JR東日本は19日、田町駅付近線路切換工事を報道関係者らに公開した。田町駅付近の山手線外回り(品川・渋谷方面)と京浜東北線南行(大船方面)において、4月18日の終電後から4月20日の12時頃まで線路切換工事を実施。山手線・京浜東北線の一部区間が運休となっている。

  • JR東日本が田町駅付近線路切換工事の様子を報道公開。作業員たちのすぐ横を山手線内回りの電車が走り去っていく

同社は羽田空港へのダイレクトアクセスを実現する「羽田空港アクセス線(仮称)」の「東山手ルート」について、2031年度の開業をめざし、工事を進めている。田町駅の北側で東海道線の下り線・上り線から分岐し、地下へ入る新線を建設する計画となっており、2023年から本格的な工事に着手。2024年1月、田町駅の北側にあった山手線引上げ線を撤去した。

第1回となる今回の線路切換工事で、山手線外回りと京浜東北線南行の2線を同時に西側へ移設。あわせて架線の付替えや信号装置の改修なども行う。田町駅において山手線外回りホームの拡幅、京浜東北線南行ホームの一部撤去も進める。

移設する線路のうち、新たな山手線外回り線路(約380m。分岐器等も含む)は先行して山手線引上げ線を撤去したスペースに敷設済み。今回の工事で、山手線外回りは敷設済みの線路の北側(約150m)と南側(約80m)でそれぞれ線路を移動(最大移動量は北側で約2.3m、南側で約2.1m)させる。田町駅の山手線外回りホームは約65mにわたって拡大(最大幅約1.3m)される。

  • 工事現場の西側を山手線内回り、東側を東海道線の列車が行き交う。東海道新幹線や東京モノレールも見える

京浜東北線南行は約580mにわたって線路移動(約490m)と線路敷設(約90m。分岐器2組含む)を行う。線路移動に関して、工事を行う区間の北側と南側で既存の京浜東北線南行、それ以外の大部分で既存の山手線外回りの線路を活用(最大移動量は北側で約2.5m、南側で約2.6m)するという。田町駅の京浜東北線南行ホームは約75mにわたって縮小(最大幅約0.6m)される。

報道公開で工事概要を説明したJR東日本建設工事部マネージャー、原田慎一氏によれば、今回の作業時間は約35時間(4月19日0時頃から4月20日11時頃まで)、作業員数は協力会社社員約1,000人(内訳 : 土木 約250人、軌道 約620人、電気 約140人)、加えてJR社員も約470人体制で工事に臨んでいるとのこと。前日の終電後、信号および電気関係の工事からスタートし、報道公開が行われた8時すぎに軌道工事が始まったと説明があった。

この日は東京都心で最高気温28度と予想され、朝の時点ですでに汗が滴り落ちるほどの暑さ。田町駅北側の工事現場は多数の作業員たちで埋め尽くされ、人力で線路移動などの作業を行っていた。その西側で、山手線内回りの電車が警笛を鳴らして田町駅を発車し、加速しながら工事現場のすぐ隣の線路を走り去っていく。東側では東海道線の列車が行き交い、東海道新幹線の列車も間近に見える。工事現場の先に東京モノレールも見えた。

  • 今回の線路切換工事における作業員数は約1,000人。加えてJR社員も約470人体制で工事に臨んだという

「2線同時、かつかなりの距離で線路を動かさなければならないということで、限られた時間内で作業が終わるように、綿密に計画を立てました。今回、両側の線路を電車が走っている中で作業しなければならず、安全にも十分配慮しながら進められるよう気を付けてきたところです」と原田氏。報道公開が行われた時点での進捗状況を「昨晩から作業が始まり、いまのところ順調に推移しています」と説明し、「羽田空港アクセス線(仮称)」についても「開業目標の2031年度に向け、各工区で鋭意工事を進めています」と語った。

今回の線路切換工事にともない、4月19日は終日にわたり山手線外回りの上野～東京～大崎間、京浜東北線南行・北行の東十条～品川間で運休。4月20日は初電から12時頃まで、山手線外回り・内回りの上野～東京～大崎間、京浜東北線南行・北行の東十条～品川間で運休を予定している。山手線・京浜東北線の他の区間についても、通常より本数を減らして運転する区間があり、京浜東北線の快速運転も中止に。代替となる路線(上野東京ライン・東海道線など)で増発するほか、他の鉄道事業者への振替輸送も実施している。

なお、4月19日は線路移動をはじめとする軌道・土木関係の工事をおもに行うため、山手線内回りの運行が可能だったが、4月20日は信号関係の工事を行う必要があり、山手線の外回り・内回りともに運休するとのことだった。「首都圏の大動脈である山手線と京浜東北線を1日半運休させての工事ということで、運転再開までしっかり工事をやり遂げたい。ご利用のお客さま、周辺の方々には大変ご迷惑おかけするところではありますが、ご理解ご協力をいただければと思います」と原田氏は述べた。

  • JR東日本建設工事部マネージャーの原田慎一氏が工事概要を説明。囲み取材にも応じた

田町駅付近では、今回の線路切換工事で山手線外回りと京浜東北線南行の2線を西側へ移設した後、次の段階として東海道線の上り線を西側へ移設。続いて東海道線の下り線も西側へ移設し、上り線・下り線の間に「羽田空港アクセス線(仮称)」を新設する。今後の切換工事について、詳細や実施時期等は改めて案内するとしている。