テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、19日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ ほか)の第40話「尽きせぬは欲の泉」の視聴分析をまとめた。

  • 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第40話より (C)NHK

    『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第40話より (C)NHK

後に数々の名作を残すことになる2人の出会い

最も注目されたのは20時11~14分で、注目度80.5%。滝沢瑣吉(津田健次郎)と勝川春朗(くっきー!)がケンカになるシーンだ。

耕書堂へやってきた北尾重政(橋本淳)が、蔦重(横浜流星)から渡された瑣吉の書いた原稿を読んでいると、勝川春章(前野朋哉)が弟子の春朗を連れて現れる。蔦重が富本本の仕事の礼を述べると、春朗は「たらたらしてやがんな、旦那!」と蔦重を指さして言った。春章によると春朗の言葉遣いは独特で今のは水も滴る男前と言いたかったそうだ。

気を取り直した蔦重は瑣吉の原稿を渡し、挿絵を依頼する。ひったくるように原稿を受け取った春朗は食い入るように読み始めた。その様子に気づいた瑣吉が近づき、けげんそうに尋ねる。「文字が読めるのか? こいつは」するといきなり春朗が屁を放ち、原稿を飲み込んだ。あっけにとられる瑣吉だが、「クソ以下だって言いてえのか?」と蔦重は解釈した。

一気に頭に血が上った瑣吉が春朗につかみかかると「やんなら表でやれ!」と蔦重が制する。春朗と瑣吉が耕書堂の前で身構えるとたちまち人だかりができ、野次馬たちがはやし立てる。「ほんとにこの2人に組ますのかい?」と春章が笑いながら蔦重に尋ねると、「へえ」と、蔦重は自信ありげにうなずいた。「まぁ仲が悪けりゃ競い合うじゃねえですか」後に数々の名作を残すことになる2人はこうして出会った。

  • 『べらぼう』第40話の毎分注視データ推移

    『べらぼう』第40話の毎分注視データ推移

「揃いも揃ってキャラが濃すぎる」

注目された理由は、瑣吉と春朗という2人の新キャラに視聴者の視線が集まったと考えられる。

蔦重と鶴屋喜右衛門(風間俊介)は、今後の仕事の依頼のために山東京伝(古川雄大)を訪ねるが、手鎖を受けた京伝は及び腰だった。しかし京伝の妻・菊から瑣吉を紹介される。瑣吉はかなりの自信家だが、蔦重は手代として耕書堂で面倒を見ることになる。

ある日、みの吉(中川翼)が瑣吉に手を焼いていると、勝川春章が弟子の春朗を連れてきた。相当に奇人である春朗と瑣吉。個性爆発の2人は早速衝突する。SNSでは「今まで人柄柔らかかったりお堅くて面白い武家作家先生ばっかり見てきたから、態度のでかい瑣吉は新鮮だな」「馬琴も北斎も揃いも揃ってキャラが濃すぎるな」「喧嘩するほど仲が良いって言うしいいコンビかもね」とインパクト強めの2人にコメントが集まった。

滝沢瑣吉は後の曲亭馬琴で、戯作者・読本作者。代表作は『椿説弓張月』と『南総里見八犬伝』で、後者は28年かけて完成した全98巻の大長編だ。馬琴は校正に厳しく資料収集にも熱心で、文学的完成度を追求した姿勢は後世の作家にも影響を与えた。さらに、ペット好きでもありカナリアや十姉妹、猫、虫などを飼っていたほか、庭に池を掘って金魚や鯉を放し、季節の行事を家族と楽しんでいた。偏屈者といわれていたが、家庭内では温厚で世話好きな一面もあったようだ。

一字の誤りも許さないという信条を持ち、執筆よりも校正に時間をかけていた。日記を毎日つけ、執筆前には必ず前日の記録を確認するという徹底ぶり。馬琴は晩年視力を失うが、義娘である路に代筆をさせ、口述で作品を完成させたという逸話がある。

瑣吉を演じる津田健次郎はアンドステアに所属する大阪府出身の54歳。大河ドラマは『べらぼう』が初出演だ。主に声優として活躍していたが、2020年度前期のNHK連続テレビ小説『エール』での出演をきっかけに俳優としての活躍が増加した。ブレイクのきっかけとなったアニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』では主人公・武藤遊戯の最大のライバル・海馬瀬人を演じた。遊戯を演じたのは鶴屋喜右衛門を演じる風間俊介。かつてライバルを演じた2人の競演にSNSではファンが沸き立った。勝川春朗は葛飾北斎が若年期に使用していた雅号だ。

春朗は勝川春章の門下として浮世絵を学び、春章の流派である勝川派の様式に則った作品を描いていた。春朗時代の作品は、役者絵や美人画が中心で勝川派の伝統を踏襲している。春朗という雅号は春勝の「春」と春章の別の雅号である旭朗井の「朗」を合わせたもので、師から大きな期待を寄せられていた。葛飾北斎という雅号が有名だが、生涯で30回以上名を変えている。中には鉄棒ぬらぬらという、なかなかいかがわしいものもあります。晩年には画狂老人卍というインパクト抜群な名で活動していた。さらに生涯で93回も引っ越しをしていた。

春朗を演じるくっきー!は、吉本興業に所属する滋賀県出身の49歳。大河ドラマは『べらぼう』が初出演となる。お笑いタレントとして以外にも肉糞太郎の名義で画家としても活動しており、海外でも高く評価されている。北斎を演じるにはピッタリだ。