これまでキリンビールが取り組んできた「氷結mottainaiプロジェクト」が、企業横断型の「モッタイナイ! を、おいしい! に。プロジェクト」に拡大する。企業の垣根を越えて協働することで「より多くの果実のフードロス削減」と「日本全国の果実農家の支援」を目指していく考えだ。キリンビール 代表取締役社長の堀口英樹氏が23日、詳細を明かした。
■コラボでプロジェクト拡大へ
キリンビールでは2024年5月に「氷結mottainaiプロジェクト」を発足。色味やサイズなどの規格から外れた“モッタイナイ果実”をフレーバーに使用したチューハイ『キリン 氷結mottainai 浜なし』『キリン 氷結mottainai ぽんかん』を期間限定で販売し、消費者の支持を得た。キリンビールの堀口社長は「第1弾の横浜特産 浜なしでは約3.4万個(12トン)のフードロス削減を実現して約600万円を、第2弾の高知県産 ぽんかんでは約31万個(43トン)のフードロス削減を実現して約570万円を、それぞれの果実農家に寄付できました」と報告し、取り組みを評価する。
しかし全国には、美味しいのに規格から外れたために廃棄されてしまうモッタイナイ果実が、まだまだ存在する。そこで、これまでの取り組みを「モッタイナイ! を、おいしい! に。プロジェクト」に拡張。志を共にするパートナー企業と協働し、全国の果実農家を支援するとともに、2027年にはモッタイナイ果実を年間150トン削減すると宣言する。
堀口社長は「情報収集、調達スキームなどの関係で、これまでキリン1社では商品化まで至らなかった果実を使用して、さらなるフードロスの削減につなげていきます」と意気込む。
その新たなプロジェクトの第1弾には、産直通販サイト「食べチョク」を運営するビビッドガーデン、および食品宅配専門スーパー「Oisix」を運営するオイシックス・ラ・大地の2社が参画した。両社とも、これまでフードロスの削減に積極的に取り組んできた実績を持っている。
ビビッドガーデンの秋元里奈氏は「氷結mottainaiプロジェクトの皆さまが真摯に取り組まれている姿勢に感銘を受け、私たちも活動の推進に協力することを決めました。サイズや見た目が規格外の果実でもしっかり美味しいんだ、という事実を多くの人に伝え、消費者の意識を変えていくことができれば。今後、フードロスの削減に貢献するとともに、果実の生産者の所得向上も目指していきます」と説明する。
またオイシックス・ラ・大地の東海林園子氏は、同社独自のフードロス削減の取り組みについて紹介したうえで「パートナー企業、生産者の皆さんと手を組むことで、可能性は無限大になると考えています。このプロジェクトを通じて、食材の新たな個性、価値が認められる社会を目指していきたい」とした。
■新商品も登場間近?
このあと実施したトークセッションでは、昨年の活動の振り返り、および今後の3社による取り組みについて説明した。キリンビール マーケティング部の山岡加菜氏は、「氷結mottainaiプロジェクト」では消費者から「日本の果実農家のお役に立つならいっぱい飲みたい」「コンセプトに共感した。こういう商品がもっとあれば良いのに」という声が寄せられた、と笑顔になる。ちなみに果実農家の寄付金の使い道については、横浜の浜なし農家は苗木の購入、高知県のぽんかん農家は糖度酸度計測機器の購入に充てたことを明かした。
-
(左から)キリンビール マーケティング部 氷結アシスタントブランドマネージャーの山岡加菜氏、ビビッドガーデン 執行役員 新規事業開発責任者の松浦悠介氏、オイシックス・ラ・大地 執行役員 Oisix 商品本部 責任者の冨士聡子氏
ビビッドガーデンでは4月24日、25日に新宿ミライナタワーで「モッタイナイ! を、おいしい! に。マルシェ by食べチョク」を開催。2社もサポートで参加する。またオイシックス・ラ・大地では、モッタイナイ果実を使ったミールキット「モッタイナイ! を、おいしい! に。Kit Oisix」を年内に発売する。
さらにキリンビールでは現在、ビビッドガーデン、オイシックス・ラ・大地が見つけてきたモッタイナイ果実を使った「氷結mottainai」の新商品を開発中。年内にも発売できる見込みだという。山岡氏は「今後も、氷結mottainaiの商品を続々と発売していく予定です。それだけでなく、3者一丸となったフードロス削減のチャレンジにもどんどんと取り組んでいきますので、どうぞご期待ください」とまとめた。