ドクタートラストは9月2日、「2024年度ストレスチェック全業種データ分析レポート」を発表した。同レポートは、2024年度にストレスチェックを受検したおよそ56万人(1,777の企業・団体)における集団分析データをもとに作成された。
総合健康リスク
総合健康リスクとは、企業や団体の中で仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題のリスクを示す指標のこと。「上司・同僚からのサポート」リスクおよび「仕事の負担・コントロール」リスクという2つの指標をかけ合わせた数値となる。
総合健康リスクが高い業種は「運輸業・郵便業」、「医療・福祉」、「宿泊業・飲食サービス業」、一方で総合健康リスクが低い業種は「不動産業・物品賃貸業」、「公務」、「情報通信業」だった。
業種別・リスクランキング
前述のとおり、総合健康リスクは、「仕事の負担・コントロール」リスク、および「上司・同僚からのサポート」リスクという2つの指標をかけ合わせた数値から算出される。以下の図は、業種別に「仕事の量・コントロール」リスク、「上司・同僚からのサポート」リスクを示したものとなる。
総合健康リスクを算出する1つ目の指標「仕事の負担・コントロール」リスクは、個人ごとの仕事量の負担と、仕事量をいかにコントロールできているか、そのバランスがストレスに及ぼす影響を示している。このうち「仕事の負担」リスクは、仕事の量・処理速度・熱量などを問う設問、「仕事のコントロール」リスクは、仕事をする際に自分の裁量で業務内容や進め方、時間配分などを調整できるか、その自由度を問う設問から構成されている。「仕事の負担・コントロール」で健康リスクが最も高かったのは、「宿泊業・飲食サービス業」、次いで「生活関連サービス業・娯楽業」、「医療・福祉」だった。
総合健康リスクを算出する2つ目の指標「上司・同僚からのサポート」リスクとは、職場の上司や同僚とのコミュニケーションがストレスに及ぼす影響を示している。この指標においてもっとも不良だったのは「運輸業・郵便業」、2位は「製造業」だった。 「運輸業・郵便業」、「製造業」は他の業種とくらべて業務を一人で行うケースが多いため周囲とのつながりを感じにくい、拠点が複数あり管理職と物理的な距離があるなどの特性から、サポートの有無が従業員のストレスに影響を与えている可能性がある。
高ストレス者率ランキング
高ストレス者率とは、実際に受検をした人のなかで、高ストレス者と判定された人がどれくらいいるかを示した割合となる。2024年度に同社でストレスチェックを受検した企業・団体の高ストレス者率の平均は13.6%(受検者数555,956人より算出)だった。
高ストレス者率が高い業種は「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、以下「運輸業・郵便業」と続く。一方で高ストレス者率が低かった業種は、「公務」、「分類不能の産業」、「学術研究・専門技術サービス業」だった。
2年連続で高ストレス者率が高い業種
業種別に2023年度と2024年度の高ストレス者率を比較した。2年連続で高ストレス者率が高い傾向にあったのは「宿泊業・飲食サービス業」、「製造業」、「運輸業・郵便業」だったことがわかる。この背景には、不規則勤務(早朝・夜勤業務など)や対人ストレスが考えられる。「宿泊業・飲食サービス業」、「運輸業・郵便業」、「卸売業・小売業」などは昨年度より高ストレス者率が減少したが、全国平均よりも数値が高いため自社の課題や状況に合わせた対応をしていくことが必要とされる。
5年前とくらべて9割の業種で高ストレス者率が改善傾向
2024年度と5年前(2019年度)の高ストレス者率を業種別に算出した。5年間で高ストレス者率が増加したのは全15業種中1業種(宿泊業・飲食サービス業)、減少した業種は14業種だった。
5年前から高ストレス者率が増えた業種
以下の図は、5年前にくらべて唯一高ストレス者率の増加した「宿泊業・飲食サービス業」における高ストレス者率の推移となる。
2019年の「宿泊業・飲食サービス業」の高ストレス者率は14.1%、2024年は19.3%だった。高ストレス者率は2023年度よりは減少しているものの、5年前(2019年度)からくらべると5.2%増えていることがわかる。
厚生労働省が公表している産業別・企業規模別にみた雇用人員判断D.I.の推移によると、「宿泊・飲食サービス」における人手不足感は他の業種にくらべて強まっていることがわかっている。背景にはコロナ後のインバウンド景気による需要回復と人材確保のギャップが大きく、1人あたりの業務負荷がストレスに影響を与えているのではないかと推察される。社会情勢や業種特性によってどうしてもストレスの偏りが出やすい業種があるが、働きやすい職場づくりを構築していくためには働き方・業務分担の見直しや職場のコミュニケーション強化などそれぞれの職場の特性に合わせたケアをしていくことが求められる。
一方で、特に改善した3業種(情報通信業、生活関連サービス・娯楽業、金融・保険業)ではコロナ禍を機にテレワークによる柔軟な働き方になったこと、業務のオンライン化やAIの発展が身体的・精神的な負荷を軽減させた可能性がある。





