「ホビーのまち静岡」で、「第63回 静岡ホビーショー」(主催 : 静岡模型教材協同組合)を5月14~18日に開催。今年もツインメッセ静岡に99のメーカー・団体が出展し、鉄道模型関連メーカーも各社の試作品展示や新製品発表など行った。今回はKATO、マイクロエース、グリーンマックス3社のブースで、各社の試作品を取材した。

  • 「ホビーのまち静岡」で開催された「第63回 静岡ホビーショー」。今年も鉄道模型各社の新情報・試作品を取材した(写真はグリーンマックスの東武鉄道7820型)

KATO、JR四国8000系・阪急2300系など発売!

まずはKATOのブースから見ていく。381系「しなの」(JR仕様)、JR四国8000系旧塗装、EF66形27号機、683系「しらさぎ」の新塗装は、5月中の発売が近づいている。381系「しなの」(JR仕様)は、「サロ381」を先頭車化改造し、前面に一枚扉と貫通ホロが備わった「クロ381 0」を組み込んだ編成を製品化。6両基本セット(品番「10-2037」・価格2万4,640円)と3両増結セット(品番「10-2038」・価格9,350円)に分かれる。

「JR四国8000系『しおかぜ・いしづち』(旧塗装) 8両セット」(品番「10-1940」・価格3万6,300円)は、登場時のカラーリングやリニューアル工事(2004年~)施工前の仕様を再現。8号車「8502」は、パンタグラフが撤去される前の形態となっている。旧塗装は特別企画品の8両編成として先に発売され、動力は5両側の「8305」(4号車)に搭載。リニューアル改造後の形態は5両・3両に分けて7月に発売予定。381系・8000系ともにKATO独自の振り子機能を搭載しており、カーブで車体が傾く姿を楽しめる。

  • 右からJR四国8000系(旧塗装)、381系、EF66形27号機

  • 683系「しらさぎ」の新塗装(写真左)と「カンガルーライナーSS60」コンテナ(同右)

  • 西濃運輸やディーラインの青いコンテナも発売予定

「683系『しらさぎ』(新塗装) 6両セット」(品番「10-2071」・価格2万2,330円)は、「サンダーバード」で活躍した683系0番代にオレンジ色の帯を追加し、2・3号車のイラストを消去した外観を再現。「EF66 27 JR貨物更新車」(品番「3090-5」・価格9,020円)は、2006年9月の更新工事後の仕様を製品化。同時発売の「カンガルーライナーSS60」、D54Aコンテナ(西濃運輸)やUV54Aコンテナ(ディーライン)などと組み合わせて貨物編成を楽しめる。

阪急電鉄の6300系や9300系といった京都線の車両を手がけてきたKATOが、京都線の新型車両2300系も発売。先行して特別企画品の8両セット(品番「10-2033」・価格3万2,450円)を6月に発売し、翌月に4両ずつの基本・増結セットを発売する予定となっている。切れ上がった形状の前面窓や光沢のあるマルーンカラーに加え、「PRiVACE」も外観・内装ともに再現。特別企画品では、2300編成がプロトタイプとなる。

  • 阪急京都線の新型車両2300系が発売予定。「PRiVACE」も再現され、9300系向けの単品(右の写真)は京都方の屋根上にアンテナも搭載

すでに9300系を持っている人向けに、単品販売「阪急電鉄2350形 <PRiVACE(プライベース)>」(品番「14419-9」・価格4,180円)も6月発売。2300系に組み込まれている車両とは異なり、京都方の屋根上にアンテナが取り付けられている。車番はレタリングシートから転写で選ぶ方式により、既存の9300系各製品に対応する。

スイスの「クロコダイル形」電気機関車にも驚き

外国型車両では、ICE4「ドイツ連邦共和国」編成が、7両基本セット(品番「10-2024」・価格3万1,570円)と6両増結セット(品番「10-2025」・価格2万3,980円)に分かれて6月発売予定。「ウィンドボナ号」としての活躍が有名な東ドイツ国鉄VT18.16(BR175)特急形気動車が7月発売予定。「BR175 DR 6両セット」(品番「10-745-1」・価格2万9,700円)は1970年代のBR175への改称後の仕様、「VT 18.16 “SVT ゲルリッツ” 4両セット」(品番「10-713-9」・価格2万570円)は、動態復活に向けてレストアが進められている4両編成の復活仕様を再現する。

さらに、EF55形や「ビッグボーイ」に次ぐ大型プロジェクトとして、スイス・レーティッシュ鉄道で人気の高いGe6/6-I形電気機関車「レーティッシュ・クロコダイル」の開発が進められている。実車は1921~1929年にかけて導入され、最後に製造された414・415号機は現在も動態保存されているという。前後の台車部分と中央の運転台で分かれた構造をしており、6軸(3軸台車×2)の車輪がロッドで駆動する。前後にボンネットを備えた独特の外観から「クロコダイル形」と呼ばれている。

