティにもドラマにも潜り込んで面白いことができるツールだと感じているので、コンテンツと技術をうまくつないでいく架け橋のような人材になっていきたいと思っております」と展望を述べた。

  • 『SENSORS』公開収録の様子

    『SENSORS』公開収録の様子