縦型ショートドラマの日本最大級のコンテスト「マイナビ ショードラアワード 2026」の開催に伴い、有名クリエイターから直接学べる「ショートドラマ制作実践ワークショップ~SNSでバズるショートドラマのつくりかた~」が2月11日、東京・銀座の歌舞伎座タワーで開催された。
経験も目的もさまざまな受講者たち
同アワードは、2025年11月1日から2026年2月28日まで作品を募集中。13歳以上で、TikTokまたはInstagramアカウントを持っていれば誰でも参加できる。
ワークショップでは、TikTokなどで実際にバズを生み出しているクリエイターが講師を務め、企画立案から撮影・編集、さらにはSNSアルゴリズムを踏まえた拡散設計まで、実践的なノウハウが共有された。縦型ショートドラマ市場が拡大するなか、次世代クリエイター育成に向けた実践型のワークショップとなった。
開催当日、幅広い年齢層の男女10名が受講のため会場に集まった。講師の自己紹介に続き、受講者も一人ずつマイクを握り、それぞれの経歴や現在の活動について語った。
参加理由はさまざまで、役者としてショートドラマへの出演を控えることから制作の流れを学びたいという人もいれば、すでに撮影や編集の経験を持ちながら、さらなるスキルアップを目指して参加した受講者も。撮影・編集経験が豊富な人から、これからゼロから挑戦しようとする人まで、多様なバックグラウンドの参加者が集まっていた。
三者三様のショートドラマづくり
講師たち3チームによる、ショートドラマを制作する上でのポイントが、講義形式で伝えられた。恋愛をテーマに、リアルな表現を追求するショートドラマを制作しているチーム「多分こんな感じドラマ」は、動画制作における「リアル」と視聴者の反応の関係を中心に語った。
制作の出発点は、恋愛というテーマを通じて少子高齢化や社会問題にアプローチすること。制作者自身の経験から「恋愛の教科書」となる動画を作り、視聴者が共感できるリアルな表現を目指している。
ポイントは、台本に沿いつつも演者の自然な動きやアドリブを尊重し、感情の変化を動画の中に残すこと。短いカットで無理に編集せず、役者の呼吸や沈黙、視線といった細かな表現を重視している。
動画の長さは1分程度ではなく、平均6~7分、長いものは15分以上。感情の変化やリアルな間を十分に描くために長めの尺で作られている。また、投稿後にはコメント欄で視聴者の反応を確認し、作品やアカウントの運用改善に活かすことも大切にするそうで、バズを狙うのではなく、視聴者に「こんな感じ」と共感されるリアルな動画作りをしていると話す。
チーム「ドラマみたいだ」は、「今までにない、Z世代にも分かりやすいドラマアカウントを。」というコンセプトで活動。ショートドラマが増える中、プロが関わる作品も多く、未経験のクリエイターが出演する場合は、喜怒哀楽を編集で強調することもある。出演者の強みに合わせ、後から脚本や構成を調整することで、SNSで最後まで見てもらえるテンポや落ちを作り上げているのが特徴である。
複数話にすると管理が大変になるため、物語は1話完結を基本に制作しているそうで、これから作り始める場合は、まずはゆるめの短編から始めるのが望ましいと説明。また、動画やアカウントには目的を持たせ、キュンキュンさせる、ストレス解消させる、地域やお店を自然に紹介するといった意図を反映させることが大切だという。
チーム「ミッドナイトチケット」は、夜寝る前や隙間時間に心を動かす短編作品を提供することを目的として運営している。講義では、転売問題をテーマに制作された作品「三田さん2」を上映し、一本のショートドラマから制作について解説していく。
制作チームは脚本、監督、撮影班など完全な分業制で運営されており、各専門家の意見を集約することで、一つの作品が完成する。個々のクリエイターは自分が良いと思うものを作りつつ、視聴者に届けるための工夫も取り入れている。