  • ICE4「ドイツ連邦共和国」編成

  • 東ドイツ国鉄の花形特急形気動車・VT18.16。実車のレストアも行われているという

  • Ge6/6-I形「レーティッシュ・クロコダイル」。ロッドが回る3軸台車で、ボンネットが首を振り、最小通過半径R150を実現

Nゲージとしても、ロッドが回転し、実車同様にボンネットが左右に稼働する。3軸台車を備えながら、レーティッシュ鉄道シリーズの他の車両と同じくR150の急カーブを通行可能。担当者も、最小通過半径R150の実現は大変だったと話していた。単品販売(品番「3103-1」・価格2万2,000円)は414号機、緑の客車を合わせた5両編成の特別企画品(品番「10-1987」・価格3万4,980円)は415号機を収録し、11月発売予定に向けて今後も進められる。今回は機関車のみ試作品展示され、ボンネットを左右に振りながら急カーブを走行する様子に筆者も驚いた。

現在開発中製品の参考出品で、「T字型両手ワンハンドルマスコン化アダプター」「サウンドボックス2台遊び用ダミーモーター」「警笛ペダル」、さらにミニジオラマ向けのショーティー車両も展示された(製品名はいずれも仮称)。コントローラーやサウンドの楽しみに幅を広げたり、小型レイアウトでも遊べる車両が増えたりすることに期待したい。

  • ハンドル部分をT字型に交換できるアダプター

  • 写真右側のサウンドボックスがダミーモーター(写真上の貨車)と接続しており、車両の音にジョイント音が追加される

  • アメリカ型機関車をデフォルメした試作品。チビ凸用動力ユニットで走行していた

その他にも、直近の発売済み製品や今後発売予定品のサンプルを多数展示したほか、HOゲージで発売されたD51形蒸気機関車のメイクアップパーツも参考出品していた。昨年の「全日本模型ホビーショー」で公開されたNゲージレイアウトが今回も展示され、静岡県を行き交う313系・211系5000番代が走っていた。

マイクロエースから371系「あさぎり」再登場、「MA’s CRAFT」も

次はマイクロエースの展示を見ていく。発表済み新製品の試作品の中で、371系「あさぎり」が詳しく紹介されていた。過去にも371系は発売されたことがあり、譲渡後の形態である富士山麓電気鉄道8500系「富士山ビュー特急」も発売済み。今回は「371系 特急あさぎり シングルアームパンタ 晩年 7両セット」(品番「A1077」・価格4万4,000円)として発売予定。JR東海時代の最晩年形態で、薄型動力・室内灯対応として再登場する。

  • マイクロエースが今後発売予定の試作品。371系「あさぎり」は、薄型動力・室内灯の様子も詳しく展示していた

客室窓の大きい371系で室内灯を組み込んだ場合、従来品だとプリズムが車外から見えてしまっていた。動力車の場合はダイキャストの一部も外から見えていた。これらが薄型になることで、窓の外側からプリズムやダイキャストが目立たなくなり、客室空間の表現が改善する。2階建てとなっている3・4号車で階上席の空間も確保される。編成を組んだ状態の試作品に加え、薄型動力・室内灯を搭載したサンプルも会場に展示された。

「209系2100番代 幕張電車区C603編成 線路設備モニタリング装置付 6両セット」(品番「A7669」・価格3万3,000円)は、軌道材料モニタリング装置の様子がわかるように展示されていた。相模線205系500番代で採用したものと同じモニタリング装置を「クハ209-2103」に搭載し、走行時に赤・白の2色で線路を照らす。他にも、軌道変位測定装置など搭載した床下機器を新規製作するという。ブース内のレイアウトで走行展示されていた209系にもモニタリング装置が搭載され、ギミックの面白さがうかがえた。

  • JR東日本房総エリアの209系2100番代がモニタリング装置付きで発売予定

  • 「クハ209-2103」の床下から赤・白の光が発せられている

  • 組立キットシリーズ「MA’s CRAFT」で「味タム」が新発売。続編も鋭意企画中とのこと

発売済みの「タム5000形『味タム』 3両組立キット」(品番「L3075」・価格2,538円)をはじめとする「MA’s CRAFT」シリーズの組立て例や参考出品も見ることができた。未塗装ながら黒色の部品となっており、ネジ留め式(一部部品は接着式)の組立方法で小型貨車が簡単に組み上がる。表記類はデカールを水転写する方式となっており、用意された中から自分で選ぶことで、さまざまな設定を再現できる。

