私たちが普段、何気なく利用しているJR東日本のエキナカにあるacure(アキュア)の自販機。実は、日本全国の名産品を使ったオリジナル飲料が展開されている、ということをどのくらいの人がお気付きだろうか? JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニーにて、関係者に話を聞いてきた。
オリジナル飲料acure madeのラインナップは?
同社が手がけるオリジナル飲料acure made(アキュアメイド)。主にJR東日本のエキナカにあるアキュアの自販機、JR 東日本エリアのNewDays、NewDays KIOSK、アキュア公式オンラインストアなどで販売されている。
なかでもトップクラスの売上を誇るのが「青森りんごシリーズ」だ。複数品種をブレンドした「青森りんご」のほか、単一品種の「青森りんご ふじ」「青森りんご トキ」「青森りんご ジョナゴールド」「青森りんご つがる」「青森りんご きおう」「青森りんご 王林」など、ラインナップも多い。同社の小室塁氏は「時期や販売チャネルにより販売する品種が変わるので、品種ごとの甘味・酸味の違いも実感いただけます」とアピールする。
「青森りんごシリーズ」の先駆けとなったのは、東北新幹線 新青森駅開業に合わせて2010年度に発売した「味わい密閉 青森りんご100」。同シリーズはリピート購買が多く、特にその"本格感"から大人世代のファンも多い。ちなみに2014年度には、青森県産りんごの消費拡大、認知度向上に貢献したとして「平成26年度 青森りんご勲章」を受賞したという。
商品部長の菊池尚史氏は、同社の地産飲料・オリジナル商品の歴史について紹介する。地産第1弾として2009年度に発売したのは、山形食品と共同開発した「もぎたて"んまいもも"」だった。2012年度には福島県産ブランドの桃「あかつき」を用いた「福島あかつき」をヒットさせており、現在も桃の商品は「青森りんごシリーズ」に匹敵する売れ筋商品となっている。
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現在、数量限定で販売中の「福島あかつき もも」(2025年8月5日発売)。今年は缶で販売。容量は160g、NewDays(初回販売分のみ)における価格は180円、現在はECとアキュア地産のみもの自販機で販売中※取材時
「当社では全国各地の名産品、その土地ならではの食材を活かした商品開発を行っています。生産者の方々の想いを身近な自販機で感じていただければ嬉しいです」と菊池氏。
沿線の地域活性化へ
――プロモーション方法で工夫していることはありますか?
菊池氏「駅ならではの見せ方を考えています。たとえば過去には、東京駅に設置している自販機を苺デザインにラッピングし、『栃木とちおとめ 苺』を販売したことがあります。また、青森駅・新青森駅・弘前駅の3駅では現在も『青森りんごシリーズ』のみを販売する通称「りんご自販機」を設置しています。今年(2025年)5月には、地産飲料商品に特化したアキュアメイドのみを集めた自販機を東京駅に設置しました。
小室氏「X(旧Twitter)、Instagram、Facebookでも情報を発信しています。駅構内の自販機を大事なお客様接点としつつ、SNSを活用することで、今後は若年層の方にもアプローチしていけたらと考えています」
――どんな思いで新商品の開発を行っているのですか?
菊池氏「当社は鉄道会社のグループ企業ということで、やはり『沿線エリアの地域活性化』を大きなテーマとして掲げています。地域の産品でオリジナル飲料をつくり、お客様にその地域について興味を持っていただき、ひいてはその地に観光に訪れてもらう、という流れがつくれたら最高です。地域性があり、もはや定番と言えるほど売れている商品には『信州そば茶』(長野)、『愛媛みかん』『塩&柑橘』(愛媛)などがあります。また『山形県産 ラ・フランス』(山形)も、お客様から根強い支持をいただいております。ただラ・フランスは年によって収量が変わるため、商品の生産数も左右されるんです。今秋は4年ぶりに発売できました。見つけたら即買いをオススメします(笑)」
小室氏「信州そば茶、山形県産 ラ・フランスあたりは、ほかの飲料メーカーさんがなかなか企画しないジャンルです。お客様の間でも『一体、どんな味なんだろう?』と興味本位で買っていただくケースが多いようです。飲んでみたら美味しかったので、そのままリピート買いしている、という声もたくさんいただいております」
――新しいジャンルで商品をヒットさせると、飲料メーカーが参入してくるのではないでしょうか?
小室氏「当社では様々なメーカーさんから商品を仕入れており、ひとつの売り場をつくる仲間、という意識があります。メーカーさんと争う気持ちはなく、大手メーカーさんでは(販路などの関係で)つくれない商品をつくっていく、というスタンスでおります」
――このほか2025年には、どんな新商品を発売しましたか?
菊池氏「『青森りんご 20%』を10月14日に発売しました。実は前年の猛暑の影響で、今年は青森のりんごの収量が激減してしまったんです。100%にこだわると製造数が減少し、多くのお客さまに青森りんごのおいしさを伝えられないということで果汁率を20%に下げたわけですが、これはこれで飲みやすい、という声をいただきホッとしております。またJR西日本グループと共同開発した、岡山県産のぶどう『ピオーネ』果汁を使用した『ピオーネ炭酸』を8月26日に発売しました。ピオーネ果汁を3%使用した、ピオーネらしい酸味と甘みのバランスが取れたスッキリとした後味が特徴です」
――オリジナル飲料を通じて、地域の名産品を広域にアピールできるという点で、生産者の人にも喜ばれていますか?
菊池氏「はい。現地の生産者の方々が『もう少し販路を広げたい』というときに、当社を頼っていただければ非常にありがたく思います。それで思い出すのが、2012年度に発売した『福島あかつき』です。折しも東日本大震災があり、風評被害なども広がる中でしたが、acureで商品の発売を決めました。これは後から聞いた話ですが、農家の方々から『あのときは本当に嬉しかった』と言っていただけました。当社では今後も、そうした地域活性化に貢献していければと思っているところです」
――今後の新商品にも期待しています。ありがとうございました。






