警視庁の広報という視点で事件解決に向けて奔走する姿を描くフジテレビ系ドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』(毎週火曜21:00~ ※全話放送終了後、FODでseason2独占配信)。数々の刑事ドラマが作られてきた中で、従来にない切り口で紡がれるストーリーに注目が集まっているが、この題材によってメディアの裏側も描いている。
リアルの追求を謳う中で“身内”の負の側面も映し出していくことになるが、そこに「葛藤はなかった」と覚悟を語るのは、警視庁の担当記者経験を持つフジテレビの安永英樹氏。社内で議論をぶつけ合いながら今作が実現した舞台裏をはじめ、ライターズルーム体制での脚本執筆や反響などについて、共同テレビの中村亮太プロデューサーとともに話を聞いた――。
隠ぺい暴露のシーンは「体験したことをそのまま入れた」
警察内に数ある組織の中で広報課を主役に据えたのは、警視庁担当の報道記者だった安永氏の経験がもとになっている。
「4年半くらい担当していたのですが、当時、四六時中広報課の皆さんと接している中で、“この人たちをドラマにしたらきっと面白いだろうな”とずっと思っていたんです。警察の情報を全部知っている人たちで、時には一緒にご飯を食べながら罵り合ったり、褒め合ったりもする。すごくクレバーだけど泥臭いところもある。ここに事件が入ってくると面白いドラマになるのではないかと、2007年くらいから考えていました」(安永氏)
当時の広報課の面々は個性の強い人が多かったそうで、今作の登場人物の参考にも。「とある世代の警視庁クラブの記者が見れば“あの人だな”と分かると思います。もうめちゃくちゃ面白い人だったので(笑)」と、リアリティに厚みを増している。
第1話~2話は、警察官がストーカー殺人を起こすという衝撃的な事件が描かれ、第2話のラストでは捜査一課の松永理事官(利重剛)が、警察の隠ぺいを暴露するという衝撃的な結末を迎えた。このシーンは、「昔、ある事件で警察が責任を矮小化しようとしていることを、捜査幹部が腹をくくって僕らに全部打ち明けるというすさまじい出来事があったんです。僕はあれが本当に忘れられなくて、体験したことをそのまま入れました」(安永氏)と明かした。
主演の福士も、現場で「もっとアクセル踏み込みましょうよ」という姿勢。安永氏は「僕らが“ここの表現はちょっと抑えたほうがいい”と思ったところも、“いや、もっと踏み込んだほうがいいんじゃないですか?”と言ってくれるんです。“本当の警察だったらここどうするんですか?”、“本当の記者だったらどう動くんですか?”というのも結構聞かれます」といい、中村氏は「福士さんが先陣でそういう意識でいてくれるのは、やっぱり大きいです」と感謝した。
男気で企画を通した仲間たち「そこにも熱いドラマが」
広報課を舞台にすることで、警察と同時にメディアの内幕も描くことになる。そのことについて、安永氏は「これだけネットが発達して、何かを隠せる時代ではなくなっています。メディアが誰かを傷つけることもあるということを含めて、その光と影をきちんと出したいという思いがありました。メディアの内幕を描くことへの葛藤は、僕自身にはなかったです」と語る。
テレビ報道の裏側を描くという作品で記憶に新しいのは、『エルピス-希望、あるいは災い-』(22年、カンテレ)。タブーに切り込んだ自己批判の姿勢に評価が集まったが、キー局ではないからこそ制作できたという声もあった。それから約3年が経ち、キー局であるフジテレビのGP帯連ドラで実現できたのは、なぜか。
「この企画は2024年の夏~秋頃に僕が編成部にいた時に通ったのですが、当時の編成部のドラマ担当のチーフたちが“これはやるべきだ”と男気を出してくれました。たしかに社内ではいろんなハレーションがありましたが、最終的に押し通してくれたんです。その後、組織改編があって今は第3スタジオに所属しているのですが、局長が責任を取ると背中を押してくれたので、そこにも熱いドラマがありました」(安永氏)
警視庁と向き合う報道局の理解も得て、制作にこぎつけた。それを象徴するように、フジテレビ本社にある実際の報道センターでも撮影が行われている。
そうした中で、「取材をしている人間はどうしてものめり込みますが、一歩引いて“果たして自分のやり方は正しかったのだろうか”と思うこともあるんです。そんな部分も、今回のドラマのメディアの姿に映せればと思っています」(安永氏)と意識。そこで、第3話(1月27日放送)と4話(2月3日放送)で向き合うテーマが「実名報道」だ。
安永氏は「それぞれに正義がある中で、“実名報道とは何か”、“報道の意味とは何か”ということを、悩みながら作りました。全てを描ききれているかは分かりませんが、今回のドラマではそんな部分も考えていきたいと思っています」と狙いを語った。


