女優の今田美桜が主演を務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で主人公・のぶ(今田)の夫・若松次郎を演じている中島歩にインタビュー。夫婦シーンの裏話や次郎との共通点などについて語ってもらった。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けている。
2014年度前期『花子とアン』以来、11年ぶり2度目の朝ドラ出演となった中島。のぶにとって初めてのお見合い相手で、夫となった若松次郎を演じている。
次郎はとても穏やかで優しく、数々の名言を生んできたが、印象的なセリフについて中島は「全部と言っていいぐらい。ずっとポジティブなことを言うのがいいですよね。逆に悲しさもあって。『戦争が終わったら何がしたいですか?』など、未来を想像させる一連のセリフが印象に残っています」と語る。
次郎はのぶのどんなところに惹かれたのか。その解釈も明かした。
「のぶは自分が抱えている矛盾や悩みを次郎に言いますが、それが純粋すぎる故の悩みという感じがして、軍国教育に夢中になってしまうのも純粋だからだし、そういう清らかなところに惹かれたのではないかなと思います。そして、演じながら気づいたのですが、この人に傷ついてほしくないと思い、彼女を守ってあげることが人間の良心を守ることなのではないかとさえ思いました。なので、守ってあげなければならないという気持ちになりました」
夫婦シーンでは、限られたシーン数の中で関係性が深まっていることをどう表現するかということにこだわったという。
「次郎が航海に出ているという設定もありますが、夫婦生活のシーンが少ないので、関係が積み上がっていくというのを見せるのが難しい。次のシーンではかなり時間が経っていて、その間に何度も会っているというのは描かれていないので、台本に書かれていることはもちろんですが、それ以外のところで関係が深まっているというのをすごく考えて演じました」
距離が縮まっていることが伝わるように演出担当とも話し合いながら工夫したそうで、「呼び名が『のぶ』になっていたり、帰ってくる芝居で服を脱がせてもらうとか、そういう細かい芝居で2人の日常があるということを表現したり、彼女に対する感情表現が親しくなっていたり。あと冗談っぽいものを入れたりしました」と説明した。
また、次郎の考え方は自身と重なる部分があると語る。
「生きることは楽しむべきことだというポリシーが僕にはありますが、それが次郎にもあるのかなと思いました。今の平和ボケした僕からしたら、こういうことを言いたいという、現代の人の観点がすごく次郎に反映されている気がします。あとヤムおんちゃん(阿部サダヲ演じる屋村草吉)にも。ヤムおんちゃんは未来人に見えます(笑)」
本作を通じて戦争の恐ろしさも実感。「戦争で自分の好きなことや好きな人、人間関係などがあっという間に壊されていくということに気づきました」と述べ、「今、戦争だらけで、新聞を読んでいたらすぐのぶと次郎の状況が想像できてしまって、すごく怖いことだなと思います。だからこそ、このストーリーを皆様に届けるべきだと思いました」と今だからこそ伝える意義があると話した。
1988年10月7日生まれ、宮城県出身。2013年、舞台『黑蜥蜴』で俳優デビュー。初主演映画『グッド・ストライプス』(15)で第7回TAMA映画賞最優秀新進男優賞、映画『いとみち』(21)、『偶然と想像』(21)で第35回高崎映画祭最優秀助演俳優賞を受賞。近年は、ドラマ『不適切にもほどがある!』(24)、『海のはじまり』(24)、映画『サイレントラブ』(24)、『四月になれば彼女は』(24)、『ナミビアの砂漠』(24)、『HAPPYEND』(24)、『敵』(25)などに出演。映画『ルノワール』が現在公開中。2026年放送の大河ドラマ『豊臣兄弟!』で浅井長政役を演じる。
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