ウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンオメガ』が2025年7月5日からテレビ放送を開始する。本作のヒーロー・ウルトラマンオメガは、赤い宇宙ブーメラン=オメガスラッガーをシンボルに持つ「究極」の名を冠したウルトラマンである。

昭和、平成、令和と3つの時代にわたり、幅広い世代から愛され続けている永遠のヒーロー・ウルトラマンとその仲間たち。その歴史に新たな1ページを刻む本作でメイン監督を務め、意欲的な作品世界とヒーローキャラクターを構築する役割を担った武居正能監督に『ウルトラマンオメガ』の魅力や注目ポイントをうかがった。

  • たけすえ・まさよし 1978年9月4日生まれ。山口県出身。日活芸術学院在学中から、数々の作品にスタッフとして携わる。ウルトラマンシリーズには助監督として『ウルトラマンコスモス』(2001年)から参加。『ウルトラマンオーブ』(2016年)より監督ローテーションに加わり、『ウルトラマンR/B』(2018年)『ウルトラマンデッカー』(2022年)ではメイン監督として手腕をふるった

メイン監督作品3作目、「ウルトラマンの物語」を作りたい

――ウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンオメガ』の放送がいよいよ始まろうとしています。武居監督にとって『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(2018年)、『ウルトラマンデッカー』(2022年)に続く、3作目のメイン監督作品になります。まずは本作の企画が立ち上がったときのお話を聞かせてください。

『デッカー』のときとは状況が違い、ヒーローのデザインも、ストーリーもまったく決まっていない初期段階から関わらせていただきました。始まりは昨年(2023年)の夏から秋あたりで、次のウルトラマンをどうしましょうか、みたいなころにお声がかかりました。

――ほぼ何も固まっていない状態から世界観やキャラクターのディテールを創造していくというのは、監督にとってもかなりやりがいのある作業ではないですか。

以前の作品も、メインでやっていない作品も、やりがいはありましたけれど、今回は3回目のメインということで自分の中にも蓄積ができていましたし、これまでやってきた"ウルトラマン"の戦略的な部分や、商品展開のことまでも考えながら企画を煮詰めていきました。作品に携わる大人たちとここは譲ることができますがこちらは譲れませんなんて頑張ったりして、力を合わせて魅力的なウルトラマン像を作ろうと努力しました。

――『R/B』では個性的なデザインTシャツを企画販売するセレクトショップ、『デッカー』では下町の老舗せんべい屋と、ヒーローの拠点、実家として日常的な場所を設定するのが武居監督の持ち味のように思います。今回もそういった日常的、庶民的な要素を大事にされているのでしょうか。

いわゆる「防衛チーム」を主軸にはしないことだけは、早くから決まっていました。これは商品戦略のためでも予算の都合でもなくて、ひとえに現在の社会状況を意識しての判断です。

テレビのニュースで、実際に海外で起きている紛争の様子が映し出されている今、日本だけでなく、世界中の子どもたちに明るく楽しい特撮ヒーロー作品を提供するためには、あまりものものしい空気を作らないほうがいいんじゃないか、というのが大きな理由です。だからといって、それで「ウルトラマン」が作りにくいとは思いませんでした。何もかもが決まっていないというのは、いかなる方向に内容を振っても大丈夫ってことですからね。

――『ウルトラマンオメガ』のテーマについて教えてください。

企画を進めるにあたって念頭に置いたのは、「ウルトラマンの物語」をちゃんと作りたいってことです。主人公・ソラトとウルトラマンオメガは同一人格で、姿が違うだけ。ポスタービジュアルでもソラトとオメガが並んで同じポーズを取っているでしょう。両者が同一の存在なんですよと、明確に示しているんです。

  • 『ウルトラマンオメガ』ポスタービジュアル

――宇宙人(ウルトラマン)が地球での「仮の姿」を取る際、地球人と融合する(初代)ウルトラマン、ウルトラマンA パターンではなく、宇宙人そのものが人間の姿に変身しているウルトラセブン、ウルトラマン80 パターンを採用したわけですね。

過去の分類でいえばそうなりますけど、今回のウルトラマンオメガでは、僕は彼のことを劇中で「ウルトラマン」と呼ばせていないんです。この作品世界の中にいる人々には、怪獣と戦ってくれる光の巨人を「ウルトラマン」と呼ぶ発想がそもそもないんです。

例えていうなら『機動戦士ガンダム』というタイトルの番組だけど、劇中でガンダムを「機動戦士」とは誰も呼んでいない(笑)。ソラトはあるきっかけで、自分の名前が「オメガ」だということを思いだします。彼がいかにしてウルトラマン的な存在になっていくのか、それはこれから始まるテレビ放送や配信をご覧になっていただいて、いろんなフタがあいてから興味を持ってもらいたいところですね。

ウルトラマンであってウルトラマンでない「オメガ」の赤い顔

――ウルトラマンオメガの姿を初めて見たときに驚いたのは、あの真っ赤な顔でした。かつて『ウルトラマンゼアス』(1996年)や『ウルトラマンZ』(2020年)の「ウルトラマンゼット ベータスマッシュ」といった赤い顔のウルトラマンは出てきましたが、それらとも雰囲気が違って、かなり「攻めた」デザインだという印象です。オメガのデザインについて、武居監督はどんな思いを込められましたか。

