「結核」と聞いて自分には関係ない、昔の病気だと思う人もいるかもしれません。でも実は今でも国内で感染・発症して亡くなる人がいる危険な病気なのです。実際に今年8月、福岡県の日本語学校で17人が結核に感染、うち3名が発症する集団感染が報告されています。
今回は結核の症状や風邪との違い、受診する時の目安、予防法などをまとめました。結核を正しく知って予防と早期治療をしましょう。
■肺結核とは?
肺結核は、「結核菌に感染して肺に発症した状態」のことを指します。
結核菌に感染すると、体内で増殖して「肺結核」や「腸結核」「腎結核」などを引き起こします。日本では結核患者のうちの約8割を肺結核が占めています。
<結核にかかって発症するまで>
結核には、次のような流れで感染が広がって、発症します。
1.結核患者の咳やくしゃみによって、結核菌が混ざったしぶきが飛び散り、それを周囲の人が吸い込む
※吸い込まれた結核菌の多くは、鼻やのど、気管支の繊毛運動によって体外へ排出されたり、免疫機能によって排除されたりします。
2.排出・排除されなかった結核菌に感染する
※その後もたいていは感染しても免疫力によって増殖を抑えられ、発症しません。
3.免疫力で結核菌を抑え込めなかった場合、感染後6カ月~2年ほどかけて結核菌が増殖して発症する
※高齢者の場合は体内に長期間残ってきた結核菌が増殖し始めて発症することもあります。
4.結核菌が増殖・発症したのが肺であれば肺結核、腸なら腸結核、腎臓なら腎結核を発症することになる
<国内で1万人ほどの結核患者>
2023年に肺結核を含む結核になった人の数は10,096人もいます。そのうち1,587人が亡くなりました。2000年以降患者数は2.2~7.5%ずつ減り続け、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した2020~2022年には約10%減少しましたが、その後はほぼ横ばいとなっています。
年齢層を見ると、患者の約半数は高齢者ですが、都市部では20~30歳代の発病が少なくありません。漫画喫茶やインターネットカフェ、カラオケ、サウナなど不特定多数が集まる場所での感染例もあります。
■肺結核の主な症状
結核菌が肺の中に入り込んで増殖・発症すると、次のような全身の症状が2週間以上続きます。
・咳や痰が出る(血痰が出ることも)
・胸が痛む
・発熱する
・体がだるくなる
・冷汗が出る
・痩せる
特に「2週間以上続く咳」は結核の可能性があります。
■風邪や肺炎などとの違い
結核は、風邪や肺炎、インフルエンザと似ているようで次のような点が違います。
・ゆっくり進行する
・初期症状は自分でも気づきにくい(診断時には進行していることが多い)
・重症化して命に関わることがある
・重い後遺症が起こり呼吸不全や他の菌による肺炎になりやすくなる
■受診するタイミングは?
重症化を防ぎ周りの人に感染させないためにも、2週間以上咳が続いたり、急に体重が減ったりなどの気になる症状があれば必ず医療機関で診てもらいましょう。
■肺結核は治る病気?
肺結核を含む結核は、早期発見・早期治療をすることで治せます。まずは検査を行い、症状や体の状態に合わせて治療を進めます。
<肺結核の検査>
感染しているかどうかは、ツベルクリン液を注射して48時間後に判定する「ツベルクリン反応検査」、血液検査である「インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)」でわかります。また、発症しているかどうかは「胸部のレントゲン検査」、痰を取って調べる「喀痰検査」で確認できます。
<肺結核の治療方法>
かつては日本の死因のトップにもなっていた結核ですが、今ではほとんどの場合薬で治せるようになりました。服薬する薬を期間ごとに替えつつ半年ほどかけて服薬治療を進めていきます。
喀痰検査で痰の中にたくさん結核菌が含まれていた場合は、隔離しての入院が必要になることがあります。入院期間は平均で約2カ月です。菌が排出されなくなり他の人にうつさなくなったら退院して、通院しながら治療することになります。
なお、結核と診断されて治療を受ける場合「結核医療費公費負担制度」という医療費の公費負担を行う制度を受けられます。詳しくは各市区町村の保健所で確認しましょう。
■結核を防ぐためにできること
肺結核を含む結核は予防接種や免疫力を高めることで感染・発症をある程度予防できます。
<結核の予防接種>
BCGを接種することにより、結核の発症を52~74%、重篤な髄膜炎や全身性の結核を64~78%程度予防することができるとされています。BCGワクチンの接種時期・回数は生後5~8カ月の間に1回で、このワクチンの効果は10~15年ほど続くと言われています。
<普段の生活でできる予防方法>
これは、すべての病気の対策に通じることですが、結核についても同じく次のことを心がけましょう。
・睡眠を十分に取る
・適度な運動を続ける
・バランスの取れた食生活をする
・禁煙する
・定期的に健康診断を受ける
■肺結核は過去の病気ではない
肺結核を含む結核は今でも毎年10,000人以上の患者がいて1,500人ほどが亡くなる病気です。症状は咳や痰、発熱など風邪やインフルエンザに似ていますが、咳が2週間以上続くのが結核の特徴です。普段から予防を心がけ、咳が2週間以上続いたり急に痩せたりしたら医療機関を受診しましょう。
最後に肺結核に関して、呼吸器内科の専門医に聞いてみました。
「結核って昔の病気じゃないの?」と思っていませんか?
実は今も日本で毎年多くの人がかかっており、私たちのすぐそばにある感染症なのです。結核は「結核菌」という細菌によって引き起こされ、主に肺に感染して「肺結核」となります。結核菌は、咳やくしゃみによって空気中に放出され、同じ空間で長時間過ごすことで周囲に感染が広がる可能性があります。初期症状は咳や微熱、体重減少など風邪に似ており、気づかれにくいのが特徴です。特に「咳が2週間以上続く」場合は注意が必要です。
治療は抗結核薬を組み合わせて6カ月以上継続する必要があり、途中でやめてしまうと再発や薬が効かない耐性菌が生まれることもあります。周囲に感染を広げないためにも、早期発見・早期治療、そして途中でやめずにしっかり治しきることが、本人と周囲を守るカギになります。
また、高齢者施設や医療機関、学校などでは、ひとたび感染が起こると集団感染につながるおそれがあります。咳が長引く方や体調に不安がある方は、早めの医療機関受診を心がけましょう。
長引く咳やだるさ、微熱―その症状、見過ごしていませんか?
「いつもと違う」と感じたら、ためらわずに受診を。
結核は今も誰にでも起こり得る病気です。

