西武鉄道は24日、西武新宿駅で行われた「サステナ車両」引継ぎ式の様子を報道関係者らに公開した。環境負荷の少ない他社からの譲受車両「サステナ車両」の1編成目となる8000系(元小田急電鉄8000形)は、5月31日から定期列車として営業運転を開始する。
「サステナ車両」は他社から譲受したVVVFインバータ制御車両を西武鉄道独自の呼称として定義。西武鉄道は2030年度までに車両のVVVF化100%達成をめざし、省エネルギー化を加速するため、新造車両と並行して「サステナ車両」を導入する取組みを進めるとしている。その1編成目として、2024年5月に小田急電鉄の8000形1編成を譲受し、主要な更新と車両デザイン変更など実施。国分寺線で営業運転を行う予定となっている。
5月31日の営業運転開始に先立ち、「サステナ車両」のデビューを祝したイベント「小田急8000形&西武8000系 ビフォーアフター乗りくらべ&撮影会」を5月24・25日に開催する。初日(5月24日)は約100名が参加し、海老名駅に集合後、小田急電鉄の8000形に乗車。撮影会も行われたという。新宿駅で降車した後、イベント参加者らは西武新宿駅へ移動。13時32分頃、「サステナ車両」8000系が同駅2番ホームに入線し、発車前に引継ぎ式が行われた。
「サステナ車両」の改造工事を実施した小田急エンジニアリング取締役社長の岩崎佳之氏(「崎」は「たつさき」)、西武鉄道鉄道本部車両部長の小川克弘氏をはじめ、小田急電鉄と西武鉄道の運転士・車掌も登壇。小田急電鉄の運転士・車掌から西武鉄道の運転士・車掌へ、鍵(オブジェ)の引渡しが行われた。西武鉄道の運転士・車掌が車両へ乗り込んだ後、イベント参加者らを乗せた「サステナ車両」8000系は13時39分、気笛とともに西武新宿駅を発車。岩崎氏、小川氏らが手を振り、列車を見送った。
引継ぎ式の終了後、西武鉄道の小川氏は感想を聞かれ、「この取組みの開始は3年前。当社にとって初めての取組みでしたので、成功するか不安でしたが、いまこうして形になり、お客さまを乗せて運転開始することができて、非常に安心しております」とコメント。車両改造にあたり、小田急エンジニアリングと連携したことに関して、「今回の事業のように車両を改造する事例はまれであったものの、小田急の車両の構造などといったことは、私ども車両部門にとって非常に技術的な参考になりました」と語った。
小田急エンジニアリングの岩崎氏は、「西武と小田急の間で、設計思想や技術情報を共有しながら作業を進める過程の中で、相互の理解がさらに深まったと考えております。その結果、小田急の8000形が西武鉄道のサステナ車両として生まれ変わり、これからまだ活躍できることを大変うれしく思っております。双方の技術・知識を結集して良い車両ができ、その車両が地球環境に貢献する、このような良い好循環が生まれたのだと思います」とコメント。「今日ご覧いただいたサステナ車両8000系は、長い間、小田急線の安全と快適を牽引してきた名車両です。万全な整備で西武鉄道にお届けしましたが、この車両が西武沿線のお客さまの期待にもしっかりと応えてもらえるだろうと確信しております」とのことだった。
西武新宿駅を発車した「サステナ車両」8000系は新所沢駅へ向かい、撮影会も実施。「小田急8000形&西武8000系 ビフォーアフター乗りくらべ&撮影会」は5月25日も行われ、新所沢駅から西武鉄道8000系の乗車・撮影会、海老名電車基地まで小田急電鉄8000形の乗車・撮影会を予定している。その他、5月25日から「サステナ車両8000系デビュー記念乗車券」の販売、5月26日から「サステナ車両」グッズ(アクリルキーホルダー、アクリルスタンド、クリアファイルなど)の一般販売も開始する。
なお、西武鉄道は「サステナ車両」に関して、2024~2029年度にかけて約100両を導入する計画と発表している。2024年度に譲受した8000系(元小田急電鉄8000形)1編成に続き、2025年度は東急電鉄から9000系3編成を譲り受ける予定となっている。