(左から)巨人の阿部慎之助監督、阪神の藤川球児監督、DeNAの相川亮二監督(写真:産経新聞社)

 2025年のレギュラーシーズンが終わり、12球団の“通信簿”は出そろった。勝者も敗者も、いま求められているのは“次の一手”――ドラフト戦略だ。明確になった課題、埋まらないポジション、そして獲りに行くべき逸材。セ・リーグ6球団はどんな青写真を描いているのか。本対談では、各球団ファンのライター・編集者と今季を振り返りつつ、ドラフト戦力について議論した。(文・Shuya)【実地日:10月16日】

 

 司会:Taki(編集)

 

 巨人:田中凌平(ライター)

 DeNA:Taki(編集)

 阪神:交告承已(ライター)

 

読売ジャイアンツ(リーグ3位・70勝69敗4分)

[caption id="attachment_235619" align="alignnone" width="530"] 読売ジャイアンツの阿部慎之助監督(写真:産経新聞社)[/caption]

課題点:岡本の後釜候補、左腕リリーフの高齢化、先発投手陣の枚数

 

・チーム打率.250  (リーグ1位)

・チーム防御率2.95 (リーグ3位)

・先発防御率3.18  (リーグ4位)

・救援防御率2.60  (リーグ2位)

・失策数78     (リーグ6位)

・盗塁数53     (リーグ6位)

 

 ■Taki:今季成績は70勝69敗4分でリーグ3位。最終的に貯金1で終えましたが、ファン目線から見て今季の戦いぶりはいかがでしたか?

 

 ■田中:結果自体は悔しいですが、状況を考えると「よくやった」という面もあります。岡本和真選手の長期離脱、そして戸郷翔征投手の不調。投打の軸となるべき2人がうまく機能しない中で、Aクラスに入れたのは良かったと思います。

 

 一方、外野が固定できなかった点は課題です。中山礼都選手が外野に挑戦して結果を出しましたが、トレイ・キャベッジ選手のエラーなどが目立ちました。

 

 先発では山﨑伊織投手が本当に頑張ってくれましたが、井上温大投手、赤星優志投手、横川凱投手、堀田賢慎投手ら、毎年「今季こそ」と期待される世代がもう一段伸びきれませんでした。“20代半ばのひと伸び不足”が投打に表れました。

 

 ■Taki:先発左腕を見ると、突き抜けた存在がいない印象です。

 

 ■田中:計算できる左がフォスター・グリフィン投手だけになりがちで、そのグリフィン投手も途中離脱があったのは痛かったですね。岸田行倫捕手との相性も良く、登板内容、防御率も良好でしたし、彼の離脱は響きました。

 

 ■Taki:救援陣は8回大勢、9回ライデル・マルティネスという鉄壁リレーで、救援防御率はリーグ2位と高水準でした。一方で、左のリリーフの高齢化が気になります。

 

 ■田中:左のリリーフは中川皓太投手が奮闘してくれました(FA去就は不透明)。石川達也投手は先発からロング含むリリーフに回って貢献しましたが、安定して任せられたのは中川投手だけ、という印象です。

 

 アルベルト・バルドナード投手や高梨雄平投手も、波がある投手です。終盤に宮原駿介投手が出てきたのは朗報ですが、もう少し若い左の中継ぎが台頭してくれると心強いですね。

 

 

 ■Taki:今季の課題を踏まえ、ドラフトで補強したい最優先ポイントは?

 

 ■田中:岡本選手がポスティングで移籍する可能性があるので、内外野を問わず長打力のある野手が必須です。立石正広選手(創価大)が本命と考えていますが、シーズン終盤で先発ローテーションに苦しんだ側面もあるため、竹丸和幸投手(鷺宮製作所)や中西聖輝投手(青学大)といった即戦力投手も考えられるでしょう。

 

 もしドラフト上位で野手を獲れれば、赤星投手や井上投手の上積みに期待もできるので、将来性のある高卒投手を2〜3位で取りたいですね。将来性という意味では、大阪桐蔭の森陽樹投手、神村学園の早瀬朔投手に注目しています。エドポロ・ケイン選手(大阪学院大)は、身体能力が高くて面白い素材だと思います。

 

 ■Taki:捕手陣は、最年少が来季25歳の山瀬慎之助捕手。高卒捕手の指名も検討余地があるのでは?

 

 ■田中:いてくれると理想ですが、今年は長打の野手と若手投手の優先度が高いと考えます。昨年は育成ドラ1で坂本達也捕手も獲得していますし、山瀬捕手も来季でまだ25歳。岸田捕手、甲斐拓也捕手、小林誠司捕手、大城卓三捕手と、他球団でも正捕手を争える顔ぶれが揃っています。

 

 個人的な話となりますが、小林捕手の今季CSでの二塁打に物語を感じました。昨年のCSで菅野智之投手(オリオールズ)と組んだ際、レフト線の打球がファウルになり勝利を逃しました。その悔しさを経て、今季は大舞台で結果を出してくれました。ただ勝利に結びつかなかった分、来季は“勝ち”までつなげてくれるはずなので、まだまだ期待しています。

 

