そんな草なぎの魅力を引き出したのは、主に脚本家の橋部敦子と、演出家の星護、佐藤祐市、三宅喜重。プロデューサーの重松圭一を含めたスタッフの丁寧な仕事ぶりが光っていた。

橋部敦子の脚本は、感情の動きを繊細に表現しながら、生と死をストレートに問いかけ、それでいて希望を感じさせる仕上がり。特に「未来がなくても今がある」と覚醒したかのように秀雄が変わっていく描写は圧巻だった。さらに、秀雄の余命1年と生徒の受験までの1年をリンクさせたプロットも絶妙。生徒たちに「読まなかった本」のエピソードを語るなどの名シーンも多かった。

いわゆる“難病モノ”と言われる作品は多いが、当作のように「誰にでも起こりうる病気をベースにこれほど生と死を考えさせながら、重さを感じさせずに最後まで見続けられる」ドラマは少ない。橋部は『僕と彼女と彼女の生きる道』『僕の歩く道』を含む、『僕シリーズ』三部作をすべて手がけたこともあって、俳優・草なぎ剛を覚醒・確立させた重要人物の1人と言っていいだろう。

演出の3人も、穏やかなトーンの映像で「重すぎる」という離脱者を生まなかった立役者。草なぎ演じる秀雄の壮絶な姿を終始やわらかく、時にファンタジックな映像美を交えることで、死に向かっていく物語でありながら人生賛歌のようなムードを作っていた。

ちなみに三宅は、草なぎのカンテレ主演10作すべてで演出、演出助手、プロデューサーとして制作に携わっている。最も俳優・草なぎ剛を知り尽くしたクリエイターであり、今後もこの関係性は続いていくのだろう。

ネタバレを避けるが、最後まで見た人は焼き鳥の砂肝を食べたくなっているのではないか。そんなクスッと笑わせる、ほどよいユーモアも当作の魅力となっていた。

終了後にも生と死を考える番組を放送

そんな主演・草なぎやスタッフたちの奮闘に呼応すべく、助演たちも熱演を見せた。

当時、「かわいい女優」のトップ級だった矢田亜希子も「当作の秋本みどり役で演技の評価が変わった」と言っていいのではないか。それまで軽蔑していた秀雄に惹かれはじめ、彼に向き合い寄り添っていく芯の強い女性を演じたことで、役柄の幅が広がった感がある。特に父で学園理事長の秋本隆行(大杉漣)に結婚を反対された際の「死ぬとわかっているのは彼だけじゃない。世の中の男全員よ!」は当作を代表する名ゼリフだった。

秀雄の主治医・金田勉三(小日向文世)も視聴者を引きつけた一人。秀雄に「今君は生きている」と気づきをうながし、「僕には君の人生を支える義務がある」と宣言したほか、みどりとの関係に悩むと「君は病気を知ってどう変わった? 君の人生はどう動き出した?」と導くなど、包み込むような理想の医師そのものだった。

その他では、同僚教師の久保勝(谷原章介)と太田麗子(森下愛子)、教頭の古田進助(浅野和之)と理事長の秋本隆行。さらに生徒役の綾瀬はるか、市原隼人、内博貴、浅見れいなも、みずみずしい演技を見せた。なかでもメインの生徒を演じた綾瀬の存在感は大きく、「最初の代表作」と言っていいのではないか。

『僕の生きる道』の影響力は関連番組の多彩さにも表れていた。

まずドラマの放送期間中にラジオドラマ『もう一つの僕の生きる道』(ニッポン放送)を放送。本編に関連させたアナザーストーリーとして話題を集めた。

さらに放送終了後の約4か月後に『SMAP×SMAP特別編 僕とあなたの生きる道~one day』、7か月後に『ドキュメンタリー「僕の生きる道」をたどって』を放送。当作をきっかけに生と死を考えるムーブメントがあったことがわかるのではないか。ちなみに番組ホームページへのコメントを集めた書籍『もうひとつの僕の生きる道 ~BBSに寄せられた感動のメール集~』も出版された。

今秋の『終幕のロンド』も生と死について考えさせられる作品であり、『僕の生きる道』をオーバーラップさせて見ている視聴者もいるのだろう。草なぎとカンテレが絆を育んでいく上でターニングポイントになった作品であり、主題歌のSMAP「世界に一つだけの花」も合わせて、令和に語り継がれていくべきものであることに疑いの余地はない。

日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。