1988年10月にテレビアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)の放送がスタートした当時からアンパンマンの声優を務めている戸田恵子が、『アンパンマン』の原作者・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルにした連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)に高知出身の代議士・薪鉄子役で出演している。やなせさんと親交が深かった戸田にインタビューし、やなせさんモデルの柳井嵩を演じている北村匠海の演技について話を聞いた。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、やなせさん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けている。
戸田は、やなせさん夫妻の物語を描く朝ドラの放送に喜びを感じている。
「この番組があるということ自体が本当にうれしくて、やなせ先生が生きていたらどんなにお喜びかなと思っていました。そんな中で、私にもオファーがあったことは本当にうれしく思いました」
そして、本作で改めてやなせさんの人生を考え、絵を描く才能が開花するまで全うした素晴らしさを感じたと語る。
「先生は弟の千尋さんが大好きで、自分より何もかもできると思ってリスペクトしていて、そんな千尋さんが先に亡くなってしまい、『なぜ才能のある千尋が死んで僕なんかが生き残って』という感じでずっと生きてこられたと聞いていました。そんな中でやなせ先生には絵を描く才能があって、開花するまでにとても時間がかかったけれど、そこを全うしてきたことが素晴らしいなと思っていますし、暢さんとの出会いがとても大きかったなと、ドラマを通じて改めて感じました」
そんなやなせさんをモデルにした嵩を北村が演じている。
「北村さんと伺った時、私が個人的にファンだというのもあるのですが、めちゃめちゃいい男になったなと(笑)。やなせ先生も『いい男になったな』と天国で驚いていると思います」
また、北村が見事にやなせさんらしさを表現していると絶賛する。
「やなせ先生は人を思う気持ちがすごくある方で、いつも自分はさておきという感じで、控えめすぎるぐらい控えめで、そんなところを北村さんが演じられ、とてもよく描かれているなと思っています。先生のナイーブな感じを本当に上手に表現してくださっていて、奥ゆかしいというか“能ある鷹は爪を隠す”です。もっと出していいんじゃないかと、皆さんじれったい気持ちを募らせていると思いますが、そういうところも実に巧みに演じてくださっているなと思います」
さらに、「やなせ先生は華奢で、お顔の輪郭も違いますが、雰囲気がぴったりだなと思って見ています」と述べ、「それは北村さんの演技力だと思います。ルックスは全然違えど、それを上回る演技力で。びっくりです」と感嘆していた。
1957年9月12日生まれ、愛知県出身。小学5年生の時からNHK名古屋放送児童劇団に在籍し、1969年にドラマ『中学生群像』で子役デビュー。1974年にはあゆ朱美の芸名でアイドル演歌歌手デビュー。1977年に劇団・薔薇座に入団し、看板女優として活躍。1979年にアニメ『機動戦士ガンダム』のマチルダ・アジャン役で声優活動をスタートさせ、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(三作目)鬼太郎役、『きかんしゃトーマス』トーマス役、『それいけ!アンパンマン』アンパンマン役などを担当。女優としても活躍し、ドラマ『総理と呼ばないで』、『ショムニ』シリーズ、『ちゅらさん』、映画『ラヂオの時間』などに出演。
(C)NHK