 ■Taki:自分はDeNAファンですが、小林捕手は“嫌なところで打つな”と思いました。あのライト線、昨年のファウルが頭をよぎったので余計に…。

 

 ■田中:今季の小林捕手は、喜び方からして違いました。ベースを叩く勢いで全身で喜んでいて、本心からの喜びだと伝わりました。その気持ちを来季の“勝ち”に結びつけてほしいですね。

横浜DeNAベイスターズ(リーグ2位・71勝66敗6分)

[caption id="attachment_235591" align="alignnone" width="530"] 横浜DeNAベイスターズの相川亮二監督(写真:産経新聞社)[/caption]

課題点:先発の枚数(特に左)、リリーフ陣の不安定感、宮崎の後釜

 

・チーム打率.247  (リーグ2位)

・チーム防御率2.94 (リーグ2位)

・先発防御率2.74  (リーグ2位)

・救援防御率3.37  (リーグ6位)

・失策数69     (リーグ3位)

・盗塁数66     (リーグ3位)

 

 ■Taki:今季のDeNAは、打撃陣が苦しみながらもリーグ2位。先発陣はアンドレ・ジャクソン投手、アンソニー・ケイ投手、東克樹投手の三本柱が奮闘してくれました。その結果としての順位とも言えます。

 

 ただ、救援防御率はリーグ6位で、救援陣の課題は大きいと感じます。特に左の中継ぎが少なく、リリーフの弱さが順位に響いたのではないでしょうか。ちなみに今季のDeNA打線、皆さんから見て「怖い」と感じましたか?

 

 ■チャッピー加藤:いや、うちはかなり負けましたからね、DeNAに。その分が借金になった感じです。阪神には勝ち越してるんですけどね(笑)。

 

 ■Taki:唯一、阪神に勝ち越したのが中日でしたね。

 

 ■チャッピー加藤:対DeNAは8勝17敗。つまり、DeNAが2位になったのはドラゴンズのおかげとも言えます。しかも8試合は1点差負け。要するに接戦をものにされたわけで、個人的にはDeNAの救援陣に力を感じました。競り負けが多かった分、DeNAが上にいったという印象です。

 

 ■Taki:一方、DeNAは巨人に大きく負け越すシーズンがここ2年続いています。それでもCSでは勝つ。巨人ファンから見てDeNAはどんな存在なんでしょう?

 

 ■田中:結果としては勝ち越していますが、打線は怖いです。特にタイラー・オースティン選手、牧秀悟選手、宮﨑敏郎選手が揃っている時は、本当に下位打線まで気が抜けません。勝ててはいますが、いつもヒヤヒヤして見ています。

 

 

 ■Taki:こちらとしては、巨人戦は勝てるイメージがありません...(笑)。特に井上投手と山﨑投手を苦手にしており、この2人に負けている分が大きいのではと思います。来季は巨人、阪神、この2チームをどう倒していくかが鍵になるでしょう。

 

 先ほども触れましたが、今季はジャクソン投手、ケイ投手、東投手の三本柱が引っ張ってくれました。救援陣は山﨑康晃投手、森原康平投手らが30代半ばに差しかかり、主力の高齢化も気になります。FAの森原投手、ローワン・ウィック投手の去就次第では、リリーフ陣はさらに厳しくなりそうです。

 

 一方、捕手陣は松尾汐恩捕手、山本祐大捕手を筆頭に若手・中堅・ベテランがバランスよく揃い、しばらくは安泰と感じます。野手陣は強打者が揃っていますが、主力の宮﨑敏郎選手などが30代後半を迎えているため、次世代の大砲候補は必要です。外野では若い右打者が蝦名達夫選手しかおらず、補強ポイントの1つかなと思います

 

 さて、ドラフトの話に移ります。課題は先発・リリーフ含めた投手陣、そして宮﨑選手の後釜候補が必要かなと思います。

 

 そこで1位指名してほしいのは、法政大の松下歩叶選手。右の大型三塁手で、宮﨑選手の後継者として最適だと思います。チームには井上絢登選手もいますが、競わせる意味でも松下選手の獲得は有効だと思います。

 

 立石正広選手(創価大)のケガで票が松下選手に集まる可能性もありますが、2年前は度会隆輝選手を引き当てていますし、思い切って行ってほしいです。

 

 先発は助っ人頼みで足りない部分もあるので、もし松下選手を外した場合は、明治大の毛利海大投手、神奈川フューチャードリームスの冨重英二郎投手といった左腕を狙うのが理想です。また次世代の中継ぎ候補、右の外野手、特にエドポロ・ケイン選手(大阪学院大)らが残っていればぜひ指名してほしいですね。

阪神タイガース(リーグ1位・85勝54敗4分)

[caption id="attachment_235590" align="alignnone" width="530"] 阪神タイガースの藤川球児監督(写真:産経新聞社)[/caption]

課題点:主力野手の世代交代、佐藤輝明の後釜、右の強打者

 

・チーム打率.245 (リーグ4位)

・チーム防御率2.21(リーグ1位)

・先発防御率2.35 (リーグ1位)

・救援防御率1.96 (リーグ1位)

・失策数57    (リーグ1位)

・盗塁数100    (リーグ1位)

 

 ■Taki:史上最速優勝にふさわしいシーズンで、85勝54敗。ファン目線で見ても圧倒的な強さを感じましたか?