貼り付けたデカールを保護するため、表面保護用のクリアーコートは吹き付けたほうが良いが、それらの塗装を無理に行わなくても貨車を手軽に組み立てられる上に、商品も安価で手に入る。腕に自信ある人なら、独自でウェザリングや塗替えなど、チャレンジする幅も広い。初心者から慣れた人まで、さまざまなユーザーが手に取りやすいシリーズだろう。

「味タム」の組立て見本の他に、「ヨ5000形車掌車 貨車駅舎」(仮称)として、駅舎に転用された貨車の参考出品も見られた。「MA’s CRAFT」の続編も鋭意企画中とのことで、詳細の発表を待ちたい。今後発売予定の新製品について、具体的な発売日はマイクロエース公式サイト・SNSにて随時発表される。

グリーンマックスは東武7820型や阪神「青胴車」など

最後に50周年を迎えるグリーンマックスのブースを見ていく。生誕50周年記念製品として発表された東武鉄道7820型の試作品が詳しく紹介された。セイジクリームカラーで前照灯が2灯化された後の晩年形態をプロトタイプに新規製作。2両編成・4両編成で、通風口の有無によって異なる運転台窓を作り分ける。「モハ7820」で屋根上配管の違いも再現。車番・種別・行先は付属する車両マークおよびステッカーから選択する。

東武鉄道7820型は、東上線8両編成セット(品番「50807」・価格5万4,340円)、伊勢崎線6両編成セット(品番「50808」・価格4万2,900円)、基本2両編成セット(品番「50809」・価格1万9,250円)、動力なしの増結2両編成セット(品番「50810」・価格1万6,170円)の各種を8月発売予定。その他、クロスポイント(グリーンマックス・ザ・ストア)製品として、高運転台化された東武鉄道7860型タイプ(7865編成)も発売を予定している。ブース内のジオラマでも、他の東武車両と並んで存在感を発揮していた。

  • セイジクリーム1色の東武鉄道7820型。4両・2両の運転台窓やモハの配管違いなども再現

  • 阪神電車で最後まで残った「青胴車」5001形から、5009編成を製品化

阪神電車で最後まで残った「青胴車」5001形が、完成品として製品化発表された。かねてから要望の多かった車両で、ようやく製品化が実現したという。2021年5月に引退した5009編成をプロトタイプに、連結器交換後から2019年9月頃までの形態を再現。足回りも専用の台車・機器類を新規製作する。2両ごとに前期型・後期型が混在する同編成で、妻面窓の違いを作り分け、「“たいせつ”がギュッと」マークは転写シートによる選択式となっている。

ちなみに、5001形はエコノミーキット(未塗装キット)の改造で作ることも可能だが、中間車両の運転台撤去部分で切り継ぎ加工が必須となるため、制作難度の高さが予想される。それだけに、完成品で入手できることはありがたい。「阪神5001形(5009編成) 4両編成セット(動力付き)」(品番「50814」・価格3万580円)として10月発売予定とされている。

新しいエコノミーキットとして7月発売予定の「JR四国7000系(未更新車) 2両編成セット」(品番「451」・価格8,470円)も詳しく展示された。グリーンマックス伝統の板状キットとして販売されるものの、パーツ同士の合いを考慮して設計され、前面にははめ込みガラスを採用しているため、上手く組むことができれば完成品に劣らない仕上がりを期待できる。パンタグラフや動力用台車枠も専用のものが付属しているが、動力ユニットやトレーラー車用の床下台車セットは別売となる。

  • エコノミーキットでJR四国7000系が7月発売予定。パッケージを含め、監修・検討中

  • 7820型と現代の東武電車がNゲージジオラマで並ぶ

  • 今後発売予定となっている製品の数々。東急7200系(写真右下)は今月発売予定

試作品では、部品構成、未塗装の箱組み、塗装状態、パッケージをそれぞれ展示。塗装に必要な色は少ないと思われる。厳密に表現するなら、前面・側面で色味の異なる銀色が求められそうだが、無理をしなくても制作は進められるだろう。片運転台の駆動車「7100」で使用する妻面パーツも見られた。7000系の車体からは切り継ぎ加工が必須となり、かなりの高難度が予想されるが、工作派のチャレンジ意欲もそそられる内容と見受けられた。

その他、発表済みの新製品の試作品を展示。グリーンマックス企画・マイクロエース製造として話題になった東急電鉄7200系も発売が5月中と近づいている。ストラクチャーの会場発表情報としては、実在する飲食店が入った小型ビルの塗装済みキット「まんぷく街道」で、かつや、すしざんまい、ドムドムハンバーガーが発表された。

  • かつや、すしざんまい、ドムドムハンバーガーがNゲージストラクチャーに!?

なお、掲載の都合上、記事で取り上げることのできなかった製品も多数存在する。発表済みの新製品の中で気になる車両などあれば、各社の公式サイト等もチェックしてほしい。