お堅い家庭で育ったまじめすぎる高校教師・愛実(木村文乃)と、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲル(ラウール)というすれ違うことすらないはずの2人が、大きな隔たりを越えて惹かれ合っていく、フジテレビ系ドラマ『愛の、がっこう。』(毎週木曜22:00~ ※TVer・FODで見逃し配信)。愛実の交際相手である銀行員・川原洋二を演じているのが、中島歩だ。
朝ドラ『あんぱん』(NHK)で演じたヒロインの夫・次郎で演じた誠実な役から一転、二股交際の上に「2人同時に付き合わないと燃えない」と言い出す川原に、視聴者からは「クズ」「気持ち悪い」と非難の嵐で、強いインパクトを残している。
そんな今回のキャラクターに、どのような意識で臨んでいるのか。さらに、役者の道を歩むことになった経緯や、学生時代に取り組んだ落語の経験が生きることなどを、ロートーンボイスとスローテンポな独特の語り口で教えてくれた――。
西谷弘監督×井上由美子脚本に喜び
今作は第1話の冒頭から驚かされたという中島。「タイトルバックまでの時間が完璧なんですよ。全員のイントロダクションが終わって、“こういう話が始まる”という西谷(弘)監督の演出力がすごいなと思いました。最後の屋上での愛実(木村文乃)とカヲル(ラウール)のやり取りをたっぷり描く大胆さも。もともと(西谷監督が演出した)『白い巨塔』が大好きだったのですが、想像していたものを全然上回っていて、この作品に参加できて良かったなと思いました」と喜びを感じたという。
同じく『白い巨塔』を手がけた脚本の井上由美子氏がつむぐセリフにも、「1話では生徒の夏希ちゃんが“学校も親も適当すぎんだよ。褒めておけば私が思い通りになると思ってる。カヲルは違う。私のことバーカって抱きしめてくれた”と言っていたのが、刺さりましたね。コンプライアンスとか社会的な締め付けが厳しくなっていく中で、人間のワイルドな部分を素直に受け止めている。そういうところが、お嬢様学校に通う子には響いたんだろうなと思いました」と捉えた。
出演者、スタッフがアイデアを出し合う現場に充実感
爽やかな外見と柔らかい物腰、一流大学を卒業して大手銀行に勤務するというハイスペック男子な川原だが、愛実に対してサラッと失言してしまう、抜けた一面も。この役作りにあたっては、「“滑稽でかわいらしく見せたい”というオーダーで、アイスコーヒーをこぼしちゃうとか、そういう演出をつけてくれました。所々でかわいく見えるような演出があるので、それを滑稽に見えるようにというのを、気をつけて演じています」と語る。
クランクインの前に設けられたリハーサルの日では、「川原が最初に愛実さんと会うシーンを何度もやってみたのですが、僕も西谷監督もすごく楽しくなってきちゃって(笑)、撮影も楽しくなりそうだなと思いました」と振り返った。
そんな川原は、別の女性と関係を持つ裏の顔も見せており、視聴者からは「クズすぎる」「気持ち悪い」など、ドン引きの反応が。中島自身も「やっぱり変わってるなと思います。2話にあった“君と付き合うためには、妻という女が必要なんだ”というセリフは、全然意味分からないですね(笑)」と捉えながら、「西谷監督とも話して、サイコパスに見えたら大失敗になってしまう。一人の人間としての説得力がないと、見ている人がどうでも良くなってしまうので、そこも意識しています」と明かす。
アドリブを含め、俳優部、演出部、撮影部がそれぞれアイデアを出し合い、すり合わせたり、膨らませたりする現場だといい、「その時間が充実しているので、今回はすごく楽しんでいます」と取り組めているそうだ。