 

 ■交告:正直、うまく行きすぎた感はあります。その分「ドラフトでしっかり補強しないと」といけないと思います。シーズン途中に7連敗があって采配への批判も出ましたが、才木浩人投手と村上頌樹投手という2本柱がローテを守り抜いて、リリーフ陣の負担を軽減してくれました。

 

 クリーンアップもほぼ全試合出場で結果を残しましたし、リリーフ陣も石井大智投手、及川雅貴投手、岩崎優投手らが安定しています。桐敷拓馬投手はやや疲労が見えましたが、ジョン・デュプランティエ投手ら外国人含めた全員が機能して、理想的なシーズンを過ごせたと思います。

 

 ただFAや佐藤輝明選手の去就など、不安要素もあります。全員が好成績を残した反動で来季は厳しくなるかもしれないし、対策もされるので「来年も楽勝」とはいかないと思います。

 

 ■Taki:今季は巨人に17勝8敗と大きく勝ち越しました。田中さん、巨人ファンとしてはかなりストレスだったのでは?

 

 ■田中:実は巨人は、阪神だけでなく広島にも大きく負け越しています。特にビジターが鬼門で、甲子園とマツダスタジアムでは独特の雰囲気に飲まれている気がします。

 

 ■Taki:それぐらい阪神の強さが際立ったということですよね。その中で、交告さんから見てチームの課題点を挙げるとしたら?

 

 ■交告:今季の成績だけ見れば課題は見えにくいですが、不安はあります。まず大山悠輔選手の長打力が少し落ちてきていること。そして近本光司選手の存在感です。

 

 外野は人数がいますが、甲子園で守れる中堅の守備力を持つ選手は替えがききません。主力が130試合以上出続けた今季はうまく回りましたが、複数人が離脱すれば一気に崩れかねません。

 

 また、主力が30歳を超えてきており、即戦力を取ってもレギュラーを奪えるかは微妙です。一方で高卒をじっくり育てる時間もあるかは疑問です。つまり、「主力依存を減らし、黄金時代をどう持続させるか」が最大の課題ですね。

 

 

 ■Taki:二塁・中野拓夢選手、中堅・近本選手、一塁・大山選手といった主力も30代に入りつつあり、世代交代の必要性は感じますね。

 

 ■交告:阪神は大卒や社会人出身を軸に編成しているので、循環を意識しないと一気にガタつく可能性があります。ただ、藤川球児監督は過去に編成に携わっていた経験もありますし、チーム内で意識を共有できているのが強みだと思います。

 

 ■Taki:ではドラフトに関して。最優先の補強ポイントはどこでしょう?

 

 ■交告:やはり佐藤輝明選手が抜ける可能性があるので、その後継になれる長距離砲が必要です。立石正広選手(創価大)はスケールの大きい右打者で、最優先で指名してほしい存在です。外れた場合は松下歩叶選手(法政大)に行ってほしいです。

 

 ■Taki:立石選手は無論、松下選手も競合しそうですね。

 

 ■交告:2位まで残ってくれればと思いますが、甘いでしょうね(笑)。阪神は来年のドラフトで、正捕手である坂本誠志郎の後継として、渡部海捕手(青山学院大)などの指名も視野に入れるかと思います。なので、今年の1位指名は立石選手で行くと思います。

 

 ■Taki:「近本選手の後継者」という点では?

 

 ■交告:(個人的には)来年の明治大・榊原七斗選手に期待しています。なので今年は、佐藤輝明選手や中野選手の後継を優先すべきだと思います。

 

 もちろんエドポロ・ケイン選手(大阪学院大)のようにセンターを守れる身体能力があれば魅力ですが、競合が多そうなので無理に行かなくても良いかなと思います。近本選手もまだ3年は主力でやれると思います。

 

 ■Taki:つまり今年は野手、特に長距離砲を最優先でということですね。

 

 ■交告:そうですね。阪神はここ2年連続で投手を(上位)指名してきました。もちろん、甲子園を本拠地にする以上、投手は重要です。それでも、立石選手のようなスケールの大きな野手がいれば必ず獲りに行くべきです。

 

  三塁の補強も必要ですし、右の強打者は特に欲しいです。外野手も(長打を打てる)左打者が前川右京選手しかいないので、DH制導入も見据えて長打を打てる選手を加えたいですね。

 

 ■Taki:井上広大選手あたりが、一軍で覚醒してくれれば良いですね。

 

 ■交告:そうなんです。残っているかわかりませんが、秋山俊選手(中京大)など三拍子タイプも欲しいです。阪神は俊足巧打の左打者が少ないので、取れれば良い補強になります。とはいえ、最優先はやはり立石選手ですね。

 

 ■Taki:結論は「立石選手最優先、外れたら松下選手」。強豪チームらしい贅沢な指名になりそうですね。リーグ王者の阪神の指名には、最注目したいと思います。

 

 

【了】