自転車通勤をしていると、気づきや発見が少しずつ増えていく。車道は歩道よりもずっと走りやすい。そもそも自転車は車道を走るのが基本だが、抵抗感のある人が多いのも事実。しかし、車道にはスマホを見ながら歩いている人もいないし、急に進路を変えるランナーもいない。そんな小さな当たり前を学べるのが自転車通勤である。

前回は1,000円以下で手に入る、ちょっとした不便や不安を解決してくれるアイテムを紹介した。今回はステップアップして3,000円以下のおすすめアイテムを3つ紹介しよう。

ニトリルグローブ

  • SHOWA 709Bメカニクスギア。50枚入りで2,000円以下で買える

    SHOWA 709Bメカニクスギア。50枚入りで2,000円以下で買える

自転車専門店のメカニックが手にしているグローブ。どこにでもあるゴム手袋のようにみえるが、実はメカニック作業に適した素材(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)が使われている。

耐油性、耐薬品性、強度、フィット感に優れるのが特長で、医療、介護、食品加工業界でも使われている。一般的なゴム手袋と比べると少し高価だが、ラテックスアレルギーの心配もない。通称は「ニトリルグローブ」。ホームセンターに行けば、簡単に入手できる。

ニトリルグローブは用途によって表面の加工が異なる。メカニック用は表面に凹凸があり、油分で滑りやすい状態でも、しっかりと作業がしやすい。通勤時に使うシーンは、チェーンが外れてしまったときや、パンクしてインナーチューブを交換するとき。

ニトリルグローブは引張強度が高く、貫通にも強いので、ガラス片などがタイヤ内側に刺さっていないかチェックするときに指先をケガするのも防いでくれる。

タイヤの脱着作業、特にチューブレスレディ(TLR)のような外すのが困難なときも、グリップ力が高いので作業性が大きく向上する。さらにタイヤ内部のシーラント剤(乳化ゴム)で手が汚れることもないので、TLRタイヤを使っている人はマストアイテムである。

  • 709Bは突起がピラミッド形状に改良された

    709Bは突起がピラミッド形状に改良された

筆者が使用しているのは「SHOWA 709Bメカニクスギア」。指と手のひらには新開発のピラミッド形状滑り止めが採用され、肉厚も旧型比で0.05㎜ほど厚くなって、0.2㎜に。素材の配合や設計を見直すことで作業性が向上している。

ひとくちにニトリルグローブと言っても、多くの種類がある。手の形状によっても最適な製品は異なるが、ゴムの肉厚が厚すぎると作業性が落ち、薄すぎると破れやすくなる。質感も製品によって大きく違う。

基本的には使い捨てなので、耐久性よりはフィット感を優先して選ぼう。価格はピンキリだが、高くても50枚で2,000円以下で購入できる。サドルバッグや輪行袋、工具箱に入れておくといいだろう。

ベル

  • Knog オイクラシックは定価2,970円とギリギリだがアンダー3,000円

    Knog オイクラシックは定価2,970円とギリギリだがアンダー3,000円

活躍しない傘やレインコートには、もったいないというよりも、ラッキーアイテムのような愛おしさがある。自転車のベルも、活躍するシーンが少なければ少ないほどいいアイテムだ。

ベルは自転車に必須のアイテムである。重箱の隅をつつくようなことを言えば、青森、宮城、静岡、佐賀県の4県は、道路交通法施行細則で装着義務が記載されていない。なので、装着されていなくても、すぐさま警察のお世話になることはない。しかし、道路交通法54条には「警笛鳴らせ」の道路標識がある地点では、すべての車両が警音器を鳴らさなければならないため、事実上は必須アイテムと言ってもいい。

ベルは歩行者や前走車に警告を与えるものではない。危険な場所やシチュエーションで身を守るために存在するのだ。だから、使わないで済むなら、それがいちばん。

でも、朝夕の慌ただしい時間を走る通勤ライドでは、ベルを鳴らしたほうがいいシチュエーションも少なくない。Knogのオイクラシックが優れているのは、装着時の存在感の薄さだ。パッと見では見逃すぐらいスマートなデザインで、デビューと同時にヨーロッパ最大の自転車ショー、ユーロバイクショーでアワードを獲得。

シティサイクルのベルの音にイラッとした経験を持つ人もいるだろう。人を追い抜くときは、ベルを鳴らすのではなく声をかけるのが基本である。ただ、オイクラシックは音もいい。車のクラクションは車格に応じて音質が違うが、オイクラシックの音は風鈴のように余韻が心地よく、自転車の車格も上がったように感じられる。

タイヤレバー

  • クランクブラザーズ・スライダータイヤレバーは1,690円

    クランクブラザーズ・スライダータイヤレバーは1,690円

朝の通勤ライドで避けたいのがパンク。十分に空気を入れ、走行ラインが選べるようになると、パンクする回数は減る。それは経験とテクニックで防げるトラブルの一つだからだ。

とはいえ、走っている距離や時間が長くなれば、パンクする確率は高くなる。異物を取り除き、インナーチューブを交換するだけなので、スムーズにタイヤが脱着できれば難しい作業ではない。

問題は脱着がスムーズにできるか否か。そこで活躍するのがクランクブラザーズ社のスライダータイヤレバーだ。特長はタイヤをリムにはめやすくするスライダーが付属すること。このスライダーの存在が、このタイヤレバーを特別な存在にしてくれる。

作業終盤、リムにタイヤ(ビード)が入れにくくなったら、クリップ状のパーツ、スライダーをリムにセット。すると、タイヤの位置が安定し、簡単にタイヤがリムに収まる。

  • タイヤを装着するときに活躍するスライダー

    タイヤを装着するときに活躍するスライダー

パンク慣れしている人なら、装着されたタイヤは馴染みが出ているので、パンク修理に多くの時間を必要としない。だが、新品タイヤを装着するときや、初心者の人には、このスライダーのありがたみが身に染みるはず。