大腸がんは年々患者数が増えている病気です。特に50歳代から大腸がんになる人は増えていきます。

現在ではがん全体の死亡者の中でも、大腸がんによる死亡者数が一番多くなっています。 残念ながら大腸がんは、初期段階ではほとんど症状がありません。大腸がんに気づくにはどんな症状に気をつければいいか、また予防方法や検診について知っておきましょう。

■大腸がんとは

大腸がんとは、大腸に発生するがんです。大腸は「結腸・直腸・肛門」に分けられます。大腸がんができやすいのは、便が長時間たまっているS状結腸と直腸だと言われています。

大腸がんは初期段階では大腸の粘膜にできます。徐々に大腸の壁に侵入していき、進行すると大腸の壁の外まで広がります。やがて大腸の周りにある膀胱や子宮、膣などの臓器に広がり、腹腔内に散らばります。さらにリンパ液や血液に乗って、リンパ節や肝臓、肺などの臓器に転移することもあるのです。

<患者数の傾向>

大腸がんの患者数に男女差はなく、50歳代から増え始めて60~70歳代に多く見られます。 年々患者数は増加しており、がん全体で最も死亡者数が多い病気です。ただし、進行は比較的遅めなため、早期発見で治る確率を高められます。

<大腸がんの原因>

大腸がんの原因は、生活習慣と関係があると言われています。
具体的には次のことが大腸がんになるリスクを高めます。

・喫煙
・飲酒
・肥満
・高身長
・加工肉や赤肉の摂取
・潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患がある
・家族性大腸腺腫症やリンチ症候群になりやすい家系

<大腸がんの予防方法>

日本人を対象とした研究によって、がん全体の予防と大腸がん予防に効果的なことがわかっています。

●がん全体の予防方法
・禁煙
・飲酒を控える
・バランスのいい食生活
・適度な運動
・ほどよい体型の維持
・感染予防

●大腸がんの予防方法
・適度な運動(効果はほぼ確実)
・食物繊維・カルシウムの適度な摂取(効果がある可能性がある)

■大腸がんに気づくきっかけとは?

大腸がんに気づいたきっかけとしてよくあげられるのが「便に血が混じったり血が付くこと」です。

肛門に近いところに大腸がんがある場合、排便時の出血は「赤くて鮮明」です。肛門から遠いところに大腸がんができると「黒っぽく」なります。また、血液と腸の粘液が混じって出ることもあります。

なお、大腸がんの初期では症状がほとんどないため、ある程度進行して症状が出てから気づくことが珍しくありません。進行して見られる症状は次の通りです。

・便に血が混じる(血便、下血、便表面に血が付く)
・貧血
・腹痛
・便秘
・下痢
・便が細くなる
・残便感がある(出きっていない感じがする)
・お腹が張る
・吐き気や嘔吐

<痔と勘違いしないように注意を!>

便に血がついているのを見て「痔」と勘違いするケースは珍しくありません。
血の混じった便などの症状に気がついたら、自己判断をしないで消化器科、胃腸科、肛門科などを受診しましょう。

■大腸がん検診について

大腸がんは初期段階ではほぼ症状がありません。だからこそ、定期的に大腸がん検診を受けてできるだけ早く発見することが重要です。40歳以上になったら1年に1回、大腸がん検診を受けましょう。

大腸がん検診では、最初に一般的な「便潜血検査」を受け、異変があったり疑われる場合はさらに「精密検査」を受けます。

<便潜血検査>

便に血液が含まれているかどうか調べるための検査です。
事前に渡される検査キットを使い、自分で2日分の便を採取します。2日に渡り、トイレで排便後に検査キットのプラスチック棒で便の表面と内部を採取し、その棒を検査キットに戻して提出します。

検査結果が「要精密検査」となった場合は、大腸がんの疑いがあるため、必ず精密検査を受けましょう。

<精密検査>

精密検査では主に「全大腸内視鏡検査」「大腸内視鏡検査と大腸のX線検査の併用法」「大腸CT検査」のいずれかが行われます。

●全大腸内視鏡検査
精密検査としてまず選択される方法です。
下剤で大腸を空にしたら、肛門から内視鏡を入れ、がんやポリープがないか直腸~盲腸まで大腸全体を観察します。必要があれば組織を採取して悪性かどうかを診断します。

●大腸内視鏡検査と大腸のX線検査の併用法
大腸全体を内視鏡で観察することが難しい場合に行う方法です。
内視鏡検査を行うとともに、内視鏡が届かない奥をX線検査で確認します。

●大腸CT検査
肛門からガスを注入して大腸を広げたら、X線撮影を行い、3次元画像やCT画像によってがんやポリープがないか調べます。
全大腸内視鏡検査ができない場合や、人間ドックなどで受けられます。

最後に大腸がん予防・検診の重要性に関して、消化器内科の専門医に聞いてみました。

近年、日本では大腸がんに罹患する人が年々増えています。大腸がんは早期に発見できれば根治が可能ですが、初期には症状がないことがほとんどで、症状が出現してからでは手遅れになることもあります。40歳から便潜血検査による大腸がん検診がはじまります。毎年検診を受けることで無症状の大腸がんを発見できる可能性が高まりますので、必ず受けるようにしてください。

また、便潜血検査で陽性となれば、通常は大腸内視鏡検査による精密検査を行いますが、便潜血検査が陽性であっても約14%の方が自己判断や恥ずかしい等の理由で精密検査を受けておられません。そこで、大腸内視鏡検査に抵抗がある方には大腸CTがおすすめです。大腸内視鏡検査と比較すると大腸CTは、前処置の下剤の量が少なく、検査時の負担も少ない検査ですので、検討してもよいのではと思います。

大腸がんの予防には、適度な運動と適正体重の維持が重要です。また、加工肉・赤肉の過剰摂取や多量飲酒は控え、野菜や果物を積極的に摂取し、バランスの良い食事を行うことが大切です。

東 玲治(ひがし れいじ)先生

一宮西病院 消化器内科/部長、消化器内視鏡センター長
資格:日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医