エスエス製薬は6月9日、「頭痛の我慢に関する5カ国調査」を公開した。調査は2025年5月12日~5月19日、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、中国の18歳~69歳男女2500人を対象に、インターネットで行われた。
気候・気圧の変化の影響で頭痛が発症するのは5カ国共通
梅雨の天候の変化が大きいこの時期、頭痛を訴える人が増加することが予想される。
日本において、過去6カ月以内で頭痛を発症したことがある人のうち、「気候・気圧の変化の影響で頭痛が発症することがよくある・たまにある」と回答した人は70.8%にのぼった。また、5カ国全体でも同様の傾向が見られ「よくある・たまにある」は76.7%となり、気候や気圧の変化が国を問わず多くの人に頭痛の引き金となっていることが明らかになった。
5カ国における頭痛の我慢事情
「実際に頭痛が起きた際、我慢をすることはありますか」という質問については、日本において「頭痛を我慢することがよくある・たまにある」は77.2%となり、多くの人が頭痛時に我慢をしていることが明らかになった。他国の結果を見ても、中国80.0%、アメリカ76.8%、ドイツ79.0%、イギリス84.4%と、いずれの国でも7割以上が頭痛時に我慢をしており、"頭痛を我慢する"という行動は国を問わず広く見られる傾向であることがわかる。中でもイギリスではその割合が最も高い結果となっている。
また、我慢する理由として最も多かったのは「頭痛は(ある程度)我慢するものだと思っているから」(44.0%)、次いで「我慢しても生活に支障がないから」(38.8%)だった。これは、多くの人が"頭痛=耐えるべきもの"と無意識に捉えており、日常の中で深刻に扱われていない現状を反映していると考えられる。
「頭痛は我慢するもの?」日本人の意識と行動のズレが5カ国調査で明らかに
「ある程度の頭痛は我慢すべきだと思いますか?」という質問に対し、5カ国すべてで「とてもそう思う・ややそう思う」が多数を占めており、特にドイツではその割合が78.2%に達した。
一方、日本では「頭痛は我慢すべきではない」と考える人が40.2%と5カ国中で最も多く、"我慢は必ずしも正しいとは限らない"という意識が比較的浸透していることがわかった。
しかしその一方で、実際には77.2%の日本人が頭痛を我慢していると回答しており、"意識では否定していても、行動としては我慢している"という大きなギャップが明らかになった。
この結果から、日本は5カ国の中で"我慢すべきではない"という意識と"実際に我慢している"という行動の差が最も大きい国であることが浮き彫りになった。
また、"我慢は美徳"とされがちな日本だけでなく、他国においても「頭痛は我慢すべき」という価値観は根強く、国を問わず"我慢することが普通"という意識が共有されていることも見て取れる。
頭痛薬、日本は「服用しない」が5カ国最多
5カ国全体で見ると、頭痛薬を飲むまでの時間は「30分以上~1時間未満」(21.7%)が最も多く、次いで「10分以上~30分未満」(21.1%)となった。アメリカでは半数以上が30分未満で服用しており、他国に比べて頭痛を我慢する時間が短い傾向が見られる。一方、日本では「服用しない」と回答した人が17.8%と5か国中で最も多く、「薬を使わずに我慢する傾向が際立っている」ことが分かる。
「どの程度の頭痛で頭痛薬を飲むか」という質問に対しては、5カ国全体で見ると、「中等度の痛み(4~6)」で服用する人が最も多く49.7%、次いで「軽い痛み(1~3)」が30.3%だった。一方、ドイツでは「強い痛み(7~10)」で服用する人が28.8%と5カ国中最も多く、限界まで我慢してから服用する傾向がより顕著に表れている。
中国を除く4カ国では市販の頭痛薬による対処が主流
頭痛時の対処法についての質問では中国を除く4カ国では、頭痛の対処法として「市販の頭痛薬を服用する」が最も多い回答となった。一方、中国では「休養をとる」(68.4%)や「ストレッチやマッサージをする」(45.4%)といった対処法が「市販の頭痛薬を服用する」(40.8%)を上回る結果となった。
また、日本やイギリスでは「自然に治るのを待つ(=特に対処しない)」という回答が3割を超えていることが分かった。背景には、"無理をしてやり過ごす"姿勢や、"薬に頼らず様子を見る"という意識の強さを反映している可能性がある。
5カ国で約87%が頭痛による生活への支障を実感
調査の結果、5カ国全体で約87%の人が「つらい頭痛が日常生活に影響を与えている」と回答した。その内訳は、「とても影響を感じる」が32.2%、「やや影響を感じる」が54.7%で、ほとんどの人が何らかの支障を感じていることがわかる。
つらい頭痛による日常生活への影響で最も多かったのは「何もしたくない気持ちになる」(47.3%)で、次いで「仕事や家事に遅れが出る」(37.2%)、「憂鬱な気分になる」(29.2%)、「家事ができなくなる」(28.0%)が続いた。国別では、中国で「憂鬱な気分になる」と回答する割合が全体より高く、精神面への影響が強く現れる傾向が見られた。
育児への頭痛の影響は国ごとに大きな差
頭痛が育児のモチベーションに影響しているかについては国ごとに差があり、中国(88.1%)と日本(66.4%)では「影響がある」と答える人が多数派だった。一方、イギリスでは「影響がない」と答える人が多く(56.7%)、育児への頭痛の影響は国ごとに大きく異なることがわかった。
頭痛の我慢とその影響について
調査結果を受け、柴田護医師は次のような見解を示している。
柴田氏によれば、頭痛の原因は様々だが、時にはくも膜下出血のような生命を脅かす疾患が隠れていることもあるという。我慢することで重症化してしまい、最適な治療機会を逃すことも。最悪の場合は、命を落とすことも考えられる。
また、片頭痛の発作などでは、痛みが弱めのうちに痛み止めを使用したほうが、症状は早期に鎮静化するという。頭痛は単なる痛みにとどまらず、集中力低下や仕事の効率低下を引き起こす。気分が落ち込んで憂鬱になり、そのことがさらに頭痛を悪化させるという悪循環も生まれる。さらに、職場などでは、周囲の同僚の方にも不安を与えてしまうことも考えられる。このような観点から、頭痛を我慢することは望ましくないとする見解が示されている。
梅雨の頭痛への対処について
頭痛性疾患、特に片頭痛は環境変化やストレスなどの心的変化によって発作が誘発されることが知られている。今回の調査でも、気候・気圧の変化の影響で頭痛が発症すると回答した人は70.8%にのぼった。梅雨時は、気圧低下、温度上昇、湿度上昇などが頭痛発作を誘発したり、悪化させると考えられている。この時期によく見られる気分の落ち込みも頭痛に悪影響を与えるという。天候自体を変えることはできないが、外出機会の調整、薬の適切な服薬、リラクゼーション、ストレス要因の回避によって改善することは可能だという。さらに、柴田氏は、医療機関の受診も検討するよう勧めている。特に片頭痛に関しては、治療法の進歩により、これまで難しかった頭痛の予防も可能になってきているという。