その上で脚本・演出のディテールを比べると、はっきりと違うところが見えてくる。
『昼顔』の設定や人物描写には「こういう人いる」「自分もそうかもしれない」「これは嫌だな」などと思わせるリアルさがあった。特に不倫に至るまでの描写は「もし自分だったら……」と考えさせる臨場感があり、軽い背徳感も含めて魅力の1つと言っていいだろう。
時給890円のパートでスーパーのレジ打ちをしながらマイホーム資金を貯めているが、夫の言動に物足りなさと寂しさを感じる紗和。研究職を挫折して教師になり、研究者となった妻にコンプレックスを抱き、満たされない裕一郎。さらに、そんな2人を取り巻く人物たちが絶妙なリアリティを醸し出していた。
子作りを避けるのに妻を「ママ」と呼び、ハムスターばかり溺愛する紗和の夫・笹本俊介(鈴木浩介)、たびたび訪れて孫の誕生を露骨にせがむ姑・笹本慶子(高畑淳子)、夫・裕一郎にマウントを取るような言動で家事嫌いの妻・北野乃里子(伊藤歩)、罪の意識なく俊介に言い寄る部下・長谷川美鈴(木南晴夏)。いずれもいい意味で生々しい嫌悪感を抱かせる人物造形だった。
一方、『愛の、がっこう。』は愛実の父・小川誠治(酒向芳)、カヲルの母・香坂奈央(りょう)という突き抜けた毒親と、ホストクラブ常連客のカリスマ社長・宇都宮明菜(吉瀬美智子)というエキセントリックな登場人物はいるが、リアリティよりも2人の純愛を引き立てるための枷(かせ)というニュアンスが大きい。
『昼顔』は不倫がバレてジワジワと追い込まれていく中盤から終盤にかけて、視聴率も話題性も右肩上がりでアップ。そもそも既婚ながら当時アイドル女優のトップをゆく上戸彩が体当たりで不倫妻を演じたインパクトもあって、年末の「新語・流行語大賞」にも選ばれるなど社会現象のようなムードがあった。
ちなみに、『愛の、がっこう。』はリアリティやインパクトこそ『昼顔』に及ばないが、一方で徹底して純粋な愛を描くことでジワジワと感情移入を誘っている。さらに「生きづらさを抱える男女が出会いによって一歩踏み出そうとする」というポジティブな物語は破滅に向けて進んだ『昼顔』とは真逆。令和を生きる現代人に合わせた制作陣の柔軟な対応力を感じさせられる。
いずれにしても、やはりオリジナルのラブストーリーは見応えも話題性も十分。少なくとも「今、『愛の、がっこう。』を見ていて、『昼顔』を見たことがない」という人に文句なしで見てほしいと勧めたい作品であることは確かだ。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。
