「今まで味わったことのない複雑な感情というか」
そう語ったのは、俳優の吉沢亮。観客動員510万人、興行収入71.7億円を突破している主演映画『国宝』(公開中)の舞台挨拶に登壇し、同作の撮影終了時に感じた“思い”について明かした。
映画『国宝』の特大ヒットを記念して、25日に都内で舞台挨拶が開催された。この日は主演の吉沢をはじめ、メガホンを取った李相日監督のほか、音楽を担当した井口理(King Gnu)、原摩利彦氏もサプライズで登壇した。
上映後には観客との質疑応答の時間が設けられ、会場には涙を浮かべながら質問する観客の姿も。そんな中、吉沢は客席からの声に真剣に耳を傾け、観客からの感想一つひとつに頭を下げながら丁寧に感謝を伝える。その姿勢には、観客との距離を大切にする俳優としての誠実さがにじんでいた。
「クランクアップしたときの思いは?」という問いに対し、吉沢はこう返す。
「僕の感情としては、今まで味わったことのない複雑な感情というか……」
そして、その理由についても記憶を遡りながら、丁寧に言葉を紡ぐ。
「今までは大変な作品をやったら、解放された達成感が強いんですが、今回は達成感とも違うし、寂しいとも違うし……色んな感情がぐちゃぐちゃになって涙が出てきそうという不思議な感覚だったのを覚えています」
最後には、「何も言葉が出てこなかった。複雑な感情でした」としみじみ。そのときの様子を、李監督も印象深く覚えていたという。
「スッと涙が流れていました。撮影中は苦しいとかしんどいと言う人ではなかったし、彼の中で喜久雄という人間を内に抱えながら数カ月間過ごしていたので、撮影が終わったからすぐに抜けるものではないし、それを持っている状態で涙が落ちていて、非常に印象的でした」
“役を抱えたまま”クランクアップを迎えた吉沢。その感情の揺らぎは、観客にも確かに伝わっていたようだ。スクリーンの中だけではなく、その舞台裏にもまた、静かに心を動かす物語があった。