そんな多部にもデビュー前、ミュージカル『アニー』に出演したくて挑戦し続けた経験がある。

「3年間オーディションを受け続けました。中学1年が最後のチャンスでしたね」というが、“主役のアニー以外はやりたくない”というこだわりやプライドは、今改めて振り返っても強い感情だった。

「年齢制限があったので、あきらめざるを得なかったんですが、そういう意味では、早稲田を12浪しても諦めなかった石黒さんと少し似ているかもしれません(笑)」

そして改めて、石黒さんについて、「理想が高く、現実とのギャップに気付けていない部分もあるけれど、真面目」と捉え、「磯野さんのように、真正面から導いてくれる存在に出会えたことは大きいと思います。たとえどれだけ長い時間がかかっても、諦めさえしなければ、自分の良さを理解して救ってくれる人と、必ず出会うことができる…。そう思わせてくれる物語でした」と感想を語った。

  • 就職活動に勤しむ石黒さん (C)フジテレビ

    就職活動に勤しむ石黒さん (C)フジテレビ

新たに挑戦したいことは「常にたくさんあります」

番組内で石黒さんは、「もう38歳だから」「39歳になってしまったので…」と、自身の年齢をしきりに口にしているが、石黒さんほど特殊なケースでなくとも、正規雇用において新卒であるかどうかが大きく影響する状況は、今も昔も変わらない。だが、多部は「年齢や肩書きに縛られない生き方こそ、多様な可能性を秘めている」と語る。

「芸能界でもアイドルを目指すんだったら10代までとかいろいろあると思うんです。でも、私自身はあまり年齢にはとらわれてないですね。もちろん何を目標にしているかによっても変わってきますが、俳優だって40代ぐらいで売れる人もいれば、逆にスパッと辞める人もいる。本気でやりたいことさえ見つかれば、たとえ何歳であっても、遅すぎることはない。とはいえ、趣味でも何でもいいからまい進できる何かがないと、ただやみくもに待っているだけではさすがに厳しいだろうな…とは思いますけどね」

多部には、これから新たに挑戦したいことがあるのだろうか。

「まだまだフワっとではありますが、小さいことから大きなことまで、やりたいことは常にたくさんあります。でも、自分ひとりの力では実現できないですし、それこそ“継続力”が大事になりますよね。中途半端な気持ちで始めても意味がないと思うので。『私はこういうことがやりたいです』と宣言する覚悟があるかと言われたら、今はまだ目の前のやるべきことでいっぱいいっぱいなんですが、いつか声を大にして自分のやりたいことを口にすれば、磯野さんのように導いてくれる人と出会える気がしています。芸能とは全く違うことを本名でやってみたい気持ちもあるんです」

そう語る多部は、“自分のため”から“誰かのため”へと意識が変わりつつあるという。

「別に、今と違う道を歩みたいというわけではないですが、それこそ私は10代の頃から自分のやりたいことをずっとやってきたので、これから先、人のために何かできることはないのかな…と。それがビジネスなのか、ボランティアなのかは別として、誰かの役に立ちたいなという思いが、ようやく30代後半にして私の中に沸々と湧き上がってきたんです。そういったことを、最近家族や身近な人とはよく話しています」

●多部未華子
1989年生まれ、東京都出身。02年に女優デビュー。05年、映画『HINOKIO』と『青空のゆくえ』で第48回ブルーリボン賞新人賞を受賞。09年には連続テレビ小説『つばさ』のヒロインに抜てきされる。主な出演作として、映画『あやしい彼女』『流浪の月』、ドラマ『私の家政夫ナギサさん』『マイファミリー』『いちばんすきな花』『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』など。待機作品には『連続ドラマW シャドウワーク』、2026年度前期 連続テレビ小説『風、薫る』がある。