竹野内は父親役の経験はあるが、育ての親を演じるのは今回が初めて。台本を読んでいる段階では、「どういう風に一言一言に重みをもたせたらいいのか」と悩んでいたという竹野内だが、嵩の幼少期を演じた木村優来と対峙したときに迷いがなくなったという。

「この言葉は子供たちに本当に伝わるのかなと不安でしたが、子役の子たちが本当に素晴らしくて、対峙したときに子供から教わることがとても多かったです。呼吸を合わせるというか、ちゃんと向き合って嵩に真っすぐ伝えればいいんだと思って演じました」

北村と中沢と対峙するときも、「真っすぐ伝える」という姿勢で向き合ってきたという。

「どの作品でも、台本を読んで頭でっかちに考えていたお芝居のプランは、現場でほとんど役に立たないことが多いんです。今回もまさにそうでした。北村くんはすごく繊細で、彼自身が持っている光と影というものがあって、木村くんを初めて見たときに北村くんの雰囲気を感じて、『あ、いける』と。そのまま切り替えていけるという手応えを感じました」

千尋役の中沢については「いまどきあの年齢では珍しいくらい瞳の奥が子供のような純粋な目をしている」と述べ、「北村くんもそうですが、共演していたときに、寛が投げた言葉をちゃんと受け止めて跳ね返ってくるものがすごくありました」と振り返る。

そして、北村と中沢に対してすっかり父性が芽生えていたようで、「まるで本当の息子のようにかわいい子たちだなと思って、一緒にお芝居するのがすごく楽しかったです。本当に兄弟のように見えてくるし、自分もこのぐらいの息子がいてもおかしくないわけで、親子を疑似体験できてとても楽しかったです」と目を細めた。

千尋と嵩を実の息子のように育ててきた寛と妻・千代子(戸田菜穂)。竹野内は「もちろん自分の子供がほしいという気持ちはあったと思いますが、千尋と嵩との出会いはそれ以上の大きなもので、2人にとって大きな財産なのではないかなと思います」と語った。

また、朝ドラの反響の大きさに驚いたという竹野内。「反響は想像していた以上に大きかったです。行く先々で『朝ドラ見てるよ』という温かい言葉をいただけて、これだけ毎朝多くの人々に楽しんでもらえてうれしいです」と笑顔を見せる。

そして、寛を通じて多くの学びを得たと言い、「本当に人格者で、分け隔てなくすべての人たちに愛情を持って親身に寄り添う姿勢というのは、今の時代にそういう心が必要だなと、寛さんから改めて学ばせてもらいました。人生のヒントになる言葉を与えたり、人格者ならではの周り全体をふっくら包み込むような人間性はとても勉強になりました」と語っていた。

■竹野内豊
1971年1月2日生まれ、東京都出身。1994年に俳優デビューして以来、数々のドラマ、映画等に出演。近年の主な出演作は、ドラマ『イチケイのカラス』(21)、WOWOW『さまよう刃』(21)、Netflix『THE DAYS』(23)、映画『シン・ウルトラマン』(22)、『映画 イチケイのカラス』(23)、『唄う六人の女』(23)、『四月になれば彼女は』(24)等。2022年には、京都国際映画祭にて三船敏郎賞を受賞した。公開待機作に、映画『雪風 YUKIKAZE』(8月15日公開)、映画『SPIRIT WORLD』(10月31日公開)がある。

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