小泉今日子と中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00~ ※TVer、FODで配信)が、きょう14日にスタートする。

鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千秋(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千秋に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれていく。

  • 中井貴一(左)と小泉今日子 (C)フジテレビ

    中井貴一(左)と小泉今日子 (C)フジテレビ

変わらずに見ていられる“永遠”を感じる会話劇

2012年に始まった今作が恋愛ドラマとして異例のシリーズ化がなされる理由は、何も変わらずずっと見続けていられる“永遠”を感じさせる世界観でありながら、リアルな時間が確実に流れている“今”が同居しているからだろう。

大きな事件やドラマティックが起こらないこのドラマの吸引力は会話の楽しさにある。とはいえその会話は、人情味あふれるいい話でも、気の利いた言葉の応酬でも、ポエティックな名言を引き出すものでもない。ただただ他愛もない会話のはずなのに、登場人物たちそれぞれが“しゃべっている”だけで楽しいと感じさせてしまう不思議な魅力があるのだ。それはまるで昭和のホームドラマや『サザエさん』のような、ずっと変わらずに見ていられる“永遠”を感じる。

一方で、まぎれもなく時の流れを感じさせる“今”も描かれている。時代を切り取るテレビドラマなのだからそれは当然なのだが、特に今作は第1シーズン時から決して若くはない男女の恋物語という異色の体裁だったことから、時の流れを描くことこそが使命であり、だからこそおかしく悲哀で、それがアイデンティティーにもなっている。

つまりこのドラマは、いつ見ても変わらない安心感があり、常に同じ時間が流れているような“永遠”を感じさせながらも、そこには確実に進んでいる“今”が描かれる。何も変わらないようで、確実に変わっている…そんな不思議な視聴体験を与えてくれるのが『最後から二番目の恋』シリーズなのだ。

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これまでのシリーズ以上に“死”のにおいが

今回の第3シーズンも当然、“永遠”と“今”が見事に同居している。前回から11年の時を経ても、千秋と和平の丁々発止が始まるだけでこれまでの全てを鮮明に思い出させてくれる安心感という名の“永遠”を感じさせながら、11年が経ち還暦に迫った千秋と定年を迎えた和平の“今”を描くからこそ、これまでの恋愛ドラマにはなかった味となり、新しさすらも生み出している。また、これまでのシリーズ以上に“死”のにおいが漂っており、それが生々しくもあり、なぜか爽やかでもあり、それがこの第3シーズン独自の味にもなっている。

これまでは木曜劇場(木曜22時台)で放送されていたが、今回は“月9”に移行。かつては数多くの若い男女の恋愛劇を放送してきたこの枠なのになぜ…と、この枠移動に少し疑問もあったのだが、第1話冒頭のあるシーンは、“令和の月9”という現状もあいまって、描かれている以上の深みを感じてしまった。

とはいえ今作は会話劇を楽しむ作品だ。ドラマの断片から深みを感じるもよし、楽しさだけを吟味するもよし。そして、これまでのシリーズを見たことのない人にとっても必ず登場人物たちの会話を“楽しい”と感じられる作品に仕上がっているはずだ。

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