また、ショートドラマ制作で重要なのは、冒頭で視聴者を引きつけることと説明。サムネイルや出演者で選ばれる文化ではなく、最初の数秒で関心をつかむ必要があると説く。そのほか、自分が好まないバズ作品からも、視聴される工夫を学ぶことが大切で、それを参考に自分の作品に活かすことが大事であると推奨していた。
撮影場所から逆算する柔軟な脚本づくり
ワークショップでは、実際に企画や脚本を制作してみることに。まずは企画および脚本づくりから始めるが、その前に撮影場所を決めるくじ引きが行われた。その結果、「多分こんな感じドラマ」は会議室、「ドラマみたいだ」は控室、「ミッドナイトチケット」は講義が行われた開けたスペースに決定した。
3チームともゼロから脚本を作るわけではなく、過去のドラマの脚本を持ち込み、そこに手を加える形式が取られた。しかし通常のドラマ制作では、脚本完成後に撮影場所を決めるのが一般的。今回は先に撮影場所が決まったため、場所ありきで脚本づくりをすることになった。
「多分こんな感じドラマ」はカップルの自宅での会話を前提にした脚本を用意していたが、撮影場所が会議室になったことで、既存の脚本を使えずゼロから書き直すことに。
「ドラマみたいだ」は「男女のすれ違い」をテーマにした脚本を土台に、受講者の意見を取り入れて脚本を作り上げていく。実際の撮影場所である控室で撮影イメージを確認してみると想定とは合わないハプニングもあり、場所から設定を作り直すという逆転現象も起きていた。
「ミッドナイトチケット」は「女性の不満」をテーマに脚本を構築。デート中の女性視点での不満を受講者が出し、使えそうなアイデアをピックアップして脚本に組み込む方式を取った。講師は、SNS向けには女性側が勝つ話が視聴者に受けやすいことを伝え、その方向性が脚本に反映されていく過程が確認できた。
全体を通して、ゼロから作るのではなく土台を活かしつつ、アドリブや場所に合わせた工夫を加えることが、SNS向けのショートドラマ制作では重要であることが示された。また、視聴者にどのように受け入れられるかを意識しながら柔軟に脚本を調整する姿勢が、受講者にとっても学びの多い体験となっていた。
アングルや演出を学ぶ、受講者参加型の撮影実践
1時間半の企画脚本会議を経て、昼休憩を挟んで各チームが撮影に移った。撮影時間は2時間で、受講者も現場に参加しながら撮影のプロセスを体験することに。
「ドラマみたいだ」は最も狭い楽屋を撮影スペースとして使用。出演は、普段の動画で監督・脚本・演者を兼任するくぼけん氏と、監督と演者を務めるさいとうねね氏に加え、受講者1名がエキストラとして参加した。
同チームでは、画面分割で男女双方の心の声を挿入する手法や、画面上は無言でも別録りした心の声で表現する手法が用いられ、狭い部屋での会話シーンながら複雑な撮影工程となった。
「ミッドナイトチケット」は広間のテーブルと椅子を使い、レストランでのカップルの会話シーンを撮影。受講者は男女それぞれの表情を撮影して動画に組み合わせる工程を観察し実践した。
このチームはカメラアングルの工夫を凝らし、人物中心の撮影で視聴者の集中を保ちつつ、下からのアングルで登場人物の不安感を表現するなど、多様な表現手法が取り入れられていた。
「多分こんな感じドラマ」は、ゼロから脚本を作ったチームとして受講者も参加しながら、スロースタートで撮影が進み、長回しや複数アングルの撮影など、実践的な技術を用いていた。
また、2台のスマートフォンで異なるアングルから同時に撮影する手法も。会議室シーンでは、リハーサルでアングルやタイミングを入念に確認する様子が見られた。
限られた時間で形にする編集のリアル
撮影を終えたチームは順次、編集作業に取りかかった。編集にあてられた時間は1時間半と限られており、撮影が押したチームはその分、編集時間が削られることになった。
受講者たちは、講師が集中してパソコンの前で映像を組み立てる姿を間近で見ながら、短時間で仕上げる切迫感を実感した。1分ほどの作品でも、編集の手間や難しさが多くあることを、受講者は身をもって体感した。