『ウルトラマンブレーザー』(2023年)のような斬新な方向性ではなくて、ウルトラマンらしさを残しながら、印象を変えることができないだろうかと、いろいろ頭を絞って考えた結果が、オメガの「赤」なんです。「ウルトラマンであってウルトラマンでない」、その回答として出てきたのが、オメガでした。赤いマスクというと、昔からのファンの方たちは『レッドマン』(1972年)などのイメージがよぎるかもしれませんが、それはそれでいいかなと。

  • 赤い顔が印象的な「ウルトラマンオメガ」

デザイン作業にあたっては、今までのウルトラマンファンの方々をギョッとさせたいという思いがありました。造形されたオメガのマスクを初めて見たときは、「もしかして、やっちまったかな」というわずかな不安もあったんですけど(笑)。ほんとうに冒険しちゃったなあ、マジで大丈夫かなあ。カッコいいんだけど、ウルトラマンという「柱」から外れすぎてるんじゃないか? と思いつつ、最終的に少々修整を加えて、当初よりはウルトラマンのイメージに「寄せた」ところはあります。スーツの着合わせをした瞬間は心配だったオメガですが、10分くらい見ていたら、僕も周りのスタッフも「これってカッコいいんじゃないの」って思えてきました。ポーズを決めてもらったら、よけいにカッコいい。長年、ウルトラマンの造形に携わってきたスタッフさんからもカッコいいと言ってもらえて、そのとき自信を持ちました。

――ウルトラセブンの必殺武器「アイスラッガー」を思わせる宇宙ブーメラン「オメガスラッガー」を武器だけでなく、変身アイテム共用にされた狙いを教えてください。

スラッガーを変身アイテムに、というのは僕から提案したことでした。最初から、武器アイテムをいくつも増やすのではなく、ひとつの武器でさまざまなスタイルに応用できればいいなという考えがあり、それじゃあスラッガーがいいだろうと。

  • 変身アイテムと武器アイテムを兼ね備えた「オメガスラッガー」

これまでスラッガーを頭につけたウルトラヒーローは「セブン」タイプの顔が多かったんですけれど、あえて「マン」の顔にスラッガーをつけ、外せば手に持って戦うことができる。これはカッコいいぞ、と思いましたね。

僕はウルトラセブンがアイスラッガーを「逆手」で持って戦うのが好きなので、オメガスラッガーも逆手持ちにしてもらいました。武器としてカッコいいスラッガーが、変身アイテムにもなれば、これはぜったい人気が出ますよって強く推しました。話し合いにより、ソラトがペンダントとして身に着けている「オメガメテオ」をオメガスラッガーに装填するとか、スラッガーのウイングが開いてオメガの胸のプロテクターと同じ形状になる、なんてことも実現しました。

――『ウルトラマンオメガ』の世界観は、第1話まで地球上に一度も怪獣が出現せず、ウルトラマンという概念もないとうかがいました。ウルトラマンシリーズを作る中で、そこまで現実的な設定を盛り込んだ例は非常に珍しいと思います。

あの世界にも「怪獣映画」はあるにはあるけれど、呼び方は「モンスター映画」とか「恐竜映画」になっているかもしれません(笑)。とにかく、巨大で凶暴な生物の脅威にさらされたことのない人々が、生まれて初めて「怪獣」の襲来を体験し、「怪獣」という言葉が広まるって設定にしたかったんです。今まで存在すらわからなかった「怪獣」がなぜ突然現れて、人々が認識するようになるのか。そこはメインのテーマではないのですが、そういったこともエピソードを重ねていくうちに「なるほどね」と思わせるような仕掛けを施しています。

――改めて、武居監督から『ウルトラマンオメガ』にかける意気込みを聞かせてください。

ストーリーやキャラクター設定を知った方たちから「新しい切り口ですね」「この手がまだあったか!」などと言ってもらえて、ああ僕たちのやってきたことがしっかりと響いているなと、安堵しているところです。そう思ってほしくて作ってきたわけですからね。

『ウルトラマンオメガ』は「ウルトラマンはなぜ地球を守るのか」が大テーマ。他のウルトラマンシリーズでも、ウルトラマンが地球を守る意義とは何か、問いかけながらやってきてはいるんですけど、真正面からウルトラマンに向き合い、その存在理由に焦点を当てるというのは、ずっと昔からチャレンジしてみたかったことです。そういった部分も意識していただきながら『ウルトラマンオメガ』を楽しんでください!

『ウルトラマンオメガ』は2025年7月5日土曜午前9:00~より、テレ東系6局ネット 他にて世界同時期放送&配信開始。国内ではTVer・ネットもテレ東・TSUBURAYA IMAGINATION・YouTubeウルトラマン公式チャンネル他で配信を行う。

(C)円谷プロ (C)ウルトラマンオメガ製作委員会・テレビ東京