MBS・TBS系バラエティ番組『プレバト!!』(毎週木曜19:00~)が、14日の放送で500回の節目を迎える。芸能人の隠れた才能を専門家が査定し、ランキング形式で発表する“カルチャースクールバラエティ”の同番組は、2012年10月にスタート。以来、俳句、水彩画、生け花など、様々な分野でその才能を世に紹介し、日本民間放送連盟賞・テレビ教養番組部門優秀賞、放送人グランプリ・企画賞、橋田賞など、高い評価を受けてきた。
この13年を振り返り、いくつもの「想定外」や「発見」を目の当たりにしてきたと話すのは、総合演出の水野雅之氏。俳句とテレビの親和性や、MC・浜田雅功と俳句の先生・夏井いつき氏の相乗効果、さらには芸能人たちが短い紹介VTRでも本気で取り組む理由など、ここまで番組が続いてきた理由を分析してもらった――。
【季語】×【季語と関係ない12音】にあった企画作りの本質
――放送500回、おめでとうございます。この大台にたどり着いた心境は、いかがですか?
本当にこんなに続くと思っていなかったのでうれしいです。レギュラー化を想定して新番組を企画する時は、まず50週、つまり1年分のネタやテーマがあるか考えるんです。まさか500回を超えるとは。本当に想定以上です。
――以前、当時日本テレビの橋本和明さん、フジテレビの木月洋介さんと鼎談してもらった時に、企画の「埋蔵量」という点で『プレバト!!』は優れた番組だという話がありました。
橋本さんが「人間の創造力は無限だから、ネタの埋蔵量を気にしないで番組を作れているところが『プレバト!!』の強さ」と言ってくれましたよね。「埋蔵量」を常に意識しているレギュラー番組の演出家じゃないと出てこない角度から褒めてくれてました。
実際、『プレバト!!』は13年間、「埋蔵量」を気にしたことがないんです。1年に1回同じお題を出しても、芸能人が違えば俳句もアートも全然新しいものが生まれてくるし、もっと言うと芸能人が再び同じお題に挑戦することになっても成長が見られるし。
――例えば俳句については、江戸時代から長く愛され続けるエンタメとしての強さも感じますか?
番組に人気が出たあとに結果論的に気づいたんですけど、俳句のフレームって、めちゃくちゃ優れた「企画」で、テレビとの相性がすごくいいんです。五・七・五に言葉を入れなきゃいけない、季語を入れなきゃいけないというのは制約にも感じるけど、企画でもある。制約なしで自由に今の季節に感動したことを伝えて、って言われるよりも、季語を入れて17音で作るという制約があるほうが考えやすいですよね。しかも俳句の制約(≒企画)はとてもシンプル。『学校かくれんぼ』も『イカゲーム』もシンプルな遊びを大がかりな企画に仕立ててヒットしましたが、『プレバト!!』も構造的には同じかなと思います。
――俳句を通して番組企画の解像度を高めたというのは、興味深いです。
あと、俳句を一句作る時も企画作りと似てるんです。「才能アリ」の俳句を作るコツは【季語の5音】と【季語と関係ない12音】を掛け合わせること。その意外な掛け合わせが、読み手の心を動かすことがあるんです。これは企画作りでも同じで、例えば【グルメ】に正解の数値にどこまで近づけるかという【チキンレース】を掛け合わせたのが『ゴチになります』です。
さらに、掛け合わせる要素が、作り手の強みや実体験だと企画は強くなるんです。非日常な空間に放り込まれた若者に密着する【ウルルン滞在記】を手がけたディレクターのスキルと【恋リア】を掛け合わせると『LOVE TRANSIT』や『オオカミちゃん』のような話題作が作れる。エチオピアのコンソ族と暮らした22歳の玉木宏さんの「別れの朝…」の心境に迫ることと、非日常的な共同生活の最終日にする愛の告白を撮ることは、企画の核が同じですよね。
この掛け合わせは歴史的に様々な分野で成立してきた企画術で、厳島神社は【鳥居】×【海】だし、キャスター付きバッグは【バッグ】×【車輪】だし。この本質的な企画の構造に僕が注目するようになったきっかけが【季語】×【季語と関係ない12音】だったんです。
――水野さんにとって俳句が、一つのヒット企画にとどまらない大きな出会いになるとは、想定外だったんですね。
俳句は心の内をさらけ出さなきゃいけないものだと思い込んでいたので、元々は苦手なジャンルだと思ってました。でも、俳句は徹底的に自分の気持ちを言語化しないんですよね。「楽しい」とか「悲しい」といった心情は全部季語に込める。ポジティブな気持ちなら晴天の季語を選ぶし、気分が沈んでいる気持ちを表現したいなら雨の季語。困難を超えて今があるなら虹の季語に込めることができる。
あと、情景描写に徹するのはディレクターが普段やってるカット割りと一緒です。真夏の広い公園から手元のミネラルウォーターにズームインすれば喉の渇きを表現できるし、カップラーメンの残り汁のアップを見せた後で、夜中のビル群に切り替えたら孤独な残業を表現できる。夏井先生も、添削で「映像を切り替えるカメラワーク」という言い方をしてくれて、俳句の面白さをすんなり理解できたのは大きかったです。