また、編集作業は基本的にチーム内の一人が行うため、他の受講者は画面を見つめながら操作や手順を学ぶ一方で、待ち時間を使い、講師やチーム外の参加者と交流する場に。こうして、編集のスキル習得と作業の大変さの理解、そして参加者同士のコミュニケーションが同時に行われる時間となった。
試写会で学ぶ、作品の完成度と他者の視点
編集作業を終えたチームから、完成した動画の試写が行われた。最初に上映されたのは「ドラマみたいだ」の作品「付き合いたい男と解散したい女」。男女コンビのお笑い芸人が主役で、男性は「今日こそ告白しよう」と考え、女性は「今日こそ解散を伝えよう」と考えている、という思考と言動のすれ違いがコミカルに描かれていた。1分ほどの短い動画ながら、画面分割やモノローグ挿入などの技巧が張り巡らされていた。
二番手は「多分こんな感じドラマ」の作品「大丈夫ってこんな感じ」。普段は長尺の動画を制作しているチームだが、今回は約3分半のボリュームに。遠距離恋愛になることが決まっている学生カップルのストーリーで、彼氏が言う「大丈夫」という言葉に彼女は不安を抱き、彼氏は自身の思いが伝わらないもどかしさを抱えているという内容だった。
最後に上映されたのは「ミッドナイトチケット」の作品。レストランを舞台にカップルのデートを描き、男性は女性への優しさを行動で示す一方、他人への気遣いは全くなく、その態度が原因で女性に振られるというお話。クライマックスでは、男性が「(振られた)理由は?」と尋ねると、女性が指折り数えながら「何個あったかな」と答えるシーンが流れた。
以上の3作品の試写を通して、受講者は作品を「実際に見る」と「講師の講評を聞く」の両方を体験することができ、新たな視点や深い理解を得る貴重な機会となった。
ワークショップを通して得られた制作体験と学び
今回のワークショップを通して、受講者たちからは、「1分の動画でも何度もトライアンドエラーを重ねて作られている」「セリフ回しやシチュエーションに合わせた演技の大切さを再認識した」など声や、「縦動画で情報を詰め込み、関係性を伝える工夫が新鮮だった」といった感想も挙がった。
普段は動画制作をしない参加者も、編集やカメラワーク、チームでの協働作業の重要性を実感したようで、「テーマや目的を軸に制作することの大切さを知り、これからの制作に生かしたい」と今後の動画制作への前向きな声を聞くことができた。
ワークショップでの学びからも分かるように、短いショートドラマでも、演技、撮影、編集の工夫やチームでの協働作業が重要。これから制作に挑戦してみたい人も、実践の一歩を踏み出せる。
「マイナビ ショードラアワード 2026」では、指定ハッシュタグ「#マイナビショードラアワード2026」を付けて、TikTokやInstagramにショートドラマを投稿するだけで応募可能。大賞ほか多数の賞が選出され、賞金や地上波ドラマ制作権、次回作制作サポートなど、さまざまな特典が用意されている。
■多分こんな感じドラマ
大阪の棒人間鈴木が手掛ける関西発のショートドラマチーム。恋愛や人間関係、日常に潜む感情のリアルをテーマに、単なる“あるある”で終わらせない、視聴者の感情が動くリアルな物語を強みとしており、総フォロワー数は25万人超。企業・ブランドのメッセージをストーリーの中に自然に組み込み、広告感のない「共感型ショートドラマ」として届けることを大切にしている。
■ドラマみたいだ
「今までにない、Z世代にも分かりやすいドラマアカウントを。」というコンセプトのstudio15が運用する自社メディア。毎日投稿ではないにもかかわらず、Tiktokアカウントは開設からわずか3カ月月で総計1,000万回再生を超える。カップルのあるあるやコント感覚のドラマで女性層を中心に定期的なファンや新規ファンの心をつかんでいる。
■ミッドナイトチケット
“動画”で“震える”体験をつくるSNSドラマ「ミッドナイトチケット」。ストーリー仕立てで視聴者の感情を動かすエモーショナルなショートドラマを制作。































