幸四郎主演シリーズの第1弾となったテレビスペシャル『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』(24年1月放送)は、時代劇専門チャンネル27年の歴史の中で過去最大級の加入数と視聴率を獲得。それでも、制作費を短期的に回収するのは難しいというが、「時代劇は制作費をかけてしっかり作れば、10年、20年、30年と古くならずに資産として残るので、費用対効果だけに縛られず、年数本のペースを守って作り続けると決めました」と決意を明かす。

『鬼平犯科帳』以外にも、北大路欣也主演・藤沢周平原作の『三屋清左衛門残日録』シリーズなど、オリジナルの時代劇を作り続ける日本映画放送。この取り組みは、時代劇という文化を守るという面でも、大きな役割を担っている。

「カツラ、衣装、小道具、スタジオセットに至るまで、一度、作り手が途絶えたら、もう作れなくなってしまうので、技術もノウハウも継承していかなければなりません。こうして時代劇専門チャンネルを運営させていただいているのですから、この継承は松竹さんや東映さんとともに、我々も使命感を持ってやっています」

作品を届けることは、次世代の時代劇人材を生み出すことにもつながる。

「先日、時代劇について講演をする機会があったのですが、『鬼平』好きの23歳の方がいらっしゃって“自分は将来、時代劇を作るディレクターになりたいんです”と言ってくれたんです。弊社も98年に開局しましたから、生まれた時から時代劇専門チャンネルを見ていた世代が時代劇の仕事に携わりたくて入社してくるようになりました」

2010年にオリジナル時代劇第1弾を作った頃、松竹京都撮影所のスタッフの平均年齢は70代で男性が多かったが、「今は若い人とベテランの方のバランスが取れ、女性も増えています。我々が作ることで若手スタッフにチャンスが回ってくるということもあるので、作り続けてきて良かったなと思いますね」と、構造に変化が生まれているそうだ。

  • 『鬼平犯科帳 血闘』主演の松本幸四郎

    『鬼平犯科帳 血闘』主演の松本幸四郎

  • 『三屋清左衛門残日録 永遠(とわ)の絆』ファンミーティングより

    『三屋清左衛門残日録 永遠(とわ)の絆』ファンミーティングより

“理想”から入って“利益”を生むような作品に

多くのクリエイターを輩出した日本大学芸術学部を卒業し、「番組作りがしたい」とスターチャンネル(東北新社)に入った経緯がある宮川氏。時代劇専門チャンネルと日本映画専門チャンネルでは、「オリジナル作品を作るのが積年の夢でした」という。

その夢をかなえ、ターニングポイントとなった作品は、松平健、柄本明らが出演した『鬼平外伝 正月四日の客』(13年、時代劇専門チャンネル)。「私は2番手のプロデューサーだったのですが、監督やスタッフと一致団結して作り上げた実感がありました。そこから、プロデューサーの自覚が芽生えたような気がします」と振り返る。

「作品を作っていると、毎回“作品はやっぱり見るものだなあ”と思って、作った後はもう最後にしようと思うのですが、また作ってしまうんです。依存性があるのかもしれないですね(笑)」という根っからのプロデューサー気質だが、今年6月に日本映画放送の社長に就任。

「会社としてきちんと利益が残せる目鼻が付けば、もっと作っていきたいですね」と現場での仕事に意欲を語る一方で、「若いスタッフが優秀で、どんどんやってくれているので、私がやらなくても大丈夫なんです」とも語る。

そんな彼らに託す一大プロジェクトが、“ネオオリジナル時代劇”の制作だ。「これまでの『鬼平犯科帳』や『三屋清左衛門残日録』をはじめとする池波正太郎先生や藤沢周平先生の原作作品は、時代劇専門チャンネルのお客様に向けて作ってきましたが、“ネオオリジナル時代劇”は、IP戦略に、より軸足を置いていくものになります」と方針を明かす。

来年から企画開発に着手し、開局30周年に当たる2028年から29年にかけて制作、30年の放送を目指すこのプロジェクト。「『刀剣乱舞』『国宝』『鬼滅の刃』のヒットのように、そういう鉱脈は絶対にあるはずなんです。まずは“理想”から入って、きちんと“利益”を生むような作品に向けて、盛大に企画会議をやろうと思います。若手スタッフがどんなものを作り上げるのか、楽しみにしています」と、期待を膨らませている。

●宮川朋之
1967年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部卒業。98年「日本映画専門チャンネル」「時代劇専門チャンネル」の開局から編成、企画を担当。時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇、35作品以上の企画、プロデューサーを務める。主な劇場映画として『最後の忠臣蔵』(杉田成道監督)、『LIAR GAME The Final Stage』(松山博昭監督)、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(岩井俊二監督)、『Ribbon』(のん監督)、『仕掛人・藤枝梅安(一)(二)』(河毛俊作監督)、同作品で23年、第42回藤本賞新人賞を受賞。松本幸四郎主演『鬼平犯科帳』シリーズ(山下智彦監督)、『おいハンサム!!』(山口雅俊監督)連続シリーズ&劇場版のエグゼクティブ・プロデューサー。25年「伊丹十三4K映画祭」、アクション時代劇『SHOGUN'S NINJA』(坂本浩一監督)を企画。22年常務執行役員、25年6月から現職。