2025年7月5日、ウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンオメガ』第1話「宇宙人がやってきた」が放送された。倉庫管理のアルバイトをしているコウセイ(演:吉田晴登)が出会った謎の青年(演:近藤頌利)は、突如地上に出現した正体不明の巨大怪獣に立ち向かうべく、身長50メートルの巨人に変身した。過去の記憶を失っている青年だが、戦い終わって自分の名を思い出し、コウセイに告げる。その名は……「オメガ」!

赤いマスク、赤いボディといったヒーローデザインのインパクト、頭部に備えた宇宙ブーメラン「オメガスラッガー」が変身アイテムにもなるユニークさ、そして、地上に姿を現した熱線怪獣グライムとの迫力満点のバトルシーンなど、見どころが詰め込まれた第1話。その放送終了直後というタイミングで、武居正能監督インタビューの「後編」をお届けしよう。

  • たけすえ・まさよし 1978年9月4日生まれ。山口県出身。日活芸術学院在学中から、数々の作品にスタッフとして携わる。ウルトラマンシリーズには助監督として『ウルトラマンコスモス』(2001年)から参加。『ウルトラマンオーブ』(2016年)より監督ローテーションに加わり、『ウルトラマンR/B』(2018年)『ウルトラマンデッカー』(2022年)ではメイン監督として手腕をふるった。

仲間と出会い「変革」する姿を描きたい

――『ウルトラマンオメガ』第1話「宇宙人がやってきた」が放送されました。前回のインタビューで武居監督からおうかがいした「今まで巨大怪獣が一度も出現していなかった世界観」そして「地球や地球人のことを何も知らないウルトラマン(オメガ)という設定」がぞんぶんに活かされ、リアルとワンダーが同居したエキサイティングな物語が展開していたと思います。本作の主人公、謎の青年(オオキダ ソラト/オメガ)を演じる近藤頌利さんの印象はいかがでしたか。

  • 本作の主人公・謎の青年(オオキダ ソラト/オメガ)(演・近藤頌利)

ソラトという役柄は、近藤くんの今までの俳優としてのキャリアがあってこそ、表現できた部分が大きいと思います。撮影が始まるまでに二度ほど役について話し合い、クランクインしてからもソラトをどう演じたらいいか、彼なりに芝居の「差し引き」をしながら作り上げていったようです。地球人とは異質な「宇宙人」なので感情を抑え気味に演じてもらったのですが、そうなると近藤くんの個性を殺すことになって、ちょっともったいない。最終的には、近藤くんの持ち味を活かしつつ、ソラトが「気のいいお兄ちゃん」的な存在になってくれたらいいなってところに落ち着きました。

――過去の記憶を失った宇宙人(オメガ)に振り回されつつ、面倒を見ることになるコウセイとのかけあいがコミカルで楽しい雰囲気を作りあげていました。コウセイと交流することにより、何も知らない状態のオメガがどんどん地球になじんでいくという展開なのでしょうか。

第2話の段階で、ラジオやスマホ動画などで言葉を覚えていったりしてますよね。知識レベルがどんどん上がっていって、わりと早いうちにコウセイよりも少し下の年齢……中学生くらいにはなっていきます。やがて高校生くらいまでレベルアップしていくかもしれないですし、終わり(最終回)にはどんなソラトになっているか……。そんなソラトの成長・進歩を見守ってほしいですね。

――宇宙人の青年は、第1話のラストでようやく「オメガ」という本名(?)を名乗りますが、まだ「オオキダ ソラト」という地球名もなく、当初は謎だらけの存在として描かれていますね。

最初のうちからすべてを説明するつもりはないのですが、第1話の段階でもソラトが「ヒーロー」としてカッコいい部分は打ち出しておきましょう、ということになりました。ふだんは世間知らずでトボケていても、オメガに変身するその瞬間、一気に「カッコいい」スイッチが入る。戦いが終わったらもとのトボケた感じに戻るんですけど、最後に自分の名前(オメガ)をコウセイに告げるところだけビシッと決まるという。

――巨大変身をして怪獣(グライム)と戦ったオメガが、人間に戻るとものすごく「お腹がすく」という場面がありました。運動をすれば空腹になるという、子どもたちの共感を生みやすい設定だと思います。

それは意識的に描写しています。パターンとしては昔から『ドラゴンボール』の孫悟空みたいに「腹減った~」と言いながら大飯を食らうというのがありますよね(笑)。スタッフの間で、愛されるキャラクターってこういうことだよねって、悟空を例に挙げるとイメージを共有しやすかったです。

――子どもでも知っているような常識的な社会の仕組みをぜんぜん知らないオメガの面倒を見て、彼をサポートするポジションにあるコウセイの存在感も大きかったですね。吉田晴登さんをコウセイ役に起用した経緯を教えてください。

  • 記憶を失った宇宙人・オメガの面倒を見る青年・コウセイ(演・吉田晴登)

コウセイのキャスティングはなかなか難しかったんです。最初はもっとツンケンしているというか、無頼漢のイメージがあったんですけれど、吉田くんに決まったことによってコウセイの性格が少し丸くなり、結果的に良いところに落ち着いたって感じがしました。

――第2話「俺と宇宙人と学者さん」から若き生物学者・イチドウ アユム(演:工藤綾乃)が登場します。ソラト、コウセイ、アユムの3人で怪獣事件に立ち向かっていく展開になるのでしょうか。

  • 2話より登場する若き生物学者・イチドウ アユム(演:工藤綾乃)

