今回のフジテレビ問題では、スポンサーが次々と撤退する状況にまでなってしまった。そして改革プランが出され、『検証 フジテレビ問題~反省と再生・改革~』が放送されるまでに。このことは、テレビ局内で雇用主と労働者が対話するようになる契機としては良かったのかもしれないが、「他方で怖いこともあります。それが“ハラスメント冤罪”が生まれることです」と、佐藤弁護士は現在起こっている最新の問題を挙げた。

「ハラスメントは絶対にいけない、ハラスメントがあったら申告しなければならないという流れがいたずらに加速し、会社側が加害者とされる方々の話を丁寧に聞かずして、一方的に処分されてしまった方々からの相談が相次いでいます。私はハラスメント問題においても、公明性のある公正な手続きをするために、異議申立て制度を含めてしっかりと考えていかなければならないとダメだと考えています。そうした手続きがなく懲戒処分となったり、まだ処分過程であるのに誹謗中傷がされたりするのは、明らかな人権侵害です。被害者からの言葉だけでなく、しっかり他の証拠や関係者の話の信用性を踏まえた上で慎重に判断しなければなりません」

被害者にはもちろん寄り添わなければならない。だが、透明性がないままで誹謗中傷を受けるのは、これもまた人権侵害だ。過渡期である今、問題は山積み。しかし、これをきっかけにテレビに明るい未来が来るかもしれない。

「テレビは今まで培ってきた力で質の高いコンテンツが作れる。エンターテインメントの問題を扱っている弁護士の立場でいえば、もちろん現場ではハラスメントとか人権侵害が起きないことが大前提にはありますが、良い演者さん、良い制作者さん、視聴者の皆さんと本気でまた一から面白いコンテンツ作りをしていく。そうしていくことによって、またテレビというコンテンツが見られていくのではないでしょうか。人間関係が薄れてきている時代だからこそ、皆でテーブルやこたつを囲みながらテレビを見るといった、そうした昔ながらの時代に戻ってくるのではないかと、個人的には考えています」

●佐藤大和
1983年生まれ、宮城県出身。07年三重大学卒業、09年立命館大学法科大学院卒業、同年に司法試験合格。11年から都内の法律事務所に勤務後、14年にレイ法律事務所設立、代表弁護士に。17年に日本で初めて芸能人の権利を守る団体「日本エンターテイナーライツ協会(ERA)」を発起人として立ち上げ、共同代表理事。21年には、文化庁「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」委員を務め、文化芸術分野のガイドラインの作成にも尽力している。主な著書に『二階堂弁護士は今日も仕事がない』(マイナビ出版、共同執筆)など。