コウセイが「アユ姉(ねえ)」とニックネームで呼ぶように、アユムは彼にとって「少し賢いお姉ちゃん」的存在です。そしてソラトが「ちょっとやんちゃなお兄ちゃん」。兄と姉のどっちが上かわからないけど、未熟者のコウセイがアユムから叱られるとか(笑)。年齢差こそありますが、上下関係のない3人だと思って作っています。ソラト、コウセイ、アユムはそれぞれ自分なりに「やりたいこと」は何なのか、見つけようとしています。人間的成長というよりは「変革」。何かを自分で成し遂げて一人前になるということではなく、仲間と出会って行動をともにする中で、お互いが影響し合ってどんどん変わっていく姿を描きたいんです。

パートナー怪獣「メテオカイジュウ」も登場

――事前に発表されていますが、コウセイはオメガに味方するパートナー怪獣「メテオカイジュウ」を操るようですね。隕石のような形状(スリープモード)から戦闘形態(カイジュウモード)に変形するというユニークな設定で、登場するとたちまち人気を集めそうです。

メテオカイジュウについては私たちは当初カプセル怪獣を出そうとしていました。それが「こういうキャラクターを出したい」と提案されたものです。変形の仕組みをうかがったとき「こんなに難しいことが可能なんですか」と尋ねてしまったくらい見事な変形をするので、登場を楽しみに待っていてください。

  • パートナー怪獣「メテオカイジュウ」の「レキネス」。左はカイジュウモード、右はスリープモード

――第1話では熱線怪獣グライム、第2話は水棲毒獣ドグリドと、ウルトラマンシリーズならではの独創的な巨大怪獣が登場し、怪獣ファンの興味をひいていますね。

新シリーズだから、できるだけ「新怪獣」を作りましょう、というのは毎年掲げているウルトラマンシリーズの命題ですね。これまでの作品でもけっこう頑張っていましたから『オメガ』でも怪獣の魅力を打ち出そうと努力しています。

――オメガに倒されたグライムのマブタが鳥類のように下から上に閉じるカットがありました。こういう細かな描写のおかげで、巨大怪獣も地球に棲息する「生物」の一種なんだという説得力が増している気がします。怪獣の「生物感」へのこだわりは、過去作品以上に強くなっているのではないですか。

近年のウルトラマンシリーズでは本編監督が特撮の演出も務めることがほとんどですし、そういうリアル表現なども積極的にやっていきたいと思っています。越(知靖)監督が近ごろ、怪獣の首をどのように動かせばリアルに見えるかを熱心に研究していて、その成果が『オメガ』で観られるかもしれません。ご期待ください。

――新怪獣が出る一方で、過去のウルトラマンシリーズで活躍した「人気怪獣」の再登場も今後あったりするでしょうか。

どのエピソードにどんな怪獣を登場させるかについては、プロデューサーの判断が大きいです。もちろん新怪獣だけでなく、過去の人気怪獣の出番もあると思いますよ。今後の放送スケジュールを見ていただけると気づかれるかもしれませんが、今回登場しているのは地球上のどこかから姿を現した怪獣ばかりで、宇宙怪獣が出ていません。それはなぜなのか? 何か秘密があるのか? ……わかったらいいですね(笑)。

――気になります! ところで、日常描写で印象的なのが、コウセイが勤務する倉庫の中で流れているラジオ番組での「マサっさん」と「レミ」の軽妙なかけあいです。あの2人のトークがそのまま予告ナレーションとして使われているのも面白かったですね。

最初はテレビ番組にしようという案もありましたけど、テレビだったら常に映っている「番組」を作らないといけなくて、なかなか労力が高い。その点、ラジオは音だけなんとかすればいいので、効率的にもラジオがいいかなと。また、倉庫管理のお仕事を事前に見学したとき、みなさんラジオで音楽を聴きながら作業をされていることを知り、ラジオのほうが自然と思い設定を作りました。

次回予告がマサっさんとレミの会話になっているのは、プロデューサーとたまたま考えが一致して「次回予告もラジオ番組にしようよ」と決まったから。予告編って、作品世界の「当事者」となって話すから、次回の内容を説明するスタイルがほとんどでしょう。しかし今回はラジオ番組のパーソナリティがしゃべっている設定で、事件の当事者じゃない。だから一見関係ない話題のようで、話題を掠らせるところがミソです(笑)。そこが味わいになっていれば嬉しいですね。

――快調なスタートを切り、今後の展開がひたすら楽しみな『ウルトラマンオメガ』。改めて武居監督から、本作を作り上げた現在の「手ごたえ」を聞かせてください。

まだすべてのエピソードが完成したわけではないですけれど、番組を見つめ直すと、各話のバランス配分もよく、僕たちの狙いどおりの作品として見事に「着地」できていると思います。よい内容になっているとスタッフ・キャスト一同、自信をもってお送りできる作品です。僕自身「ウルトラマン」に関わって長いですが、ウルトラマンシリーズをこういう切り口から作ろうというアイデアは、探せばまだまだたくさん残っているはず。『ウルトラマンオメガ』で、僕たちが「ウルトラマンの可能性」を広げることができたんじゃないか……。そう思えるくらいの「挑戦」をしていますので、ぜひお楽しみいただきたいです。

  • 『ウルトラマンオメガ』本ビジュアル

『ウルトラマンオメガ』は2025年7月5日土曜午前9:00~より、テレ東系6局ネット 他にて世界同時期放送&配信開始。国内ではTVer・ネットもテレ東・TSUBURAYA IMAGINATION・YouTubeウルトラマン公式チャンネル他で配信を行う。

(C)円谷プロ (C)ウルトラマンオメガ製作委員会・テレビ東京